12日 お供にいかが?
「ほ……」
「ね、気持ちいいでしょ~?」
「えぇ……。なんだか、ほっとしますわ」
「温泉だよ~。大地の恵みだよ~! お肌にも良いけど、レイツェルさんにはあんまり関係ないかもね~」
いや、自分もあんま関係なさそうやん。だって半分くらい鱗やもん。綺麗なぁ、その鱗。
「そこに居るのはレイちゃんかな~? 一緒に入ろうよ~」
バレたっ⁉ え、いや、ちゃうねんで? 覗きとかべべべ別にしてへんで? 温泉の湯気見たいな~思うてフラっときたらたまたまレイツェルさんとかえぇと名前忘れたごめん。シルの妹やった? うん、その子が居ってな。せやから、そう、たまたまやねん!
……って言う言い方したら疑われそうやけど、ホンマやし。いや、まあ、そら、たまたま居ったからちょっと木の陰から見てたわけやけども。
「どもー」
「ほらほらおいで~、幽霊でも服は脱げるじゃな~い」
いやまあ脱げるけど。いつだか着ぐるみ着たり脱いだりしとった奴も居ったし。……ん? あれ誰やったっけ。なんで今居らんのやったっけ。
「とても落ち着きますよ。ご一緒しませんか?」
「させていただきます」
いや、誘惑には勝てへんわ。うん。女で良かった。女万歳。
「なんだかお酒が飲みたくなるね~」
え、自分何言うてんの。酒?
「お盆におちょこととっくり置いてさ~、それで、日本酒飲むの~」
……何か、おっさんぽいな。や、うちのイメージしたものの問題かも知れへんけどさ? あ、でもCMで女の人がそんなんやってるのも見たかもしれへん。や、どっちにしても大人やん?
「おちょこととっくり……?」
『お猪口』と、『徳利』な。小さいコップみたいなんと、口の小っちゃい酒の入れもん。あれさ、なんでわざわざ大瓶から移し替えるん? お湯に浮かべるため?
「これがお猪口で~、こっちが徳利~。お酒はレイツェルも抵抗感なさそうな、ちょっとフルーティな物をご用意しました~! あ、一応ちゃんと日本酒ね?」
お、おぉ。ガッツリひらがな書かれとるしな。ガチか‼ もうやる気満々か! 始めっからやるつもりやったろ自分。
「レイちゃんは未成年だもんね~」
あれ。結構幽霊なってからはよく勧められててんけどな? あれ、この人案外法律守る派?
「さぁさ~どうぞ~。一杯くらいならお薬だよ! 休憩後も頑張って~」
「はい。ありがとうございます。いただきますね」
…………なんかえぇなー。うちも何か欲しいなー。
「ふっふ~。そんな物欲しそうな眼をするレイちゃんには~、みかんをあげよ~!」
「おぉ‼ マジか! おみかんか!」
「お風呂で食べるおみかん美味しいよね~」
「おぉおお、分かってるわぁ! ありがとぉ!」
「どういたしまして~」
あれ、ちょまって、本気で名前思い出せへんわ。自分何やったっけ。こんな女神の名前忘れとんのかうちは。これすんごい損ちゃう?




