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16日 蜘蛛アジ友達の人間

「んぉ?」

 スー……ス、スー……

「お母さん、蜘蛛居る」

「どこにー?」

「部屋のど真ん中ー。あ、いや、違った。電気の真下ー」

 コウチ家のリビングには電気が二つあるからな。前の家主が増築して広くしはったから。

 その、台所に近い方の電気の下に蜘蛛がぶら下がっています。中々糸長いぞコレ。トーカの座高と同じくらいやし。

「はー」

 スー……

「ふー」

 ツッ、ツー、ツ

 擬音じゃ分からんか。

 んとな、蜘蛛の下で息を吐くと、蜘蛛がスーって糸伸ばして降りてくんねん。そんで、その蜘蛛に向かって下から息吹きかけたら、糸上って行きよんねん。逃げてくねん。

 ……トーカ。

 アンタな、蜘蛛見つけたんやったら逃げるとか悲鳴あげるとか外にポイするとか、そういう反応せぇよ。ふつう蜘蛛で遊びはせんやろ。遊びは。バチ当たるで。……お外にポイもバチ当たりそやな。お外に逃がす、ってことで。

「にゃー、にゃー介、蜘蛛居るよー。遊べるよー」

 いや呼んだらあかんやろ。蜘蛛食われるやろ。

「あれ? あ、にゃー寝てる」

 ……可愛い。そーやんね、猫は夜行性やもんね。いや、もう外暗いんやけど。とっくに夜なんやけど。

「あれ……」

 あれ……?

 ニャーのエサ皿。

 一つは水、一つはいつものドライフード。今日はさらにもう一つあって……

「アジ、だよね?」

「うん、アジやなぁ」

 トーカにはうちの声聞こえへんけど、答たげたった。この子の独り言めっちゃ話しかけてる風やねんもん。

 いや、今はんなこと関係なくて。

 なんでミヤビのエサ皿に生のアジ入ってんの⁉ 小っちゃい、皿の底ギリギリのサイズやけども、なんで生のサイズが一匹コロンと入ってんねん!

「……うわぁ、ムニムニ。いや、むにゅむにゅ? 違うな。プニプニ……気持ちいいこれ」

 え、ちょ、うちも触りたいって。ちょっとトーカ、指どけて。ついでに視線もそらしてくれるとありがたい。あれ? なんでうち、ここに居るってバレたらアカンの?

 別に問題なくない?

 よしゃ、むにむにしよっと。

「うぉっ⁉ なんか居る?」

「はーい。レイちゃん居まーす」

 おぉおおお、気持ち良いような悪いような。なんなんこのムチムチ感。なんやの、この、魚なのにぬめっとしない……なのに乾ききってもない、程よい湿り具合。でも手には水分が付かない。人肌か! いや、それにしてはちょっと冷たい。死体やからな、うん。なんでうちは魚の死体に触りながら考察してんの?

「ねぇ、誰? ってか何物? お化け? 幽霊? 体験談とか教えてほしいなー。あ、それ以前の問題として、うちらに害なしちゃったりする奴? 妖怪系? それだったらお引き取り願いたいんだけど」

 ぐいぐい来るなおい。

「あ、べっこう飴で勘弁してくれる?」

「口裂け女か!」

 ……突っ込みは聞こえないらしい。そらそうよな。向かいのアパートの兄妹じゃあるまいし。

「あ、ちょっと待ってて、そこに居てな?」

 あ、関西弁でた。

 むにむにむにむに……飽きたわ。でも待っとけ言われたしな。うん……。

「コレ、使い方わかる?」

 スマホか。ま、見てたし。

「あー、わかったらアジひっくり返して。わかんなかったらムニムニして」

 ひっくり返してみた。

「うぉ、通じた」

 何やな! 自分でひっくり返して言うたんやないか!

「えーと、じゃあ、あい。筆談ならぬスマホ談で。名前は?」

 おー、なんか携帯みたいに押すところ出てきてる。おんなじ感覚でえぇねんな?

『レイ』

「女の子?」

『ぉん』

「あれ? 関西の人?」

『京都』

「なんでこんなとこ居るん⁉」

『引っ越しに付いてきた(笑)』

「……めっちゃフレンドリーやったー……レイちゃん、知ってる? それストーカーって言うんよ」

『知ってるw』

「おぉ、草生えた」

『使ってみたかったwww』

「めっちゃ生やすな」

『wwwwwwwwww』

「ひつこいわ」

『めんどくさなったからやめた』

「めんどくさがりか」

『おう』

「威張るなし」

『主張やもん』

 威張ってるんちゃうもーん。同類やろ? 同じこと言ってたやん自分。あれ? あれはエイトの方やっけ?

「なんか……仲良くなれそうやなぁ。レイちゃん携帯持ってる?」

『さすがに無い』

「そっか。んじゃ、また暇してたらうちの携帯使って。暇やったら返す」

『そんな暇してへん』

「嘘ぉ? 幽霊じゃん。なんで?」

『幽霊生活満喫してるから』

「……なるほど」

 納得するんか。何するのかー、とか、聞かんと納得すんのか。

 ……あれ?

『蜘蛛消えたな』

「え? あ、ホンマだ。どこ行ったかな。まあいいけど」

『えぇんかい』

「虫食べてくれるんでしょ、蜘蛛って」

 せやな。えぇか。

 えー、レイの、この町での友達状況。

 神様×1、妖怪(?)×1、人間×3

 ……普通さ、人間が一番友達になるの難しない? そんでもって幽霊友達居らんってどゆこと?

『世の中、不思議がいっぱいだね★』

「レイちゃん、今の間で何考えてたの?」

 トーカすごいな。なんで他のコト考えてたってわかんねん。

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