050 【属性】永遠、【行為】破壊
銃声が聞こえる。後ろから、前から、そして手元から。鬱蒼と生い茂る熱帯雨林の中を行く。腰を低くしながら、あるいは泥の上に伏せながら。
(ああ、またこの夢か)
すぐに気付いた。もはや、何回目かも分からない。五十から先は、もう数えていなかった。そして気付いたところで、どうしようもない。起きろ、起きろと願ったところで、眠りが醒めることはない。さながら、観客席に縛り付けられたまま映画館に放置されているような気分だ。
映像は回る。
茂みの中を匍匐で進む。視界を遮る葉や枝を、何度も払い除ける。やっとの思いで抜けて、一息吐こうとした、その矢先のことである。
目の前に男が現れた。味方のものとは違う迷彩服を着ていた。ヘルメットの下の青い目が、驚きに見開かれていた。
敵だ。そう理解した時、既に指先は引金を引いていた。乾いた音が響き渡る。マズルフラッシュが顔を照らす。呆然としたままの、顔を。
――そこで、目が醒めた。夢は一瞬で掻き消えて、家の見慣れた天井が、視界一杯に広がった。
「……今日も、か」
荒い息を繰り返す。寝間着の袖で、額に浮かんだ脂汗を拭った。
男の生涯で人を殺したのは、あれが最初で、そして今のところ最後である。退役してから、十年以上は経っている。だというのに、未だに忘れられずにいる。
人命を奪ってしまった、という罪悪感と共に。
(いつまで、苦しめばいいんだ……)
時計は午前四時を指している。寝直すのに十分な時間ではなかった。だがそれでも、布団を被った。非正規とはいえ、仕事がある。ようやく食い扶持を稼いで、生きていかなければいけない。でなければ、申し訳が立たない。
(これが、人を殺した報いだとでも言うのか……? 生きている限り、ずっと罪を背負い続けなければならないのか……?)
自問自答は、浅い眠りに落ちるまで、続いた。




