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赤ルア(テスト用)  作者: あせこ
三日目
32/81

6-2 意外と素直になれません



 相変わらず森の空気は重く、冷たい。

 俺はその空気を押しのけように駆け、ゼルの「走ると危ねぇぞ」という声にも「やる気満々じゃないか」というロイの激励も置き去りにし、ただただ突き進んだ。

 初めは迂闊に走れば転倒し兼ねないと思っていた森も、

 慣れてくれば意外と走れるモノだ、

 そう長くない時間で先行する団体に追いついた。

 俺の到達に気付き、黒い細長い影がこちらを向いた。

「ほう、もう傷はいいのか?」

「何故か、バッチリ癒えた…えーっと、リルドナは?」

「ふむ?」

 ル-ヴィックは相変わらずの無表情の鉄仮面でこちらを見据えている、

 それは値踏みするような仕種にも見てとれた……

 そしてヤツの戦塔の迎撃窓のような口が開いた、

「なるほど…お前()か、」

「な、なんだよ…『も』って」

 そして例の笑顔を見せる、

「さて、なんのことやら」

「で、どこなんだよ?」

 俺は嫌な空気を振り払うように、少しトゲのある口調で促した。

 しかし、ヤツにそんな攻撃は通用しない…まるで意に介すことも無く、

「少し暴走気味に走り回っているだけだ――」

 そこで言葉を一端切り、懐から時計を取り出し一瞥し、

「あと三秒だ」

「おい、短いぞ?!」

 何にツッコミを入れるべきか定まらぬまま、間の抜けた言葉を発してしまった、

 今一度、声掛けなおそうとを言葉を模索している間に――

「あーっ!」

「う゛」

 いつの間に姿を見せたのか、彼女を鉢合わせしてしまった「バッタリ出会う」という感じだろうか…先程の決心は何処へやら、すっかり言葉に詰まってしまう。

 視線をヤツにスライドすると、やはり笑いを堪えているようだ、

 素直に「すぐに戻ってくる」と言ってくれればいいのに……やはり性格悪い!

 そして視線を彼女に戻す、ん…?何か手に持って――

「あ゛」

 俺の視線に気付いたのか、サッと後ろに隠す。

 そして相変わらずの目をクリクリと泳がせる彼女…

 しかし、それが何なのかすぐに見当が付いた――例の救急箱だ。

 ――っ。

 その瞬間に何かの感情が爆ぜた、自然と口が開く、

「さっきはすまん!」

「えっ?!」

「謝りもせず逃げて、挙句に悪魔呼ばわりだ、そりゃ怒るよな……」

「――っ!」

 周囲に他の人間がいるのもお構い無しに俺は頭を下げた、

 その言葉に彼女は戸惑った素振りを見せ「別にいいわよ」とそっぽを向き離れようとしたところを、ルーヴィックにガシッと頭を掴まれワシャワシャと頭を撫でられ、拾われた仔ネコのように大人しくなるのだった。

 状況がわからず、唖然と立ち尽くす俺に対し、

「今のでいいんじゃないかな?」

「うむ、問題ない」

 ロイとルーヴィックのそんな言葉が降り注いだ。

 そして俺の思考が追いつかない内に、リルドナはヤツの手から開放され、お魚咥えたノラネコのように逃げ去った。

 なんだなんだ?

 俺の肩に手が掛かる――ロイの手だった。

「リルちゃんもキミに謝りたいと思ってたんじゃないかな」

「はぁ…そうなんでしょうか」

 突然の出来事に、間の抜けた声しか出せなかった。

 ちゃんと謝ることが出来たのだろうか…




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