055 【行為】眠り、【場所】方位(北)
「おいお前、正気か?」
「はっ、平気であります隊長」
そう返事した矢先に、男は大きなくしゃみをした。それも二度続けて。
隊長は驚かなかった。場所を考えれば、まったく不思議ではなかったからだ。
「……お前、我々の目的を忘れたか?」
「まさか。北極の調査であります」
「そうだな。気温が零下になるのも珍しくはないような、極寒の土地だ」
「心得ております」
男は平然とした顔を崩さない。対照的に、隊長は青筋を立てて怒鳴った。
「ならば、なぜ袖のない服装などをしておるかァ!」
分厚い防寒着は、肩の辺りで綺麗に寸断されている。露わとなった腕は、吹きつけられる雪をまとって真っ白になっていた。どこが素肌かも、判然としない。
すぐさま替えの服を用意しろと命じたが、頑として聞かなかった。何故かと問えば、願懸けであるという。
「どういうことだ、説明しろ」
「はっ。今回の北極調査は、我が隊の威信を賭けたものとなっています。なればこそ、備えは万全にしなければなりません。それこそ神頼みをしてでも」
「ああ、分かっている。しかし……」
「あいやしばらく。極限の寒さで体力を消耗した時に眠ってしまうと、人は死んでしまいます」
「……まあ、それは間違いではないな。それがどうかしたのか?」
「そこで、この装いですよ」
男は鼻水を垂らしながらも、胸を張って言い放った。
「私はノースリーブとなることで、皆の睡魔を飛ばしているのであります! 題して、ノースリープ!」




