2-7 目覚めは違和感とともに
目覚めは、いつもと同じ違和感で始まった。
生家を飛び出し、冒険者となって三年。
ほぼ毎日が違う寝床だ。
本当の本当に最初の頃は、見慣れぬ部屋での目覚めに不安を覚えることもあった。
人間の慣れとは恐ろしいもので、そこに違和感は確かに在るはずなのに、
それ事自体に慣れてしまっている、言うなれば違和感が居るのに仕事をしない。
しかし、今朝だけはキッチリとその役目を果たしたようだ。
「なんだこれ…?」
身体中に巻かれた白い布――包帯だった…。
意識が、状況把握にフル稼働する。
昨日のアレか…。
身体中に出来た傷を思い出し、その存在を痛みという表現法で主張し
――なかった。
「あれ?」
昨日あれほど、存在を主張していた痛みがまるでしない。
スルスルスル…。
不思議に思い、腕に巻かれた包帯を解いていく。
「嘘だろ…。」
腕には傷が無い。
見間違いの可能性を考え、他の包帯も解いていく。
まるで手品を見せられたかのような錯覚を覚えた。
傷は初めから何もなかったように、すっかりその姿を消失してしまっていた。
「ただの包帯じゃないな、これ…」
ともかく顔を洗おう、一日はそこから始まる。
包帯を返すついでにリルドナには礼を言おう、きっとあいつのことだ、また顔を赤くするに違いない。
悪戯を思いついた子供の心境で部屋を出たとき、廊下の壁に見覚えのある姿を捉えた。
「リ…ルドナ…?」
返事は無い、彼女は壁に寄りかかり、床に座り込んでいる。
その顔は目を閉じ、可愛いらしい寝息を立てていた、
「おいおい、こんな所で居眠りしてたら、風邪ひくぞ?」
起こしてやろうと近づいた時、垂れ下がった彼女手が何かを抱えている事に気付いた。
それは綺麗に折りたたまれた大きめの布の塊。
その布地に見覚えがある俺はそっとリルドナから取り上げた。
「おいおい…これ俺のコートか?」
コートは完全に綺麗に修繕されていた、破れる以前よりも綺麗に…。




