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「シャロンの喫茶店」 GW特別編 リサ&翔子 Adventures in Digital Wonderland Reboot  作者: Toru


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第五章 白い城とハリネズミの秘密

◆ 白い城とハリネズミの秘密


森を抜けると、視界が一気に開けた。

そこに広がっていたのは――

かつて鮮やかな赤と黒で彩られていたハートの女王の城。


だが今は、すべてが真っ白だった。


壁も、塔も、旗も、門も。

色という色が消え失せ、

まるで“世界から切り取られた模型”のように静まり返っている。


リサは息を呑んだ。


「……ここまで……」


翔子は唇を噛みしめた。


「初期化が……進みすぎてる……」


白ウサギは震える声で言った。


「女王も……王様も……もう……」


三人は城の中へ足を踏み入れた。


◆ 白い玉座の間


玉座の間は、以前の豪奢な雰囲気が嘘のように、

ただの“白い空間”になっていた。


天井のシャンデリアは白い塊になり、

赤い絨毯は白い帯に変わり、

壁の装飾はすべて“均一な模様”に置き換えられている。


そして――


玉座には、女王と王様が座っていた。


だが、二人の表情は無い。

瞳は空洞のように白く、

動きはぎこちなく、

まるで“決められた動作”を繰り返すだけの人形だった。


「……女王様……?」

リサが恐る恐る近づく。


女王はゆっくりと顔を上げた。

だが、その口から出たのは――


「……首を……はねよ……」


抑揚のない声。

意味のない言葉を繰り返す。

それだけ。


王様も同じだった。


「……ハートの……王……です……」


翔子は肩を落とした。


「これじゃ……聞きようがない……

どうやってプログラムをいじったのか……

何も……」


リサは翔子の背中に手を置いた。


「翔子……まだ終わってないよ。

どこかにヒントが残ってるかもしれない」


翔子は顔を上げた。


「……そうだね。探そう」


◆ 白い廊下を歩く三人


城はすべて同じ形、同じ大きさ。


「……全部、同じに見える……」

リサが呟く。


「初期化されると、個性が消えるんだ。

建物も……人も……」

白ウサギの声は震えていた。


その時――


カサッ。


小さな音がした。


「……誰かいる?」

リサが振り向く。


廊下の奥を、何かが素早く横切った。


「待って!」

リサは駆け出した。


翔子と白ウサギも後を追う。


曲がり角を曲がると、

そこにいたのは――


クロッケーのボール役だったハリネズミだった。


◆ 逃げ回る小さな影


ハリネズミはリサを見ると、

驚いたように目を丸くし、

すぐに走り出した。


「待って! 逃げないで!」

リサが手を伸ばす。


白ウサギが叫ぶ。


「リサ、危ないよ!

ハリネズミはすばしっこいし、

初期化ロボットに追われてるかもしれない!」


だが、リサは足を止めなかった。


「大丈夫……あの子、何か伝えたがってる……!」


ハリネズミは廊下を右へ左へと走り回り、

時折リサの方を振り返る。


まるで「ついてこい」と言っているようだった。


やがて、ハリネズミは小さな部屋の前で立ち止まった。


リサがそっと近づくと、

ハリネズミは逃げずに、

じっとリサの顔を見つめた。


その瞳は――

“助けを求める瞳”だった。


◆ ハリネズミの秘密


「……触ってもいい?」

リサが小さく尋ねる。


白ウサギは慌てた。


「リサ! 危ないってば!」


だが、リサはゆっくりと手を伸ばした。


ハリネズミは逃げなかった。

挿絵(By みてみん)

リサの指がそっと背中に触れた瞬間――


ピッ。


小さな電子音が鳴り、

ハリネズミの背中から“黒い端末”が現れた。


翔子は目を見開いた。


「……隠し端末……!」


白ウサギは驚きの声を上げた。


「そんな……ハリネズミの中に……?」


翔子は端末を手に取り、

画面を素早く操作した。


「なるほど……

王様、考えたね……

誰もハリネズミに触ろうとは思わない。

だから、ここに隠したんだ……!」


リサはハリネズミを抱きしめた。


「ありがとう……教えてくれたんだね……」


ハリネズミは嬉しそうに小さく鳴いた。


その時――


コツ……コツ……コツ……


廊下の奥から、

初期化ロボットの足音が近づいてきた。


翔子が顔を上げる。


「来た……!」


白ウサギが叫ぶ。


「リサ、翔子! 逃げよう!」


リサはハリネズミを抱え、

翔子は白ウサギの手を引き、

三人は部屋の奥へと走り出した。


だが――


部屋の隅で、行き止まりになった。


初期化ロボットがゆっくりと手を伸ばす。


白い光が、三人を包もうとしていた。



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