5-4 やっぱり弓が気になるんです
時間にして、体感で数分ほど。
俺はルーヴィックから自分のリュックを受け取り、
あの兄妹とともに集合馬車である森の入り口――昨日馬車を停めた場所――に歩を進めた。
集合時間にはまだ時間がある所為か、まだ人はまばらだ。
その中に見知った顔を見つける、体格のいい金髪の男――ロイだ。
「おはよう、昨日はごちそうさま」
「おはようございます、早いですね」
「おはよ金髪、なかなか美味しかったでしょ?」
「おはようだ」
四人四様の挨拶を交わす。
どれが誰の言葉かは…まぁわかるよな?
「うん、美味しかったよ、えーっと、リルちゃんだっけ?
キミいいお嫁さんになると思うよ」
「そ、そそそそそそう?」
リルドナの赤面モードのスイッチが入り、可愛さ二割アップを果たした。
さすが大人のロイ、今度その対応術を是非ご教授願おう。
今日のロイは完全装備だ、アームガードやグリーヴ、
中でも目を引いたのは裾の長い鎖帷子――ホーバークというやつだろうか。
「さすがにガッチリ固めてますね」
「まぁね、コレで食べている以上は、装備にもお金掛けないとね」
チラりと兄妹をみる。
どうみても防具の類は無い。
「お前らはそんな軽装で大丈夫なのか?」
「大丈夫だ、問題ない」
「はぁ?アンタも軽装じゃない」
「俺はそもそも戦闘要員じゃないし、コートの下にレザーアーマーも着込んでいる!」
ついでにいうと、足に簡易の脛当も着けている。
「大体、昨日は弓使うときに手甲やら胸当てしてなかったか?」
「あれは弓具の一部よ、
素手で弦は引かないし、矢を射るときに弦が引っ掛る危険もあるしね~」
弦が引っ掛る?なるほど確かに腕とかに引っ掛けそうだ。
じゃあ胸当ては要るのか?胸に引っ掛るか…?
気付かれないように(ここ重要)視線をリルドナの胸元へ回す――
今まで服装でわかりにくかったが、小柄な身体に反して大容量。
これなら引っ掛るかもしれない、うん。
「別に軽装で大丈夫よ、倭の国の諺にもあるわ」
「ほう?」
「曰く、『当たらなければ、どうということはないっ!』よ」
「それは本当に諺なのか?」
「あ~うっさいわね、ネコ踏んで死ねば?」
相変わらずの俺たちの不毛な言い合いにロイが口を挟む。
「ねぇ、弓といえばさ、今日は持ってきてないように見えるけど?」
「金髪もそういうこコト言うの? 今日は太刀でいくのっ」
彼女の言葉に、ロイは視線を背負われたモノに移し、興味深そうに眺める。
「へ~、これがカタナってやつなのかな?」
「そうよ、これは両手持ちの、それも大きいやつだから、大太刀ね」
今更ながら思うが、この太刀も、あの時の弓も、
どう考えても俺が代わりに運んでやったリュックに入るサイズじゃないと思うんだ…。
「ねぇ、そういえばヤンキー顔は?」
「もうちょっとしたら来ると思う、アイツ寝坊助なんだよ」
なんというか、イメージ通りな。
「ふ~ん、朝弱いなら早く寝ればいいのに」
「アイツは言うこと聞かないからなぁ」
ついでに、そこの女も言うこと聞きそうにないんだ。
などと心の愚痴を零していると、噂をすればなんとやら、ゼルが姿を見せた。
「よっ!」
「ゼル遅いぞ、起こすボクの身になってくれ」
悪びれた様子もないゼル、小言をぶつけるロイ。
これはこれで、いいコンビなんだろうな。
そしてリルドナの背中を見て、ゼルはこう言った。
「お?なんだねーちゃん、弓は使わねぇのか?」
…。
おいおい、アンタらお約束過ぎるだろ…。




