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「シャロンの喫茶店」 GW特別編 リサ&翔子 Adventures in Digital Wonderland Reboot  作者: Toru


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第二章 渋谷の交差点での再会

放課後の渋谷は、いつも通りの喧騒に満ちていた。

ビルの谷間を吹き抜ける風は少し湿っていて、

人々の足音、車のクラクション、遠くのライブハウスの低音が混ざり合い、

街全体がひとつの巨大な生き物のように脈打っている。


リサは翔子の隣を歩きながら、

胸の奥に残る“あの世界の余韻”をどう言葉にすればいいのか迷っていた。


「ねぇ翔子……」

リサは信号待ちの間に、そっと口を開いた。


「ん?」

翔子はスマホをしまい、リサの方へ顔を向ける。


「ワンダーランドのこと……まだ、夢みたいに思ってる?」


翔子は少し考え、柔らかく笑った。


「夢みたいだったけど……リサがあれだけ真剣に話すんだもん。

私は信じるよ。あの世界は、本当にあったんだって」


その言葉に、リサの胸がじんわりと温かくなる。

翔子はいつも、肝心なところで迷わず信じてくれる。


「ありがとう……翔子」


二人はスクランブル交差点へ足を踏み入れた。

人の波が四方から押し寄せ、

ネオンの光がガラスに反射して揺れている。


その瞬間だった。


大型モニターが一斉にノイズを走らせた。


ジジッ……!


リサは思わず顔を上げた。

翔子も足を止める。


画面が乱れ、

白い霧のようなエフェクトが走り――


白ウサギが映った。


『リサ! 助けて!』


次のモニターには帽子屋。


『僕たちの記憶が消されちゃう!』


さらに別のモニターにはチェシャ猫。


『自分が自分でなくなるのさ……』


三日月のような笑い口だけが最後に残っている。

三人の声が、渋谷の空気を震わせた。


リサの心臓が跳ねる。

翔子は息を呑んだ。

挿絵(By みてみん)

周囲の人々もざわつき始める。


「え、何これ?」

「新しい広告?」

「いや、違くない?」

「バグじゃね?」


スマホを向ける人、立ち止まる人、

気づかずに歩き続ける人――

渋谷らしい混沌が広がる。


だが、次の瞬間。


モニターは一斉に真っ暗になり、

すぐに元の広告へ戻った。


ざわめきはしばらく続いたが、

やがて人々は日常へ戻っていく。


ただ一人、リサだけが立ち尽くしていた。


「……ワンダーランドが……記憶が消される……?」


声が震えていた。

翔子はリサの肩に手を置く。


「リサ、今の……本物だよね?」


リサは小さく頷いた。


「うん……あれは、助けを求めてた。

白ウサギも、帽子屋も、チェシャ猫も……

みんな、記憶が消されちゃう……!」


翔子はリサの手を握った。


「リサ、全部話して。

ワンダーランドで何があったのか、全部」


リサは深呼吸し、

あの世界での出来事を一つひとつ語り始めた。


帽子屋の奇妙なティーパーティー。

チェシャ猫の不思議な笑い声。

白ウサギの慌ただしい足音。

閉められた出口。

ハートの女王とのクロッケー。

そして――

女王が負ける“物語の結末”を書換えたハートの王様…


翔子は黙って聞いていた。

途中で遮らず、ただ真剣に。


話し終えると、翔子は静かに言った。


「……リサ。私は信じるよ。

あなたが見たもの、感じたもの、全部」


リサの目に涙が滲む。


「翔子……」


「記憶が消される…自分じゃなくなる…

きっとワンダーランドで何か不具合が起きて、初期化されそうなのね…

シャロンさんに相談しよう。

あの人なら、きっと何とかしてくれる。」


リサは涙を拭き、頷いた。


「うん……行こう」


二人は交差点を抜け、

喫茶店「樹」へ向かって走り出した。


渋谷の喧騒の中、

二人の足音だけが、

まるで“物語の始まり”を告げるように響いていた。



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