表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤ルア(テスト用)  作者: あせこ
二日目
13/81

3-2 ブラインドチェスは猫も食わず



 残念(?)なことに俺は死ななかった。

 ヤツお得意の――

「大丈夫か?ナンセンスだぞ」

 で救われた。

 走行中の馬車の中だ、暴れて万が一事故でも起こしたら大変だ。

 バシリスクのように身のこなしが軽いこいつら二人は大丈夫かもしれないが…。

 俺は絶対アウトだ。

 それ以上にリウェンはマズイ、しかも今は寝ている。

 というわけで、この場は何とか凌いだ。

 でも、まぁあれだな?

「お前のせいだろうがあぁぁぁぁだらぁぁぁぁ!」

「暇だったんでな」

「うっさいわね、リウェン起きちゃうでしょ!」

 とかやってたが、リウェンは全く目を覚まさなかった。

 パタンとルーヴィックはノートを閉じる。

 そして、こうほざいた。

「仕方ない、一局指すか」

「は?」

「お前も退屈だろう?」

「じゃなくて、ここでか?」

「そうだ。」

「チェス盤も置けないだろう?

 置けても揺れて駒落ちるだろう?

 あと、ついでに酔うだろぉ!?」

 一気にまくし立てた。

 つっこむところは、まだまだあるが。

「問題ない、」

「アンタ達、面白いわぁ」

 正面ではリルドナがゲラゲラ笑っている。

 その膝にはリウェンの頭があった、膝枕ってやつだな。

目隠し対局(ブラインド・チェス)なら出来るだろう?」

「俺、やったことないんだが……」

「問題ない、」

「俺の方に問題あるわ!」

「まぁ、やってみなけりゃわからんさ」

 何を根拠に…。

 錆びついた鉄扉のように無責任なことを言ってくれる。

「で、どうする?返事は『はい』か『イエス』で応えろ」

「…拒否権なしかよ!」



 というわけで、生涯初の目隠し対局(ブラインド・チェス)が始まった。

 俺の行動は――

 チェスを指すか、

 紅茶を飲むか、

 凶暴姉に殴られるか、

 の三つくらいしか無い気がするんだ…。


「そら、Qg4だぞ?」

「むぅ、Na3でいく」

 二人して腕組みポーズで指し手を宣言し合う。

 ちなみに、リルドナは目の前で棋譜を記入している。

「ふむ、Ra4だ。」

「目は閉じたほうがいい、余計な情報が入らなくて済むからな。」

 なるほど。

 俺もそれに習う。

「えーっと、Nc6」

そんなのあり得ない(イリーガル・ムーブ)、そこにはお前の騎士側の歩兵(ナイト・ポーン)がいるぞ」

「なんで、その(ファイル)騎士側の歩兵(ナイト・ポーン)いるんだよ?」

「八手前にアンパッサンしただろう?」

「そうだっけ?」

 棋譜をノートに記していたリルドナに問う。

 彼女は無言でノートを突き出す。

 意外にも綺麗な字、『18.bc6(e.p.)Qa4』と書かれている。

「く……言う通りだ」

「そら、やり直せ、受け手を聞こうか」

 正直、キツイ…局面が全く把握できない。

 ヤツは両目を閉じ余裕の表情だ。

 呆れ顔で記入を続けるリルドナ、心底ヒマそうだ。

「なら、Kf2だ、一旦離脱する!」

「本当にそれでいいのか?」

「な、なんだよ、」

本当にそれでいいのか(デュビアス・ムーブ)?だ、」

「くぅ……わかんねぇけど、これでいい」

 もう頭の中はグチャグチャだ。

 良いか悪いかすら判らねぇ…。

「Nf2#…チェックメイトだ」

「な……?!」

「だから確認したんだぞ?」

「それなら、素直に悪手(バッド・ムーブ)と言え、」

「まさか、全然気付かんとはな…」

 無茶言うな。

 これは脳によくないゲームだ。

 つまりどういう状況かというと、目の前に僧正(ビショップ)女王(クイーン)チラつかされて、かなり前の手番で配置されていた騎士(ナイト)に気付かず、俺はその射程圏に(キング)をむざむざ動かしてしまったというわけだ。

 記憶の中でしか局面が視えない状況ならではの伏兵だったわけだ。

「では、もう一局行くか」

「「え~?!」」

 二人同時に不満を漏らす。

 もう、ご勘弁頂きたい、いやマジで。

 俺達を乗せた馬車は突き進む。

 朝日はすっかり昇り、秋の晴間を演出し続けていた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ