030 【属性】最高、【器物】食べ物(野菜)
最高級の料理を決める番組は、今まさに佳境を迎えていた。珍味を惜しみなく投入したスープ、上品なソースの滴るステーキ、贅の限りを尽くした魚料理と、美食家をも唸らせる逸品が披露されてきた。会場の盛り上がりは、留まるところを知らない。
「流石は三ッ星の店のシェフだ。まろやかさにおいて、この一杯に勝るものはない」
「焼き加減が絶妙ですな。火の加減も悪くない。そして何と言ってもこの特製のタレ! しつこすぎない味付けが堪らない」
「このムニエルも負けておりませんぞ。希少な食材をほとんど使っていない。なのに調理法一つでこうも深い味わいを出せるとは。まったく、一手間かけるだけで大きく変わるものですな」
舌鼓を打ちながら、論評を並べていく。
残すところあと数品というところで、それは起きた。照明がぱたりと落ちたのだ。突然の事態に、ゲストもスタッフも周囲を見回す。観客がざわめき始める。
『ト、トラブルでしょうか。皆様、今少しお待ちを……』
「その必要はないわ」
朗々とした声が、司会を遮った。それは、次に料理を披露する料理人のものだった。野菜料理を担当する者だった。
「あと数秒、お待ちください。今、私の作品が運び込まれているところです」
耳を澄ませば、なるほど台車の車輪の音が聞こえる。しかし、それがおっかなびっくりという表現が似合うほど、慎重に動いているのはどういう事か。一旦収まりかけた喧騒が、今一度戻りつつあった。
やがて、滑車の音が止んだ。そして照明が復活し、その全容が露わとなる。来賓は一人残らず絶句し、観客からは驚きの声が上がった。
一言で表現するならば、野菜の塔だった。
土台として大根が、櫓の形に組み立てられている。葱と韮が縄の役割を果たしていた。その上に、南瓜を用いた石垣の層ができていた。隙間から木のように飛び出ているのは、ブロッコリーやカリフラワーの小房か。また石垣の上に、白菜の葉が円形に並べられている。皿に見立てているらしい。というのも、そこからサラダがこんもりとした山を作っているからだ。ポテトサラダの上に、キャベツの千切りが積もっている。天辺には茗荷の実が、王冠のように立てられていた。
傍らに立つ女コックの身長を二倍にしても、頂上には届きそうにない。あまりに非常識な光景に、我を保てた者は一人としていなかった。
『こ、これは……一体どういうことでしょう? そもそも料理、なのでしょうか?』
いち早く復活した司会者が、恐る恐る問いかける。
料理人は胸を張って、答えた。
「素材の味を活かした、過去最高の野菜料理です。……全高的な意味で!」




