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024 【器物】戦車、【自然】香り

 閑静な住宅街に、戦車が現れた。重低音を響かせながら、舗装された道路の上を行く。行き先と砲門は、一件の古い家屋に向けられていた。

 通りに人の姿はない。扉や窓も閉め切られていた。板張りにしている家庭まであった。

 無限軌道が止まった。ハッチが開き、ガスマスクを被った顔が出てくる。彼の声による誘導の元、照準が家の屋根に定められる。準備が完了した。顔が引っ込み、ハッチが閉ざされてから数秒後、主砲が火を吹いた。砲弾は放物線を描いて飛んでいく。

 破裂した。

 屋根、ではなく弾が。

 着弾するなり、合成樹脂製の弾頭は一瞬でばらばらになった。そしてその中に詰め込まれていた、無色透明の液体を盛大にぶちまけた。瓦には罅ひとつ入っていない。

 第二射、第三射も続いて放たれた。標的の家は、もう濡れていない箇所を探すのが難しいほどに水浸しである。

 三つ目の砲声の残響が消えた頃、再びハッチが開いた。その中からガスマスクの男が三人、出てくる。くぐもった声で、こんな会話を交わした。

「これで十分だろう」

「だな。これで当分は、臭くない」

「とはいっても、芳香剤の匂いが嫌いな人にとってはそうでもないだろうけどな」

「まあ、悪臭をほったらかしにするよりはマシだろ」

「違法薬物を扱うなら、管理くらいしっかりしてほしいもんだよ。しかし、記憶障害や精神疾患を巻き起こす前に異臭を取り除くことができたのは、まあ上出来だろうね」

「吸ってしまった人も、後遺症は残らないそうだ。ひとまずはめでたし、だな」

 一頻り雑談しながら、体を伸ばす。そうやって一仕事終えた充実感を胸に、戦車に乗り込み、いずこかへと去っていった。

 彼らはとある製薬会社が擁する特殊部隊である。他の業者にはどうしようもできないような酷い匂いを、戦略級消臭剤で撃退するのが任務だ。街の香りを守る戦車隊は、今日も国のどこかで戦っている。

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