第23話 筋肉と動物と大会告知
休みの日、僕が裏山を歩いていると、開けた場所で妙な光景に出くわした。
金太郎が、地面にどっしりと胡座をかき、目の前には、数匹のタヌキと、一羽の野生の鳩が集まっている。
「……何してるんですか、これ」
「おう、坊主! ちょうどええとこに」
金太郎は、僕に気づくと嬉しそうに手招きした。タヌキたちは、まるで挨拶でもするかのように、金太郎の膝に頭を擦り付けている。
「こいつら、賢いんスよ。人間の言葉、わかっとるみたいでな」
「本当に、話せてるんですか?」
「まあ、言葉っちゅうより、気持ちのやり取りッスかね」
金太郎がそう言って、鳩の頭をそっと撫でると、鳩は満足げに、ぽっぽ、と喉を鳴らした。動物たちの警戒心のなさが、そのまま金太郎への信頼を物語っているようだった。うらちゃんの言う動物への強さとはまた別の、穏やかで温かい距離感がそこにはあった。
「動物って、裏切らへんからなぁ。だから好きなんスよ」
その一言には、どこか実感のこもった重みがあった。人間相手には見せない、金太郎の素の柔らかさが、そこに垣間見えた気がした。
「そうや、坊主。ちょうどええとこに来た」
金太郎は、思い出したように話を切り替えた。
「今度、町で相撲大会あるらしいんスよ」
「相撲大会?」
「町内会の案内板に貼ってあったッス。優勝賞品、プロテイン一年分らしいんスよ!」
目を輝かせる金太郎に、僕は思わず苦笑した。優勝賞品にプロテインというあたり、田舎町の相撲大会にしては、なかなかピンポイントな景品だった。
「出るんですか?」
「出るに決まっとるやろ! この筋肉、遊ばせとくのもったいないッス!」
力強くそう宣言する金太郎の姿に、僕はふと、この町の人たちにも彼の勇姿を見てもらいたくなった。
その夜、「たいせい」に集まったメンバーに、大会の話をしてみた。
「相撲大会? 面白そうじゃないですか」
うらちゃんが、興味深そうに身を乗り出す。最近では、料理の腕だけでなく、こういう場にも積極的に顔を出すようになっていた。
「うらちゃんも見に来るのか」
「はい、応援に行きます」
店主も、カウンターの奥から会話に加わってきた。
「わしも仕事終わりに顔出すか。金太郎の相撲、見てみたいしな」
「シュンも誘っとくか」
僕がそう言うと、翌日にはあっさりシュンからも「行く行く!」と返事が来た。カメラマンとしての血が騒ぐのか、「写真撮ってやるわ」という一言も添えられていた。
どうやら、この大会は、思っていた以上に盛り上がる予感がしていた。




