↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/52

第27話 ツッパってます

第27話 ツッパってます


 朝、チャイムの音で目が覚めた。


 もう、ずいぶんとこの音にも慣れたものだった。うらちゃんの日から数えて、これで何人目になるだろう。寝ぼけ眼のまま玄関へ向かい、勢いよく戸を開ける。


「……あれ」


 誰もいなかった。


 朝の澄んだ空気だけが、玄関先に満ちている。人影ひとつ見当たらない、静かな朝だった。


(また夢でも見たか?)


 そう思い、戸を閉めようとした、その時だった。


「……こ……だよ」


 どこからか、声が聞こえた気がした。


「え、どこ」


 僕はきょろきょろと辺りを見回したが、やはり誰もいない。


「ここだよ」


 もう一度、声がした。今度ははっきりと聞こえた。声のする方向は下だ。僕は視線を落とした。


 地面すれすれ、玄関マットの端に、手のひらに収まってしまいそうなほど小さな青年が立っていた。


「一寸法師……だよな」


 思わずそう呟くと、その小さな青年は、腰に手を当てて胸を張った。


「わかってんじゃねーか」


 声変わり前のような、けれど妙に凄みを利かせようとしている口調だった。


 僕は、あらためてその姿を観察した。童話の一寸法師といえば、お椀の舟に箸の櫂、武器は針、というのが定番のイメージだったはずだ。だが、目の前の彼が右手に握っているのは、明らかに違う代物だった。


 釘バット。


 しかも、そのサイズは彼の体格にぴったりと合わせて作られているようで、明らかにお手製だった。誰が、どうやってこんなミニチュアサイズの釘バットを作ったのか。想像すると、それだけで少し笑いがこみ上げてきた。


「なんだよ、その顔」

「いや、別に」


 僕は慌てて表情を引き締めた。


 服装も、また独特だった。ダボっとしたシルエットのズボンに、丈の短い刺繍入りのジャケット。よく見ると、背中に大きな犬の刺繍が施されている。今の時代でも、たまに見かけないこともない格好だが、どちらかというと、少し前に流行った、いわゆるヤンキーファッションだった。


(また、日本のサブカルチャーに影響されてる系か……)


 カグヤのギャル文化への傾倒を思い出し、僕は内心で苦笑した。この世界の童話キャラたちは、揃いも揃って、日本の若者文化に妙な親和性があるらしい。何か法則でもあるのだろうか。


 まあ、それは追々考えるとして。


「とりあえず、中入るか?」


 僕がそう声をかけると、一寸法師は、釘バットを肩に担ぎながら、ふんと鼻を鳴らした。


「別に、入ってやってもいいけどよ」


 態度は大きいが、その体は、僕の手のひらにすら収まってしまいそうなほど小さい。ギャップの大きさに、僕はまた笑いをこらえるのに必死だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。