かぐやの呪い
さてさてさてさて......。
「まぁ落ち着こうぜ、お嬢さん」
「は?」
「お勉強不足かもしれねぇな。うん。俺より自分の心配しような?場所を言え。近場の病院のな」
「な......っ!!」
日向の言葉に女の子が----御影は顔を真っ赤にした。
「そ、そなた!!信じておらんだろう!!」
「ったりめぇだ!!誰かそんなこと信じられるかよ!!だいたいなんだよ、かぐや姫って!お前ほんとにかぐや姫しってんのか!?」
「知っているに決まっておろう!?わらわはかぐや姫の血族者なのだぞ!?」
「だから、それがおかしいっつてんだろ!?」
2人の間に火花が散る。が、すぐに日向はため息をついて、にらみ会うのをやめた。
「てか、喧嘩してる場合じゃねぇし」
「そなたが信じぬのが悪いのであろうが」
「だって、おかしいんだもんよ。お前、かぐや姫っつたら----」
「竹から生まれたからかぐやと名付けられ、祖父母に大切に育てられた。だが、かぐや姫はもともと月の住人だったがために、かぐや姫は月へ帰らざる終えなかった...。違うか?」
突然求められた同意にたじろいたが間違ってはいない。日向は小さくうなずく。
すると突然、御影は盛大なため息をついた。
「そなたもそう思うのだな」
「そう思うって......だってその通りだろ?」
「いいや、違う」
「は、.........?」
「かぐや姫の話には、そなたらの知らぬ続きがあるのだ 」
「............ちょちょちょちょ!!」
完全にパニックだ。
「なんだそれ...続き?あるわけないだろそんなもん」
「そんなことわらわは知らぬ。だがな、簡単に言えるのは、そなたらの持っているかぐや姫の知識は話の大半。残された少量の話...決して、来世の歴史として語り継がれぬ事実が、現にここにあるのだ」
御影の言葉に、日向は唖然とした。
ここにくるまでに、何度もパニックに陥りそうになる話はあった。そもそも本当はこの状況すらおかしいのだ。だが、日向の話よりも、はるかに御影の話のほうが突飛だ。下手をすれば、歴史が変えられる可能性だって出てくるのだ。
そんな事実が、存在するわけがない。
--------でも。
「.........なんだよそれ。語り継がれない事実って」
存在するしないは、この際まずは置いておこう。
まず始めに知りたいのは----その話がなんなのかと言うこと。日向はそれが気になって仕方がなかった。
すると御影はそっと部屋の隅に近いあたりにある窓辺に立つ。
「......かぐや姫はな、実は月へ帰ってなどいないのだ」
「また初っぱなからそんな...」
「かぐや姫には、たった1人だけ、本気で愛した人間がいたんだ」
日向が小さく眉を寄せた。
ただ話に驚いたからではない。
窓の外を見つめる御影が...何だかとても寂しそうに見えたのだ。
「み......」
「初めて人を愛し、想いが通じ、やっと幸せに2人で歩んでいけると思った矢先、月の使者がかぐや姫を迎えに来た。かぐや姫は、ひどく嘆いただろうな...」
「御影...」
「だが、かぐや姫は悲しむよりも先に、月へ帰ることを拒んだのだ。『わらわは月へは帰らぬ。この人と結ばれることが許されぬと言うのであれば、わらわはここで、愛する人と共に自害致す!』と、言ったそうだ」
...なかなかに突飛な話だ。
だがなんだろう...。どうしてこんなに、話に引き込まれてしまうのだろう...。
さっきまでずっと思っていた。そんなことがあるわけないと。
でも、御影の話し方からして...それが嘘だとどうしても思えない。それがどうしてなのか、いまいち日向にもわからない。
それが単なる同情に入るのか。それとも----。
日向が、御影を信じたいと思ったか----。
「当然、そんなことを言われてはたまらない。月の使者は、無理にかぐや姫を連れ帰ることができなくなってしまったのだ」
「...で、かぐや姫は帰らなかったってことか?」
「結果的にはな。...だが月の使者はな、ある呪いを残して月へ帰ったらしい」
「呪い...?」
日向の問いかけに、御影は即座には答えなかった。
「おい...?」
「......まぁ実際、この呪いに関与しているのは、かぐや姫ではなく...かぐや姫の血族者として生まれてくるわらわたちなのだがな」
「なんでだよ?かぐや姫に対しての呪いじゃないのか?」
「どうやら違ったらしいな。実際、わらわにもその呪いがかかっておる」
...まじかよ。
日向は思わずそういいかけた。だが、すんでのところで押し留める。
すると、押し留めたのがわかったのか、御影は微笑を携える。
「まぁ、見た目にわかるものではないからな。わからなくて驚くのも無理はないだろう」
「......なんなんだ、その...呪いって」
日向の言葉に、御影はそっと目をとじた。
---かぐや姫の血族者は、自分が心から愛する者を持ち、その者と共にかぐやの世継ぎを産まなければならない。それができなければ、かぐや姫の血族者は月の光となり、この世から消えてしまう......。
御影の言葉に、日向は大きく目を見開いた----。




