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Invasion②

 

 峰から彗星のように尾を引く、2本のスラスターブレイドがぶつかり合う。

 《ロベリア》はスラスターブレイドの噴射炎を更に吹かせて押し込む。《リンドウ》が立つ地面に二筋の溝が刻まれていく。

「俺に……俺達に怨みがあるなら!」

 対して《リンドウ》は敢えて噴射炎を弱める。刃が身体を斬り裂かないように刀身で守りつつ、振り抜かれる勢いに乗って距離を離す。

「この町を巻き込まなくても良かっただろ!」

「楽園の完成は、お前達の犠牲をこれ以上増やさない為」

 スラスターブレイドのギアを全開にし、《ロベリア》は飛翔。一気に距離を詰める。

「俺や灼夜の様な存在が二度と現れない為だ!」

 《リンドウ》はスラスターブレイドを投擲。当然《ロベリア》はそれを弾くが、同時に飛び出した《リンドウ》は拳で《ロベリア》の手元を殴打。スラスターブレイドを落とさせた。

「お前達のようなって……まさかスレイジェルとジェノサイドに!?」

「それ以外に何がある!!」

 《リンドウ》の拳を全ていなし、胸部を蹴り抜く。《リンドウ》を突き放しつつ自らも後方へ跳ぶと、地面に突き刺さったスラスターブレイドを引き抜いた。

「うまく隠蔽していたつもりだろうが……あの怪物達がノアカンパニーの実験の産物だってことは割れてるんだ!」

 走り寄る《リンドウ》を、《ロベリア》はスラスターブレイドを振るって迎撃。地面と共に《リンドウ》の足が凍りつき、返す刃で更に斬りつけた。

「ぐぅっ!?」

「お前達の実験の所為で今も苦しめられている人間がいるんだ!」

「だから俺達は!」

 自らを貫こうとする《ロベリア》のスラスターブレイドを、《リンドウ》は刃の側面を殴って軌道を逸らした。肩の装甲を抉られたが、《ロベリア》の両腕に組みついて動きを封じる。

「今も戦ってる! 償う為だけじゃない! 今を生きてる人達を守る為に!」

「ふざけるな!!」

 《ロベリア》は拘束を振り払う。だが同時に《リンドウ》は頭突きで僅かに距離を離し、


《Now Loading……Now Loading……》


 プラグローダーを3回スライド。光を纏った拳を振り上げる。


《Now Loading……Now Loading……》


 すぐに《ロベリア》も対応。同じ様にプラグローダーをスライドし、拳へ黒い電光を宿す。


《《Update Complete》》


 同時に駆け出した2人の拳がぶつかる。白と黒のスパークは互いを焦がしながらせめぎ合いを続け、中心を幾度となく行き来する。

 その決着は、


「はぁっ!!」

「うわっ!?」


 振り抜かれる《ロベリア》の拳、そして吹き飛ばされる《リンドウ》という形で着いた。


「何が守る為だ!! 自分達で解き放った怪物の後始末に追われているだけだろうが! そんな屑どもがヒーローを気取るな!!」

「お前がどう思おうと……他の人達がどう思っていても! それでも俺達は……自分のやるべきことをやるだけだ!」

 《リンドウ》は切り札を取り出す。それは金識町へ向かう前に、蒼葉から渡された奥の手。


── 出来る限り調整はしておいた。本当に危なくなった時にだけ使って ──


 かつての理想の姿へ再び変わるべく、《リンドウ》はバージョンアップ装置 ── VUローダーをプラグローダーへ接続。


《System Update》


 展開したプラグローダーから飛び出したコネクトチップが、白銀の輝きを放つ盾の様な姿へ変化。そのままプラグローダーへ再度装填された。

「それが俺の信じる、ヒーローの役目だから」


《バージョンアップ・イノセントシールダー》

《英雄、堅牢なる正義の意志をその手に! Your heart will be a shield that will never clumble》


 右腕にシールドを備えた《リンドウ》の形態、《イノセントシールダー》へ姿を変えた。

「灼夜と同じ……だがその姿になったところで!」

 だが《ロベリア》は怯まず、スラスターブレイドの推力に身を任せて突進。質量と速度の全てを乗せた一撃が振るわれる。

 甲高い音と火花が弾け、空気が震える。

「もう俺達は迷わない!!」

「なにっ、ぐぁっ!?」

 《リンドウ》は一切のけぞらず、大きくシールドを振るって《ロベリア》の体勢を崩す。その勢いのままシールドで打ち払い、大きく吹き飛ばした。

「この程度で!!」

 空中で回転して立て直した《ロベリア》。今度は刃に冷気を纏わせると、一気に走り出しながらそれを振るった。

 纏った冷気は振るわれた衝撃で氷へ変化。倍近い長さとなって《リンドウ》へ襲い掛かる。

「たとえお前達が、俺達を憎んでいたとしても!!」

 しかし硬いとはいえ、氷に負ける様な柔さなどではない。シールドは氷の刃を打ち砕き、返す打突が《ロベリア》の胸部装甲を抉る。

「がぁぁ!! こ、のぉ!!」

 力の限りシールドを蹴り付ける《ロベリア》。《リンドウ》は後ろへ大きく飛ぶ。力負けしたわけではない。攻撃を受けた衝撃で自らのスラスターブレイドの元へ戻る為だ。

 地面を斬り裂きながら引き抜かれたスラスターブレイドを、プラグローダーとシールドへ番えるように接続。


《コネクト・スラスターブレイド!》


 弓の様に変形したシールド。そして矢となったスラスターブレイドへ光のエネルギーが絡みついていく。


《Data Loding Complete 3……2……1……》


「やらせるか!!」

 《ロベリア》はスラスターブレイドのギアを全開にし、《リンドウ》へ急接近。炎を纏った斬撃を振り下ろした。

 《リンドウ》のシールドと肩へ燃え盛る刃が喰らいつく。だが《リンドウ》は揺るがない。

「っ!?」

「終わりだ」



《Capacity Max! Innocent Shining Finish!!》



「うぉぉぁぁぁっっっ!!!!」

 炎と光が混じり合った矢は《ロベリア》の身体の中心へ突き立ち、螺旋を描きながら引き摺り回す。背後の壁に叩きつけられる前に、《ロベリア》はスラスターブレイドで矢の軌道を無理やり逸らして難を逃れた。

「はぁ、はぁ、はぁ……!!」

 崩れ落ちる寸前で足に力を込め踏み止まる。構え直すべく前を見た時だった。


《Capacity Max! Innocent Finish!!》


 眼前に、ガントレットへ変形した光り輝くシールドを振り上げた《リンドウ》がいた。

「がっ……!!」

 ガントレットは《ロベリア》の頬を正確に捉え、倉庫の壁へ叩きつけた。


 変身が解けた影春へ《リンドウ》は静かに歩み寄る。

「もうこんなことはやめろ……誰も傷つかない世界を創りたいなら、もっと違う方法だって」

「……ないんだよ」

 しかし、ただならない影春の気配に《リンドウ》は立ち止まる。ゆっくり立ち上がる影春。彼の髪の隙間から覗く見開かれた瞳は震えていた。


「この方法じゃなきゃ、救えない奴がいるんだよ!!!」


 そして懐から何かを取り出した。4つのコネクトチップが繋がった歪な装置。その中央ではフラグメントのような物質が揺蕩っている。

「なんだそのコネクトチップ……!?」

「大丈夫だ……他の奴等はきっと灼夜達が……俺は、俺はここでお前を」


《All Conection Plug in 》


 プラグローダーから突き出す様な形で装填される。それから放たれる黒い電光が影春の身体を走る。

「あっ、ぐ……!!」

「やめろ! そのコネクトチップ、絶対まずいぞ!!」

「ここでお前を消せるなら、俺の命くらい捧げてやる!!」

 《リンドウ》の忠告は影春の絶叫に掻き消される。身を焼くその力を受け入れるように、影春はプラグローダーをスライドした。

「変…………身!!」


《英雄 全ての力を集めて敵を滅ぼせ The Almighty of Hero》


 その姿を英雄と呼ぶには、あまりにも異形だった。


 両腕にはスラスターブレイド、胸部にはイノセントシールダーのシールド、額と両膝からはクラッシュウォリアーの角、両肩にはシュートエアレイダーのマイティライフル。灰色の装甲は所々が漆黒に変色し、深紅の配線が至る所から剥き出しになっている。


「これがお前を……楽園の贄にする力」


 《ロベリア》のアイレンズが赤く光る。紫のラインを血管の様に浮かび上がらせて。



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