5-1 お砂糖足りていますか?解
■白銀の姫
むかしむかし、
森には妖精が飛び回り、
泉には精霊が宿っていたほどの昔のお話。
森の中の泉の畔には集落があり、白の民が住んでいました。
その中には、銀色の美しい髪を持つ少女がいました。
少女は白の民と妖精たちと静かに暮らしていました。
しかし、静かで平和な日々は突然壊されました。
白の民の集落は黒き魔王に襲われてしまいました。
泉で遊んでいた少女は助かりましたが、一人ぼっちになってしまいました。
青の魔道師は、不憫に思い、彼女を自らの屋敷に招き入れました。
少女は青の魔道師より、白銀の従者を与えられました。
少女はさらに、白と黒の侍女を与えられました。
年月が過ぎ、美しく成長した少女は白銀の姫と呼ばれるようになりました。
白銀の姫は心優しい女性。
彼女は若き剣士に剣を授けました。
彼女は未熟な魔道師に宝具を貸し与えました。
白銀の姫は弱き人々の味方なのです。
ありがたやありがたや。
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朝、静けさを保っていた森に鳥の囀りが漏れ始める。
すっかり冷え込みの厳しい季節となり、
吐き出す息は白い。
窓から差し込む朝日を背に、少女は話を紡ぐ。
俺はテーブルを挟んで静かに座し、耳を傾ける。
背後には部屋の出入り口、
その傍らには風化した彫刻のように侍すルーヴィックがいる。
ちなみにリルドナだけいない。
彼女は話の途中で「準備があるから」と出て行った。
なので向かいの部屋にも気配は無い。
「以上となります」
「悪いな、こんな朝早くから」
「いえ、私が好きでやっている事ですから」
淡々と受け答えする。
その姿はどこか冷めて見えた。
俺は昨晩のことをまだ引き摺っていた。
なので、言わずにはいられなかった…。
「リウェン、昨晩の話だけど――」
「はい?」
表情こそ変えないが、空気が張り詰めたのがわかる。
あえて蒸し返す事も無かったかもしれない。
だが、どうしても俺は決着をつけたかった。
あれからずっと考えて至った仮説だ。
「…。」
青い瞳は俺を刺し続けている、明らかに警戒しているな。
…しかたない。
俺は視線をそらさずに、間合いを詰める――
「うりゃ」
「ふにゃ?!」
そして彼女の視界の外から手を走らせて――その可愛らしい鼻を摘んだ。
「にゃにゃにゃにゃにゃにふるんれふか~!」
おそらく彼女は『なにするんですかー』といってるつもりだが、ネコの鳴きマネにしか聞こえない。
もう少し弄っていたいが、かわいそうなので、パっと開放する。
「ほれ、なんていったんだ?」
「な、なにするんですかー!」
バッチリ正解、これで確証はとれた。
いつもの言葉使いだが、声色は明らかに幼い――これこそが本当の『素』のリウェン。
さらに続けて、次の手を放つ。
頭のいい娘だろうし、冷静に考える時間が与えない。
「お茶に角砂糖は、別に二個でも三個でもいれるといいよ、ていうか俺が入れてやる」
「は、はいー?!」
いきなりの話題にさすがについてこれないようだ。
そもそもソレが狙いなんだ。
「苦くても飲め、今すぐに出来なくていいからさ」
「え、あ…えーっと?」
ようやく頭を回転し始めたという感じだ、
これで最後の一手、悪いけど詰めさせてもらう。
「これは昨晩、お砂糖理論で俺を煙にまいたお返しだぜ?」
「あ――」
カチリと思考が合わさったんだろうが、すでにチェックメイト済み。
みるみる顔を紅潮させていく、ホント姉妹で同じだよな。
「ず、ずるいです……」
「こうでもしないと、屁理屈こねてノラリクラリとかわすだろう?」
「うぅ……」
彼女は身体を震わせ、目には光る物が浮かんでいた。
ちょっといじめ過ぎたかもしれない。
フォローをいれようとした瞬間、
「エイン、もういくぞ」
「あ?あぁ」
ルーヴィックはそのまま外へ出て行こうとする。
慌ててそれを追った。
俺が部屋を出るのとリウェンがポロポロと泣き出すのはきっと同時だったと思う。




