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赤ルア(テスト用)  作者: あせこ
三日目
31/81

6-1 今日の回復は調子がいいですよ?

a:\>c:

c:\>cd BlaueAugen

c:\BlaueAugen>Yggdrasill.bat


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ゆっくり読んでね.com /f /h

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※*※*※*※*※*※*※*※*※*※



 時とともに、日はやや昇り、

 秋の早朝の肌に刺さる厳しい空気も和らいできている。

 だが、ここは依然として薄暗く肌寒い。

 妖精の森の奥…本来、人が踏み入れるべきでない場所。

 招かざる一行はただただ歩を進める。



 俺は意識を集中し静かに詠唱を始める、

 ボゥ…と微かに発光し、傷口がほのかに温かくなる。

 ヒールの魔法――覚えておいて損の無い魔法の第一候補だろう、

 効果の方はさておきで、ちょっと頑張れば誰でも覚えられる手軽さがウリだ。

「……お?」

 自らで施したことなのに、驚いてしまった、

 何か失敗したから?

 いや、その逆で大成功したからだった、

 あれほど痛んでいた身体がすっかり治っている。

 ……何?

 何で傷を負ってるか?だと?

 つい先程の『ピンクの剥きエビ事件』で名誉の軽傷を負ったからだ。

 あれは不幸な事故だった、うん。


「へー、キミは回復魔法を使えるんだ?」

 一連の動作を観ていたのだろうか、ロイから声が掛かる、

 そちらに目を向ければ、並んでゼルも興味深そうにこちらを伺っている。 

「いつもは――もっとショボイ回復しか出来ないんですけど、今日は……うーん」

「なんだそりゃ? てめぇのことなのにわかんねぇのかよっ」

 ゼルにも突付かれるが、そうは言われても困る、

 なんせ本当に心当たりが無いのだ。

 さらに思考を深みへと潜らせようとしたが、

「ともかく、傷が癒えたなら、そろそろボク達も移動しよう」

「あ、そうですね、早く追いつかないと」

 冒頭にも述べはしたが、本隊は今も行進中だ、

 俺だけ治療のために歩を止めていたのだ。

 一人では危険だろうと、この二人が残っていてくれたのだ、

 …ありがたい限りだ。

 歩きながらも話は続く、ロイはやや俺の前方を進みつつ口を開く、

「無理せずに待って貰っても良かったんじゃない?」

「いえ、自分の所為で全体を止めるわけにはいきませんから…」

 傷を負ったのも、魔獣によるものではなくリルドナに殴られたから、

 他人から目には、ふざけてて事故った程度にしか映らないはずだ。

 そして問題の彼女は、俺を殴るだけ殴って「バカ!」と声を上げて、

 ズカズカと先に行ってしまった…目が潤んで見えたのは気のせいだろうか。

「でも、なんでまだケンカなんてしたんだい?」

「いえ、俺は一度も殴り返したことはありません…」

「そういうコト言ってるんじゃねぇ、どうして怒らしたんだ?」

 いつの間にかゼルまで俺の詰問に参加している、

 護衛と思っていた人間が尋問官に変貌したようだ。

「それは――」

 森を吹き抜ける冷たい秋風が、俺の鼻に草の匂いを運んでくる、 

 すぐ前を歩いているロイが妙に遠くに感じた。


「――うーん、それはちゃんと謝ったほうがいいね、」

「そうなんでしょうか」

 俺にも過失がありはしたが、そもそもあの女が木を揺らすからいけないんだ、

 謝罪しようにも耳を貸すことも知らないし、

 そしてその後も好き放題に殴りやがって、一方的にこっちが痛いじゃないか。

 俺の想いに対し、ロイから投げかけられた言葉は

「なんで殴られたか考えてみなよ、」

「殴られた理由なんて、いつもと同じ――」

 理由は同じ?

 俺が最初に殴られたときは、確かリウェンが転んだのを助け起こそうとしたのを勘違いして、その次がリウェンの下着を過失とはいえ、覗いてしまったから?そして、今朝のはリウェンを泣かしてしまったことか……

 あれ?

 全部……リウェン絡みじゃないか。

 でも、今回のは…

「どんなに、粗野で乱暴に振舞ってても、女の子なんだよ」

「……」

「ま、大切にしてやれよ、てめぇの女なんだろ?」

「…………へ?」

 何を言っているんだ、この男は…何度言葉を思い返しても意味がわからない、

 俺の理解力が足りないのか、それとも何かの暗号なのか?

 そして考えが至らずに俺は唖然としてしまっていたようだ、

「ありゃ、違うのか?」

「すみません、まだ出会って三日目なんですけど……」

 あの兄妹とはすっかり馴染んで常に一緒に行動しているが、

 …この仕事で知り合った仲なのだ、

 いきなりそういう見解を押し付けられても困る。

「随分と手の早いアンチャンと思ったが、そうでもねーのか」

「ゼル、あんまり茶化すのはよくないよ

 ――まぁ、ボクもすごーく仲いいな、とは思ったんだけどね」

 二名の尋問官は俺を解放する気がないらしい…その視線は俺の顔を捉えて離さない、まるで身に覚えが無い、どうみたら仲良く見えるのだろうか?

「まぁ、なんだ……

 納得いかねーかも知れねーが…謝っとけ、そういう誠意が大切なんだぜ?」

「ゼルこそ、日頃から誠意を感じられないけどね?」

「な、なんだよ」

 ロイは急に矛先をゼルに変更したらしく、その表情をゼルに向けている、

 まるで悪戯を思いついた少年のようだ……

 歳いくつなんだろう? ちなみに俺は十九歳、今更だけど。

「あんまり誠意を欠いていると…『レッドアイズ』に連れ去られるよ、」

「なんで今頃、そんな怪談出してくるんだよっ!」

 意地悪くゼルに迫るロイ、どうやらゼルはこの手の話が苦手なようだ、

 その顔は明らかに「聞きたくない!」という顔だった。

 とりあえず話に着いていけそうに無かったので、俺は口を挟む、

「レッドアイズってなんですか?」

「えーっとね…

 この地域で伝わってるお話なんだけど、新月の夜に顕れる魔物なんだ」

「あれは精霊じゃなかったのか?」

 二人の間で認識が食い違っていたらしく、すかさずゼルが口を挟んだ、

 だが、その言葉にロイはさらに意地悪い笑顔を見せる。

「子供の頃のゼルが怖がってくれたから、どっちでもいいんだけど――」

「うぉい!」

 なるほど、この二人は幼馴染の腐れ縁なんだろうな、

 とりあえず脱線しそうだったので、ロイに先を促す。

「どういう魔物なんです……やっぱり赤い目玉の怪物ですか?」

「いや、その姿は、闇そのもので殆ど見えないんだけど、

 その中にポツンと赤い光がおぼろげに見えるらしいんだ。」

「暗闇に赤い点ですか……?」

 なんとも想像の着かない姿だ、暗闇で赤い点だけ?

「うん、それがあたかも大きな黒い身体を持つ――

 赤い瞳の魔物に見えたところからその名がついたみたいなんだ」

「闇そのものを魔物と捉えた……という介錯ですか」

 昔の人間はなんと想像力が豊かだったのだろうか、

 赤い点だけなら、小さな赤い球の魔物で済むのに、

 闇自体を身体と見立てるとは……。

 感想はともかく、そもそものツッコミを入れよう、

「でも、昨晩は満月でしたし、新月にはまだ遠いと思いますよ」

「ありゃ、バレちゃったか」

 俺の指摘に肩を竦めて見せるロイ、意外と悪戯好きなのかも知れない、

 そんなやりとりに、ゼルは舌打ちをし、そっぽを向くのだった。

「とりあえず、俺はそんな新月限定の魔物よりも、

 小柄で気まぐれな赤瞳(レッドアイズ)に謝るほうが問題ですよ…」

「うんうん、頑張れ頑張れ♪」

 そんな俺のぼやきに満足そうに答えるロイだった……絶対楽しんでるな。

 俺は決心を固め、森の悪路を踏みしめる足に力を込め直す、

 さて、なんて切り出すか…やっぱり直球勝負かな?

 その瞳に負けないくらい真っ赤に染まった顔が思い浮かび、

 俺は自然に小走り気味に歩を進めていた。

 




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