5日 隣人もヘン
…………あれ? あ、うち、部屋間違えた?
アパートの兄妹さん家行こう思てさ、いつも通りアパートのベランダ下りてんか。そんで窓から中見てみたら、めっちゃ汚かってんか。……うん。これは部屋間違うたな。家具も違うもんな。耳澄ましたらお隣から話し声聞こえてくるもんな。間違いなく間違うたわ。うん。訳分からん感じで言ってみたかっただけな。
ま、えぇわ。あっちはあっちで楽しそうやし。お邪魔したろ。
「お邪魔しまーす」
いや別に邪魔はせぇへんけど。幽霊やし。
「…………女の声ッ⁉」
うぉわっ⁉ え、何⁉ え、ちょ、何? あれ、うちの声聞こえてる⁉ っていうか自分なんで部屋のそんな隅に居るん。しかも、隅の隅って感じのところやのうて、壁の真ん中辺。
「……ん……? ったく」
あれ、自分何してんの? え、何座り込んで。え、何で壁に顔押し付けてんの。顔って言うか、耳……? あれ、そっちって、あの兄妹さん家?
あ、変態サンな。分かるで。うん。生暖かい目で見といたるわ。
……この家ちょっと漁ったろか。あれや。友達ん家来た男子気分でやな。まずはベッドの下から――ベッド無かった。うん、このアパート和室やしな! ベッドって高そうやもんな! 大丈夫、うちもお布団派やで! ベッド使ってみたい人やで!
んむ、ほんならどこ漁ろ。その辺の本は参考書とか書いてあるしな。っていうかちょいちょい英語の本やしな。あれ、この人案外頭えぇんとちゃうのん。
……うん、今の表情、ただの変態かストーカーかの二択やけどな。いや、両方か。おい、涎垂れてんぞ
「ああああヒーちゃんパネェ。可愛い……」
おい口抑えてささやくな。口に出すな。ほんで耳壁に押し付けるんなて!
「このアパートにしてよかった……ッ!」
……うん、うちは生暖かい目で見といてあげるで。引かんといてあげるで。暖かい目はちょっと無理やったけど。に、しても……うん。
「幸せそやなぁ」
もう本気で思うわ。今死んでも後悔せぇへんやろ自分。
「おー、めっちゃ幸せ。……うぉわ、やっぱ居たのか! 女? 女か? 悪い、俺聞こえるけど見えないから。何処居る? 何歳? 誕生日血液型は置いといてまず名前名前!」
「お前の反対側じゃボケ」
「うぉ、マジか関西弁キタコレ」
「とりあ黙ろか」
「え、名前は?」
あれ、うち『黙ろか』言うたよな? 心の中で呟いてたわけ違うよな?
「ハヤシレイ」
「はいはい、へぇ、レイちゃんな。いくついくつ? 年」
「十四」
ってぇ、女ならだれでもえぇんかお前は! 見えてなくても興味津々か!
「何型?」
「B型」
……何であの人の側に血液型占いの本転がってんのやろ。しかもめっちゃボロボロやん。使い込んでるやん。
「何でウチに?」
「家間違えた」
あ、落ち込まれた。
……何を期待してたん、お前。




