27/60
027 【器物】缶/瓶、【武器】剣
「店主よ。この剣は、一体何なんだ?」
それは普通の剣と言うには、あまりにも余計なものがついていた。
小さく、軽く、そして不必要すぎた。
それは、柄の下端の、缶切りだった。
「なぜ、わざわざこんなものが?」
「ああ、それはどこぞの無名な刀匠が作ったものだ。どうせ、おふざけの一品だろう」
「戯れか……」
「誰も買おうとしないんだよな」
「そりゃそうだ。見るからに使い辛い」
その場ではただの笑い話で終わった。だがこの缶切り付きの剣は、意外な人気を博することとなる。一人の剣士が遊び感覚で使ってみたところ、驚異的な切味を発揮したのだ。並みの刀身を叩き割って尚、刃こぼれひとつしない。この剣で兜割りを達成してみせた者すらいた。評判が知れ渡るや否や、誰もがこぞって彼の作品を求めた。そして注文の全てに対し、完璧な仕事で応じた。
「それにしても、なぜ剣に缶切りをつけようと思ったんだ?」
ある日、有名になった刀匠はそんな質問を受けた。答えは、簡潔な一言だった。
「まあ、なんとなく」
「へ?」
「ああいうのを作れば、注目されるかもしれん、と思ってな。普通の剣を打っただけじゃあ、埋もれるだろう?」
缶をも切れる剣を打った男は、もしかしたら勘の鋭い男でもあったのかもしれない。




