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赤ルア(テスト用)  作者: あせこ
三日目
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9-2 その銘は罪詠院 母不知です



 なぁ、皆に聞きたい。

 俺は幸福なのか?不幸なのか?


 決死のヘッドスライディングをかました直後、俺は「ぽよん」とした柔らかい何かに顔を埋める姿勢で硬直していた。

 何でそうなったか、時間にして僅かだが、話せば長くなりそうだ……。


「ちょっ! どこに顔押し付けてんのよっ!」

「ぐぬぉ!?」

 ……理不尽だ。


 ――そして時間は少し遡る。

「だぁれが、バカですってぇ……?」

 彼女の赤い瞳がユラリと閃き、飢えた猛獣が動き出そうとしている。

 ――が、丸めた絨毯扱い状態だった為、身動きが取れずにジタバタするのみだった。


「気付いたか、リル立てそうか?」

「あー大丈夫よ!立てるわよっ!もう降ろして――にゅ?!」

 なんていうか、とても憶えのあるやりとりだった、

 ――ので、予め走り込むことができた。

 

 ルーヴィックがリルドナをポイっと投げ捨てて、彼女の背中が地面に叩きつけられる瞬間、なんとか俺のヘッドスライディングが間に合った。

 いくら小柄で軽量な彼女でも、この不自然な体勢での捕獲は少しきつかった。

 俺はそのまま勢い余って、彼女を抱きかかえたまま前のめりに沈み込む、

 だから不可抗力なんだと思うんだ……俺の顔が彼女の身体に埋めてしまっても……。

 ぽよん、と顔になんとも顔に柔かな感触、この感触は確か前にもあった気がする。

 ……もしかして、これはリルドナのむ――


「ちょっ! どこに顔押し付けてんのよっ!」

「ぐぬぉ!?」

 結論に辿りつく前に、彼女の逆平手打ち(リバースハンティング)で叩き飛ばされる。

 だから、皆に聞きたい。

 これってラッキーなのか?アンラッキーなのか……。


 明滅する視界の中、ロイがポンと俺の肩に手を置き、

「ムノー君、夜にはまだ早いよ?」

「……。どういう意味ですか……?」

 俺は精一杯の平静を装いつつ、ジトりした視線を投げつけた。

 どうして、この人はこうもいやらしい笑みを浮かべることが出来るんだろう……。

 ――それにしても、だ。

 目の前ではリルドナが手を差し出している、

「はいはい、自分で持つわよ」

 不機嫌さを含みつつ、自分で荷物を持つと言う意思表示だろう。

  ――だが、しかし。なのだ。

「お前、全然っ力入ってないだろ?」

「う……」

 そう、いくら手加減しているとはいえ、先程の逆平手打ちは弱々しいモノだった。

 今までの彼女からすると、見る影も無く弱りきっていた。

 それは外見相応の少女の細腕の力でしかない。

「ってことで、無理するな。大人しくしてろ」

「…わかったわ。でも――」

 リルドナは頭を掻きつつ答える、

「ハハシラズだけは自分で持つわ」

 手を差し伸べたまま、そう言い放った。

 リルドナが返却を求める『ハハシラズ』とはなんだろう?

 ――言葉に出さずとも答えをくれるのがヤツのウリ(・・)だった。

「太刀の銘だ、それだけ渡してやってくれ」

「――と、これのことか、変わった剣銘だな」

 と言ったところで、俺には東方武器の命銘法則なんて知る由もなく、単純にそう告げただけだった。

「――ありがと、」

 俺から太刀を受け取ると、ぎこちない動きで――本当に力が入ってないようだ――その小さな背中に背負う。

 その時俺には、何故かそれが…まるで出来の悪い子を背負う母親の姿に見えた。

 だとすると、随分と大きな子供だ。なにせ本人の身長とほぼ同じ長さの大太刀なのだから。


「――にゅ?!」

 あ、コケた。





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