34/60
034 【行為】成長、【器物】食べ物(米)
『ご飯と食べて大きくなろう! 白米戦隊ハンゴウ、推参!』
――このような前口上を叫ぶヒーローに、息子は夢中だった。といっても、幼稚園の頃だ。所構わず真似をしたがるやんちゃ坊主には、手を焼かされたものだ。
ただ、食卓ではこの上なく大人しかった。席につくのを嫌がったり、好き嫌いをしたりすることもない。いただきますも、ごちそうさまも、言われる前からちゃんとしていた。それを誉めると、元気一杯にこう言った。
「おりこうにしてたらね、ハンゴウにもえらいっていってもらえるんだー!」
頬に米粒を張りつけた息子の笑顔は、今でも忘れられない。
それから十数年が経ち、大学受験に追われる日々になっても。
最近はもう、茶碗一杯で足りる日はない。三杯食べて、ようやく腹八分。
おかわり、と言われる度に、ついふふっと笑ってしまうのだった。
「……なんだよ、お袋。笑われるようなこと、したか?」
「ううん。ちょっと、あんたのちっちゃい頃を思い出していただけ」
「またそういう……。いつまでも子ども扱いするなっての」
「相変わらずお米大好きなんだもの。こんなに大きく成長しても、そこは変わんないんだなって」




