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赤ルア(テスト用)  作者: あせこ
三日目
35/81

6-5 大食いニート姉さん(シスター)


 ルーヴィックの指示に従い森を突き進む数十分、

 ついに雰囲気が一段違う場所…開けた場所に出た。

 俺は久しぶりに再会する太陽に目を眩まされ、

 その日差しを顔に受け、冷めた身体に血が巡るような感覚を覚えた。

 長時間、薄暗い森の中を延々と歩いてきたのだ、

 他の人間も、緊張を弛緩させるような気配を見せている。


 その広場に立ち入り、程なく進んだ、その時――


 ――ぐううぅぅぅぎゅるるうぅぅ……


 …まるで地の底から響く地獄の重低音だ……。

 この女は、どうしてこう緊張感(シリアス)ブレイカーなんだろうか?

 その場にいる人間全員の視線が彼女に殺到する、

「あ、あたしじゃないわよっ」

 彼女はそう抗議するが…

 その瞳に負けないくらい真っ赤な顔と、クリクリと泳がせる視線でバレバレだ。

 非常に気まずい空気がお越しになられたものだ、

 …さて、どうフォローしてやろう? 

 こんなところでいいか……

「おい、ダイエットするのはいいが、朝はちゃんと食え」

 俺は適当に言い訳しやすいようにと、言葉を紡いだ。

 これは六十五点くらいくれてもいいはずだ……。

 しかし、彼女は空気の読める女では無かったのが誤算だった、

「何言ってんのよっ、ちゃんと食べたわよ!」

 俺の想いもなんのその、彼女は素で返してきた、

 …いや、別にいいんだよ?俺は……


 森から広場を吹きぬける風の音が妙に大きく聞こえた…

 それくらいの短い沈黙のあと――

「ハハハハハ、随分と肝の据わったお嬢さんだ」

 ブルーノが豪快に笑って見せ、視線をゼルとロイに向ける、

「では、見張りを交代で行った上での小休止をとるとしよう、

 ゼル、ロイ――このお転婆なお姫様の護衛をしてやってくれ」

「あいよう!」

「了解ですっ」

 ブルーノの声に威勢良く応じるゼルとロイ、もう完全に部下っぽい、

 俺は気を遣ってくれたブルーノに(何故か俺が)礼を述べ、

 この仕事に関しての何気ない会話を交わすのだった。

 それにしても…

 意外にも、このブルーノという初老の執事はフランクな人柄だった、

 一見すると気難しそうな顔をしているが――

 話しかければキッチリと対応してくれるのだ、

 それは他の人間も同じだったらしく、目を白黒とさせていた。

 哨戒をするゼルとロイに(またもや俺が)礼を述べると「任しといてよ」とロイは腰の小剣を抜き「こいつ、剣も割りといけるんだぜ」とゼルがタイミングよく説明をくれた。


 俺たちはそのまま少し進み、比較的見渡しの良い泉の畔に陣取った、ゼルとロイはともかく、他の人間にはあまり好感を持たれていないこともあり、やや離れた位置に落ち着いたのだ。

 ここは本当に森の中なのだろうか?と思わせるほどの大きな泉だった、森という城壁に囲まれた泉の庭園とも言うべきなのだろうか…それくらい不思議な空間だった。

 森の中とは違い周囲の視界が良く、突然な襲撃の危険も少ないだろう。

 ブルーノの申し出に彼女はまたもや(みず)を得たネコ(サカナ)のように活気付く、上機嫌で荷物からガサゴソと携帯用の敷きシートを取り出し、目ざとく日当たりのいいポイントを見つけそこに敷き、そしてチョコンと可愛らしく座り込み――やっぱり正座だった――続いてテキパキと持参したのであろう、お弁当を取り出した。

 …要するに相変わらず手際が良いというわけだ。


「――にゃかにゃンにゃかにゃンにゃかにゃンにゃっハイッ♪」

 …なんだこの呪文は?!

 彼女は上機嫌でなにやら変な歌を唄っている…もうノリノリだ、

 俺は勇気を振り絞って声を掛ける、

「おい、悪ノリしすぎだ」

「ちゅちゅちゅちゅーるらっタッタ――て、何よ?今良いところなのにぃ」

 その『良いところ』ってのは、食事の準備か、歌の盛り上がりか?

 それを聞けない自分が悲しかった…。

交代(・・)で休憩なんだから、早く食って代わってやれ」

「そんなこと言っても~

 あたし喉が細いしぃ、慌てて食べたら詰まっちゃうわ」

 口はデカイけどな――それと態度もだ!あとは、む……いやなんでもない。


 俺はそんなリルドナを放置して、先程貰ったメモを開く、

 なんとも言えない、可愛らしさ全開の丸字なのだが、内容は至って真面目だ。

 そこには、微弱の魔力を出力して指先で魔方陣を描く手段が明記されている。

「ふむ~俺でも出来る……のか?」

 試しにやってみる……指先に薄っすらと白い光が灯る、

 そして、適当に指を走らせると、一瞬虚空に白い線が浮かんだ。

「これで魔方陣を描けってことか……」

 俺の冒険者ギルドで受けた能力測定での魔法に関する判定は――

 …軒並み、どの系統の魔法も最低ランクの「F」だった、

 だが、幸いなことに「--」ではないので、一応(・・)は魔法を使えるのだ。

 ランク「--」は才能ゼロを指す――

 もしそうだったらこの光の線を描くことすら出来なかったわけだ。

「でも可能性がある、と出来るは別問題だよな…」

 苦笑いを零しながらメモを一通り目を通すと、気になる単語があった

 ――BlaueAugen

 ?

 メモの一番最後に、さり気無く書かれてある。

 わざわざ青いインクで独特な筆跡で書かれてあった、その横には読み方すらわからない奇妙な文字列がズラリ――どういう意味があるのだろうと、頭を捻りかけたとき、

「あ~ソレ、あの子のペンネームみたいなモンよ」

 いつの間にか、メモを覗きこんでいるリルドナが言い放った。

「ペンネーム……リウェンの?」

「あの子って作家目指してるからね~」

 そこまで言って、彼女は表情を少し変えた――

 昨日、小屋で眠るリウェンを優しく見つめている時の顔

 ……姉としての顔なのだろう。

「あの子、実は白よりも青が好きなのよね」

 …カチリ

 やはり自分の瞳の色だからだろうか…

 だからあの時見えたアレも……

 俺はメモを折りたたみ胸ポケットに納める、

 理由?

 何故ならリルドナがすっかり動きを止めていたからだ。

 早く食事休憩を済ませてくれ…




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