051 【生物】爬虫類(ワニ)、【建築物】沈没船
沈没船の調査のために河に潜ったダイバーは、思わず息を飲んだ。随行していた同僚が、水中通話装置を介して話しかけてくる。
『おい。こりゃ一体、何だと思う?』
「俺が知るか、そんなの」
反射的に答えてから、こう付け足した。
「よく似たのを挙げるなら……。空けた後の缶詰、か?」
改めて、水底に横たわる船体に目をやった。
大穴が空いているのだ。直径はおおよそ、ダイバーの身長と同じ程度。周りに藻が纏わりついているものの、おおむね綺麗な円形になっている。
『どう考えても、これが沈没の原因、だろうな』
「ああ。……だが、何が、どうやってこんなものを?」
『知らねえが……、とにかく早く調べるもん調べようぜ。おっかない鰐の群れが生息してんだろう、このあたり?』
「それもそうだな。じゃあとりあえず……」
水中カメラを構えようとした、その矢先のことである。沈没船に空いた穴から、件の鰐が顔を出した。それも一頭や二頭ではない。慌てふためいて浮上する二人は、大小合わせて二十匹もの大顎が迫ってくるのを見た。我を忘れて、泳いだ。
付近に待機させておいた、緊急離脱用の水上オートバイがなければ、死はまずもって免れなかっただろう。
ベースキャンプまで這う這うの体で逃げ帰った二人は、青ざめた顔を見合わせた。
「……ありゃ、船が沈むわけだわな」
「……そう、だな。生きた心地がしなかったよ」
「水中通話装置も落としちまったな。高かったが……、まあ仕方あるまい。カメラは?」
「あるよ。あの鰐の様子も、辛うじて」
全身の血の気が引けていく中、無我の境地で一枚の写真を撮った。信じがたい光景が、そこに収められていた。
「鰐の群れが、輪になって襲いかかってくるとはね……」
翌日には付近の河辺に、WARNINGと記された看板が、鰐の写真と共に立てられたという。




