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誰にも邪魔させない、私たちの青春。  作者: 青木ユイ
第一章 2016年度 高校一年生
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にじゅうご ごじゆうにお取りください

 私はその後も、何通かカナくんとメールのやりとりをし続けていた。「また明日ね」と打ち込んでメールを送信すると、スマホの電源を落とした。

 もともとの容量がそんなに多くない機種のスマホだから、connectとかアプリを入れているとスマホが重くなって動きが遅くなるんだよね。だから、お母さんに「使わないときは電源を切りなさい」って言われている。こまめに電源を消すのが本当にいいことかどうかは分からないけど。

 まあ、私はそんなにスマホを長時間使うこともなく、頻繁に誰かと連絡を取り合っているというわけでもない。だから基本的には寝る前に電源を切ってるから、そこまで気にする必要はないかな。

 あ、でも、中学の時は夜布団の中でconnectを使ってチャットをすることはあったなぁ。相手は、数少ない友達。あっちゃんとマリちゃん。

 本名は、中尾敦美なかおあつみ小倉茉莉菜おぐらまりなっていう。あ、よく考えたらマリちゃんの“菜”も私と同じ漢字だ。瑞樹ちゃんとも同じ漢字があるし、こういうのってなんか嬉しい。

 にやにやしながらベッドに寝ころがる。小学校の頃からずっと使っているこのベッドは、飛び乗ったりするとギシギシいうようになった。最近はちょっと勢いをつけて座ったりするだけでもそんな音がするから、寝ている間に壊れたりしないかちょっと心配だ。新しいのを買ってもらえたらいいんんだけど、無理かなぁ……。

 そんなことを考えながら、ベッドの上でごろごろする。あっちゃんたち、元気にしてるかな?


 しばらくして、ぱちっと目を開けた。あ、いつの間にか寝てたのかな。

 朝からずっと降っていた雨は、今も止まずに降り続けている。窓に雨粒がばちばち当たってるから、結構激しい雨みたいだ。

 明日からまた学校があるのに、雨降ったままだったらやだなぁ。明日には止むといいんだけど。雨の日って、なんか憂鬱な気分になるんだよね……。

 一人でいると、こう、考えごとが多くなっちゃうのがちょっと嫌。なんか恥ずかしい。

 それから数分後、お兄ちゃんがドアの外から私を呼ぶ声がした。お昼ご飯ができたらしい。いつもお兄ちゃんに作らせちゃって悪いなって思うんだけど、あいにく私は料理が苦手なのでした。今度教えてもらおうかなぁ。

 私は鏡を見ながら軽く髪を整えると、部屋を出てリビングに向かった。


 リビングに行くと、レアが出迎えてくれた。機嫌がいいのか、尻尾をぶんぶん振っている。頭を撫でてあげると、気持ちよさそうにしていた。

 ……って、今からご飯食べるっていうのにレアのこと触っちゃった。手、洗わなきゃだね。お母さん、レアを触った後は手を洗えってよく言うし……。

 なら、犬を飼わなきゃいい話だと思うんだけど。お母さんの考えていることはよく分からない。あ、私はレアのこと好きだけどね。

 うーん、それにしても、うちのお母さんってちょっと変わってる? ほんとのお母さんだけど、いまいち考えていることが分からない。謎だ。でもまあ、そんあこともあるよね。私だけじゃないよね。うん、きっとみんなもそういうことあるに決まってる。そうしておこう。

 一応手を洗ってから席に着く。いつも通り、お兄ちゃんと私の二人だけ。両親はいつものように仕事に追われている。今日も朝早くからバタバタしてたみたい。

 それにしても、お兄ちゃんの作ったそぼろ丼はすごくおいしい。こんな兄がいるのに料理が全然できない私ってどうなんだろう。やっぱり教えてもらうべきだよね。もう高校生だし。


「おいしい?」


 そう尋ねてくるお兄ちゃんに、私はうなずく。


「うん! すごくおいしい」

「そう? それはよかった」


 お兄ちゃんは笑顔でそう言う。うん、なんかやっぱりお兄ちゃんってほわほわしてるよね。こういう所が頼りない気がしてしまうのは、私だけかなぁ。こういうのはやっぱだめだよね。でも、そう感じてしまうのは仕方ない。人それぞれ考え方は違うものなんだから、きっと大丈夫。な、はず。


 そぼろご飯があまりにも美味しいので、私はおかわりした。やばい、食べ過ぎたかもしれない。太るかな? お兄ちゃんが美味しいご飯を作るのが悪い! ……でも、おいしいものを食べれることはやっぱり幸せだよね。うん、太るとかそういうことはとりあえず置いとこう。

 そぼろは多分栄養あるはずだし。知らないけど。今私が勝手に考えただけだけど。でも、なんか栄養ありそうだもん。


「やっぱりお兄ちゃんが作るご飯は美味しいね~」


 何気なく私がそう言うと、お兄ちゃんはにこにこ笑いながら言った。


「それ、スーパーでもらってきただけなんだけどね」

「えっ!?」


 もらった? そんなの初耳だよ! それにしても、スーパーでもらったってどういうことだろう?

 お兄ちゃんを問い詰めたところ、このそぼろはお兄ちゃんがスーパーに買い物に行った時に見つけたもので、タッパーに入って置かれていたらしい。値段とかが書いてある紙には「そぼろ 余り物なのでご自由にお取りください」って書いてあったのだとか。それでもらってきたんだって。

 そんなことってあるんだ……。私、びっくりだよ。家事はほとんどお兄ちゃんがしてくれるから、あんまりスーパーに行ったことがない私には分からないけど。でも、タッパーに入ったそぼろをご自由にお取りください……?

 やっぱりよく分からない。おかしい気がするよ。スーパーではこれが当たり前なのかな? それともまたお兄ちゃんが騙されてるだけ? まさか、毒が!(そんなわけない)

 でも、お兄ちゃん曰く他にもこのそぼろをもらっていっている人はいたらしい。お兄ちゃん自身も、今までこんなことなかったからびっくりして店員さんに訊いてみたんだってさ。そしたら、そぼろ弁当に使うはずだったそぼろを間違えて多く作りすぎたんだって。それで、その余ったそぼろを「ご自由にお取りください」することになったとか。

 でも、普通に売ればいいのにね。無料でもいいのかな? 損にならないのかな? ちょっと不思議。まあ、お客さんは得したからいいよね。


「……ってことなんだけど、優樹菜わかった?」

「うん。分かったはわかったけど、ほんとに気を付けてね? 今回は普通のスーパーだったしただお店の人がミスしたからってだけだったけど、お兄ちゃん怪しい人にもすぐついて行っちゃいそうだから心配なんだからね」

「う、うん、ごめん……」


 反省している様子なので。許す。うん、これからは私も手伝うことにしよう。お兄ちゃんだけに任せてたら不安だ。文句ばっかり言うのもだめだし。

 私がしている家事と言えば、洗濯か掃除くらいなものだよね。別に毎日やっているわけでもないし。暇な時とかお兄ちゃんが忙しい日とか休日とかにするくらい。だからあんまり文句言えないんだよね。お兄ちゃんが頑張ってくれていることは知ってるし。


「これからは私も手伝うよ。お兄ちゃんに任せっきりでごめんね」


 そう謝ると、お兄ちゃんは「無理しなくていいんだよ」と言いながら私の頭に手を乗せた。……バカにされている気がする。

 いや、きっとお兄ちゃんは私に気を遣ってくれているんだろう。それはいいんだよ。いいけど。

 でも待ってよ! かわいい(?)妹が手伝うって言ってるんだから、ありがとうとかよろしくとかくらい言ってくれてもいいよね? なんか、お兄ちゃんちょっとひどい?

 ……まあ、いいや。お兄ちゃんも私に教える方が面倒だとか思ってるんだろう。私は自分ができることだけすればいいや。うん、そうしよう。食中毒とかになったら全部罪をお兄ちゃんに押しつけて……ってなんだろう私なんか性格悪い。


「まあ、気持ちだけ受け取っておくよ。ありがとう、優樹菜」

「う、うん……」


 き、気休めはいらないよお兄ちゃん……。なんかある意味ひどい気がしてきた。私、今結構傷ついたんだけど。まあ、私の作ったご飯なんか食べたくないかもしれないけど! だって私、高校一年生にして包丁を持つのも危険だと言われるほど料理下手だもん。

 中学の時の調理実習では、絶対に私は参加しなかった。というか、班のみんなに参加しないでという視線を向けられていたのかもしれない。包丁を持てば自分や人の指を切るし、炒めると焦げるし、クッキー生地を混ぜることすら困難だ。友だちやクラスメイトからは何度も「神がかってるね」と言われたような気がする。

 レシピ見たら作り方は分かるんだよ。作り方の理解はできるんだよ。でも、なんというか、料理の基本的なところができないだけなんだよ! 包丁が使えなくて炒めたりするのが下手で「さくっと混ぜる」っていう曖昧な書き方のせいでやり方が分からないだけなんだよ!

 ちなみに煮るのはしたことないけど、多分これならできるんじゃないかなって思ってる。けど、それをあっちゃんとマリちゃんに言ったら「お湯こぼすと思う」とか「ふた閉めるの忘れて汁気蒸発してなくなりそう」とか言われた。ちょっとひどい。

 でも、仕方ないんだよね。それくらい私は料理が絶望的に下手なんだよ。


 そういえば、中学の時クラスメイトに「佐野さんは家庭てきそうな顔してるのにね」と言われたことがある。どういう意味なんだろうと思っていたけど、つまりあれだよね。料理できそうな顔してるけど実際には料理できないんだねってバカにされてたんだよね。ひどい。


「ごちそうさまー」


 回想を終え部屋に戻ると、スマホの電源を付けて久しぶりにあっちゃんとマリちゃんとのグループチャットを見てみることにした。connectを開いて、三人のグループのところをタップする。

「久しぶり! 今暇?」と打ってみると、すぐに二つの既読が付いた。


〔マリ:久しぶり~! 元気?〕

〔敦美:久しぶり!〕


 一気にメッセージが来る。やっぱり、メッセージ送信してすぐに返事が来るのは嬉しい。


〔ゆきな:元気だよ~! 二人はどう?〕

〔マリ:元気! 久しぶりに会いたいなぁー〕

〔敦美:あたしも元気だよ! たしかに会いたいね〕


 そんな会話をする。この二人と話すのは、気を遣う必要がないから気が楽なんだよね。つまらないことでも悩み事でも、何でも話し合えるような気がする。履歴を見てみても、ほとんどくだらないことしか書いてない。

 たまに誰かが悩み事を打ち明けたりしているけど、意見を出し合ったりしてちゃんと解決している。なんかこういうのってやっぱりいいよね。だから、私は高校は違ってもこの二人のことが大好きなんだ。


〔敦美:ねえ、聞いてよ!〕 

〔マリ:なに?〕

〔ゆきな:どうしたの?〕

〔敦美:好きな人できちゃった〕


「え!」


 あっちゃんの突然の告白に、私は驚いて声に出してしまった。あっちゃんにも、好きな人ができたんだ。私も行ってみるべきかな?

 そう考えていると、今度はマリちゃんから衝撃の発言が。


〔マリ:実は私もいるんだ~。ってか、付き合ってる(^^)♪」


「ええっ!」


 マリちゃんは付き合ってるの!? さっきから驚きばっかりだ。どんな人なんだろう。


〔敦美:え~! 写メないの?〕

〔マリ:また撮らせてもらう~〕


 二人の会話がどんどん進んでいってしまう。そんな時、マリちゃんからのメッセージ。


〔マリ:優樹菜は好きな人いるの?〕


 うーん、これって言うべきなのかな。いや、でも……うーん、隠すのはやだな。嘘をつくのもやだ。恋バナにも参加したいし。よし、言おう。


〔ゆきな:いるよ〕

〔敦美:えー!〕

〔マリ:あの優樹菜もついに大人の階段を上ったか……〕


 なんか、すごく驚かれている。まあ、そりゃそうか。中学の時は私男子と全く接点なかったしね。高田くんのニセコクもあったから余計に。

 いや、まあ別にそれはいいんだけど……。


〔敦美:会いたい!〕

〔マリ:私も! 写真とかないの!?〕


 ……このメッセージに対して、私はどう返事をしたらいいんでしょうか?

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