017 【自然】煙、【属性】色(透明)
青年は潜入の達人だった。大国の国庫や富豪の宝物庫など、これまで忍びこめなかった場所はない。その実績を支えているのが、魔術である。足音を消したり、姿を透明にしたり、煙幕を張ったりする術は、既にたった一言の呪文で発動できるようになっていた。
そんな彼にも、苦手とするものはある。次の標的も、その一つ。
「魔術で対処されちゃあ、少々厄介だな」
絡繰仕掛けや人間の警護なら、隙を突くなりパターンを逆手に取るなり、簡単にできる。これが術によるものとなると、個々の術者で癖が異なるので、分析に手間取りやすい。中には調べようとした時点で警報を鳴らされる場合もある。
もっとも、苦手というだけだ。不可能ではない。解析されにくいというのは、自分にとってのメリットでもある。
「今回だって、うまくやってみせるさ」
後日、青年は逮捕された。両腕に嵌められた魔術殺しの腕輪を眺めながら、やっちまったな、と呟いた。
隣の囚人が声をかけてきた。
「よう兄ちゃん。お前、例のアイツだろ? 怪盗魔術師の」
「ああ。ついに俺もお縄だよ」
「どんなヘマをしたんだ」
「笑い話さ。ちょっと気合を入れ過ぎたんだ」
そして自嘲気味に、こう語った。
「逃げる時、煙幕術と透明化を同時に使ってしまったんだ。あいつら目視と探査魔術の両方で俺を追い詰めてきてたからな。念には念を、としてみたんだが……。お陰で透明になった筈の俺の輪郭が、煙の中で薄らと浮かび上がっちまってな。あえなく追い詰められて、この様さ」
「なるほどなあ。煙に巻いたつもりが逆に明け透けになった、ってことか」




