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057 【行為】夢、【属性】秩序

「都市での生活に疲れた人達が、私どもの村によく来るようになりましたね」

 伝統衣装を身にまとった初老の村長が、記者に言った。口元こそ笑っているが、下がった眉尻が内心の困惑を表していた。

「いくら何でも、夢を見過ぎであるように思います。二重の意味で」

 彼らは昔ながらの生活を続ける集落内にある、大きな天幕の中にいた。許容量は十数人だと、一目で見て取れる。なぜならば、二人の周囲には十人強もの人間が、寝袋に包まって寝息を立てていたからである。性別は男女が概ね半々ほど。年齢層は二十代から四十代ほどのようだが、赤子を思わせる安らかな寝顔のお陰で、幾分か若く見えた。

「ずいぶんと寝心地が良さそうですね。地面の上に直接寝袋とは……、普通ならごつごつしていて体が凝りそうなんですが」

「それを帳消しにして余りあるのが、私どもの村に伝わる秘術ですよ」

 そう言って老人が取り出したのは、一枚の濃緑色の葉だった。

「これを磨り潰し、儀式によって加工したものを吸うと、とても心地よく眠ることができるのです。いい夢も見れるのですよ」

「なんと……、失礼ですがそれ、麻薬の類では?」

「違う、とも言い切れませんね。一定時間以上眠ったままだと、悪霊に魅入られてしまうとの言い伝えもありますし……。実際、時間を過ぎると精神や体調が著しく崩れます。だから私どもも、よほどのことがない限り頼らずに済ませるようにしています。そして使うとしても、吸う時間と起きる時間はしっかり守っております」

「なるほど」

 記者は頷いてから、周囲に横たわる人々を見た。

「都市での生活の疲れを、彼らはこうやって癒しているんでしょうかねぇ」

「恐らくは」

「聞いたところによると、ほぼ毎週末、人が押し掛けてくるんだとか」

「ええ。お陰で予約制を取らざるを得ないのです」

「断ろう、とは思わなかったのですか?」

「旅人は歓待せよ、との教えもありますし……実のところ、彼らの落としていってくれるお金のお陰で、私どもも昔ながらの生活を維持できているので」

「ギブアンドテイク、なんですねぇ」

「しかし、決まりは決まりです。そろそろ、夢から覚めてもらわないと」

 村長が立ち上がる。その手には、空の鍋と木の棒が握られていた。ガンガンと耳障りな音を立てながら、声を張り上げた。

「さあさあ、皆さーん! 掟ですから起きてくださーい!」

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