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不憫な悪役令嬢は、ドリルで常識を穿つ! 〜国家一級魔導具師が、古代遺跡を調査しますわ!〜  作者: 雪見もち子


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第24話:広間の疾走と断絶の射線

最適な結果を求め、最善の道を選んだ末に掴んだ最高の結果。


しかし、それを手にした直後、その隙が私たちの慢心による、最悪の結果を招いてしまったのは、この直後のことだったーー。




戦闘を終えて、私たちは一息をついた頃、祭壇上に浮かぶ不思議な箱へと向かう。



魔力障壁を最大まで展開していたノアは疲労の色が濃く、フェリクスに背負わせ、私はその隣に並んで祭壇の前へと向かう。



「これって一体何でしょうね……ノア、何か分かりそうかしら?」



「モノクル越しから見える魔力から察するに、先ほどのゴーレムと同じ”古代魔力”なのは確定していますが……少々お待ちください、解析します」



じっと目を凝らし、フェリクスに背負われたままノアが解析を続ける。私はその隣で落ち着きなく、待ち続けた。するとーー



「……やはり、これは目的の古代遺物、器の中身であるコアでの可能性が高いです」



魔力障壁による封印の類ではないようで、目視できる限り異常がないことを確認したノアは、私が触れるよりも先に、無機質な声と共にそれを掴み取る。



「古代の”箱”を確保しました」



湧き上がるのは喜び、挫折の日々に苦悩したことは多々ある、それがやっと努力を結んだのだと、肩の荷を下ろしそうになった、わずかな気の緩み。



「ついに、ついにやりましたわ!」



「お嬢様……ああ、このカトレアもお嬢様のお喜びの姿に感動しました。これまでの軌跡を経典へーー」



「淑女がそのように飛び跳ねるなど、言語道断ーーと言いたい所ですが、よくがんばりましたね、お嬢様」



賞賛と共感の言葉を贈るカトレア。そして、私の安全と、淑女としての品位をも守るよう、言いつけられていたクロードは、普段よりも優しい目をして暖かな言葉を贈ってくれた。



各自警戒はしつつも、破壊されたゴーレムも稼働する事はなく、沈黙を続けていた。



ーーそれが、油断に繋がったのだろうか。





ーーゴオオオオオオ



空間を揺らすような地鳴りで私たちは思わず体勢を崩した。



祭壇の奥から、次第と息詰まりそうになるほどの濃度の高い魔力が、徐々に侵食するようにフロアを埋め尽くす。



揺れが収まると同時に私は顔を上げ、前方の祭壇奥に視線を移した。



すると、壁と同色の茶色く錆びた、何かの指先が壁へとかけられていた、



壁が迫り出すかのように、ゆっくりゆっくりと動き出しーーやがて、前身を此方側へと乗り出した。



先ほどの二体目のゴーレムとは明らかな格の違い。



高さも横幅までも大きく、全体的に厚みのある、規格外の装甲が浮き彫りになる。



勝利の余韻を粉砕するように、祭壇の背後から「絶望」が立ち上がった。



「まさか……伝説の、古代遺物、兵器……『特務型』ゴーレム……?」



ノアの呟きは、もはや報告ではなかった。



理解が、追いついていない。



想定不能の古代遺物。



それも――『伝説級』。



私たちは、動きを止めた。



誰も、何も言えない。



恐怖ではない。



その前段階――



脳が、情報の受信を拒絶していた。



ーーズシンッ



一歩動くたびに、絶望が近づいてくる。



ーーグシャッツ!!



そしてそれは、容赦無く同位体であるその残骸をーー踏み潰した。



「な、……っ、まさかの二回戦かよ!?」



「 しかも、さっきとのは明らかに形状も異なりますわ!!」



『警告ーー承認者以外の魔力を検知ーー』



『ブラック・ボックスへの干渉を確認。……殲滅モードへ移行します』



特務ゴーレムから告げられた無機質な音声。



『魔力高火力魔力砲・再充填完了まで……残りーー3分』



私の顔から血の気が引く。



計測不能オーバーフロー』。



レオンの合体大剣は連戦の衝撃に耐えかね、刀身の半分にまで亀裂が走っており、損傷が激しい。



あの二体に使ってしまった、メインウェポンを掴むレオンの顔は、険しさを写した。



「……チッ、あと一撃まともに受ければ、この剣ごと私が先に斃されますね」



最強の騎士と呼ばれるレオンの口から漏れた、初めての弱音。



「カトレア、お嬢様の安全を優先に」



「お嬢様、どうかお下がりを!!」



私は言葉を発する事は疎か、思うように身体が動けない。



カトレアの手が私を掴む、



ーーカツン



弾丸をとりこぼした、音。



「……全員、撤収っ! リトニア号まで死ぬ気で走れ……ッ!!」



カイルの怒声が広間に響く。



巨大扉のそばに停められたリトニア号ならば、逃走が可能かもしれない。



僅かに残る可能性。



倒すことより、命の優先。



しかし、あそこまでは、遮蔽物など一片もない。



広大な石畳の床を横切らなければならない。



「お嬢様、失礼ッ!」



レオンが私を横抱きにし、爆発的な脚力で一歩を踏み出した。



彼の身体強化なら、一瞬でリトニア号まで到達できる。



……だが、他の面々は違う。



「……っく、この速度、どこまで持つか……!」



ノアを、背負い走り続けるフェリクス。



そして殿を固めるカトレアとクロード。



彼らの走力では、リトニア号までの距離はあまりに遠く、



そして『特務型ゴーレム』の魔力チャージ速度の方が先、早すぎた。



「……レオン、 私はいいから、皆を……っ!」



「無理だ! お嬢様ごと全員が焼き払われる!……選択肢は、ないっ!!」



レオンの表情は、かつてないほど険しく苦悶の表情が浮かぶ。



リトニア号まで、あと数百メートル。



ーー広い。



魔力砲の放出まで、わずか3分。



たったの「3分」。



ーーあまりにも、遠い。



――止まる。



が、



――ガキンッ!!



弾幕の音。



――パンパンパンッ!!



ゴーレムの足元にある残骸。



フェリクスが双銃で弾幕を放ち、それの視界を塞いだ。



「ーーカイル!!」



「ああ、逃げ切らせる!」



ーーダンダンダン!!



連射する『アズライール』の銃撃音。



片腕の核に命中し、動きを鈍らす。



「……お嬢様、先に行ってください。……カトレア、あとは頼む」



「ーーっ、どうか、ご武運を……ッ」



クロードによる『過剰身体強化』で超加速。



魔導爆弾をゴーレムの足元へ次々と投球した。



――ドガシャァァァンッ!!



砂埃を巻き上げ『精密照準』を強制的に外させようと足掻く。



だが、その全ての執念を持ってしても。



古代の守護者の、絶望的な出力を「止める」には至らなかった。



「……冗談じゃねーっての! こんな火力じゃ、間に合わない……ッ!!」



リトニア号のステップまで、あと数メートル。



だが、砂埃を裂いて放たれたのは、


予定よりコンマ数秒遅れただけの、


冷徹な紅い閃光。


ーー回避不能。


ーー防御不能。


理屈も、感情も、届かない。



――ただ、網膜が白く焼き切れる。



「「…………っ!!」」



ーー計測不能、制御エラー。



逃げる仲間の背中を、紅い光が情報の暴力で飲み込んでいく。

死の射線が、一行の尊厳ごと、更地へと変えようとした、



その瞬間――更なる絶望の光景が、私の瞳に映った。



ーー『その運命を、穿ちますか?』



誰かの声が、聞こえた。


【活動報告 / 後書き用】

定期更新日は水・金の18時です。



【※調査団のパトロンになりませんか?】

「面白い」「続きが気になる!」と思ってくださった皆様、

ぜひブックマークや【星】での評価をお願いしますわ!

作者のモチベーションという名の魔力は、皆様の評価でチャージされます。

どうかエヴリンたちの物語を応援してください!

ご意見・ご感想も、ドリルを止めてお待ちしております。


(※この物語は作者の妄想・パッション・ロマンにて世界観や魔導具が構築されております。

多少のご都合主義は、技術屋の愛嬌としてご理解いただけますと幸いです!)

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