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誰にも邪魔させない、私たちの青春。  作者: 青木ユイ
第一章 2016年度 高校一年生
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32/35

にじゅうよん 右よし左よし計画よし

遅れてしまってすみません!

24話です。

 日は進み、今日はゴールデンウィーク最終日の五月五日。子どもじゃないけどこどもの日です。

 今日は別に、どこかに行くというわけでもない。朝から雨が降っているから、外に出る気分でもないしね。

 そう思いながら部屋でごろごろしていると、お兄ちゃんが部屋のドアを開けて電話の子機を差し出してきた。だから、ノックして入ってきてっていつも言ってるのに。


「優樹菜、電話」

「また?」


 よくかかってくるなぁと思いながら受話器を受け取り保留を解除する。「もしもし」と私が言うと、相手は「あぁ~よかったぁ、ゆっきーだ」と安心したように言った。女の子で、よく聞く声。ということはつまり、瑞樹ちゃんだ。


「どうしたの?」


 そう尋ねると、瑞樹ちゃんは最初に「突然電話しちゃってごめんね~」と謝る。別に謝らなくてもいいのに、瑞樹ちゃんは律儀だね。

 それからしばらくの間、学校で話すのと同じような何でもない会話をする。そしてやっと、瑞樹ちゃんが本題を持ち出してきた。


「あ、あのねゆっきー。その、私……桧原に、誘われたんだけど」

「へ?」


 誘われた? カナくんに? ……って、昨日言ってた話か。私、忘れっぽいな。


「うん、それでどうしたの?」

「あぁ、その、行き先がアリアスモールでいいかどうかってこと」

「あー……」


 アリアスモール。たしかに大人数で外に遊びに行くとなったら、比較的近くにあるアリアスモールくらいしかないと思う。自転車で行けるくらいの距離だし、坂が多くてしんどいから、それが嫌なら市営のバスでも行ける。

 ここらの学生が遊びに行けるのは、アリアスモールくらいなんだよね。でも、あそこは一昨日高田くんと一緒に行ったばっかりなんだけど。高田くん、車だったんだしどうせならもっと遠いところに連れて行ってくれればよかったのに。

 あぁ、でも、瑞樹ちゃんの提案をないがしろにするわけにはいかない!


「そこでいいよ! 他の人は分からないけど、多分みんなここでいいって言ってくれると思うよ」


 迷った末にそう答えると、彼女はほっとしていたみたいだった。よしよし、これでいい。


「じゃあ、他の人にも聞いておくね。あ、そういえばゆっきー携帯持ってる?」

「あ、うん。持ってるよ」


 突然聞かれてびっくりしたけど、そうだよね。連絡取るのに毎回家の電話を使うのは面倒だもん。

 電話番号とメアドを教え合って電話を切った。


 しばらくすると早速一通のメールが届いた。もちろん、瑞樹ちゃんからだ。本文には、こう書かれていた。


『ゆっきーですか?

 瑞樹です。よろしくね~。

 あ、それと桧原のメアド教えとくね。ないと不便でしょ?』


 メールの最後には、カナくんのメアドが載せられていた。み、瑞樹ちゃん、一体何を思ってこんなことを……。

 いや、ありがたいんだけど。ありがたいんだけどさ!


「うぅ~……」


 やっぱりちょっと恥ずかしい。連絡先に登録しちゃってもいいのかな? 瑞樹ちゃん、ちゃんとカナくんに許可もらってるのかな? ま、まさか勝手に!?

 不安になったので、私は瑞樹ちゃんに尋ねることにした。メールは打つのが遅いので、電話にすることにした。幸い、私は通話し放題のスマホを使っているのでお金の心配はしなくても大丈夫。


『もしもしゆっきー? どうかしたぁ~?』


 瑞樹ちゃんの声が聞こえてきた。心なしか、にやにやしているように感じる。み、瑞樹ちゃんもしかしてからかってる?


「あ、あのね、メールに書いてあったカナくんのメアド、保存してもいいの?」


 すると瑞樹ちゃんは、電話の向こう側で笑い出した。笑われちゃった。


『本人に聞きなよ! っていうか、ゆっきーなんだし桧原なんだから大丈夫だって! ほんとにゆっきーは変なところで心配性だよね~』


 瑞樹ちゃんは楽しそうに笑いながらそう言う。そ、そんなに笑わなくてもいいのに……。恥ずかしくなるよ~。

 ってか、私ってそんなに色んなことに対して心配してるのかな? 自分ではそう感じたことはなかったけど、相手から見たらそう思うってこともあるんだね。

 すると、瑞樹ちゃんがそういえば、と思い出したように声を上げた。


『えっとね、行き先はアリアスで決まりだって!』

「あ、そうなんだ! 了解~」


 やっぱりアリアスモールになった。まあ、一番近いしね。それから、結構広いし。


「日にちはいつか決まった?」


 私が尋ねると、瑞樹ちゃんは『ごめんごめん、言うの忘れるところだった!』と笑いながら言った。危ないところだった。聞いてよかった。


『そうそう、ゆっきーはいつが空いてる? 曜日とか簡単でいいから教えて~』


 瑞樹ちゃんの質問に、私は「いつでも!」と即答する。だって、私ずっと暇だし。塾に行っているわけでもないから、土日は基本空いている。どっちにしろ、学校のある日は無理だろうから必然的に土日になるはずだしね。


『そっか! じゃ、桧原に伝えとくね。また詳しいこと決まったら連絡するよ』

「うん!」


 電話を切ると、私はさっき瑞樹ちゃんから届いたメールをもう一度開いて、カナくんのメアドを連絡先に保存する。姓、名と登録していき、ニックネームのところは“カナくん”と設定しておく。それから、瑞樹ちゃんのメアドも登録っと。

 瑞樹ちゃんのメアドを入力して名前を打つ時、一つ気づいたことがあった。そういえば、瑞樹ちゃんの“樹”って字は、私の優樹菜と一緒の字なんだった、って。漢字ってあんまり気にしたことなかったから、気付かなかった。

 二人の連絡先を登録し終えると、カナくんにメールをすることにした。せっかくメアド教えてもらったんだし、ね。いい……よね。

 ゆっくり、間違えないように文字を打っていった。


〔件名:佐野です。

 本文:

 佐野優樹菜です。

 カナくんのメアドで合ってるかな?

 突然メールしちゃってごめんね。


 初めて男の子にメールを送るから何を書いたらいいか分からないんだけど、これからもよろしくね。



 優樹菜(*´▽`*) 〕


 やっと打ち終わり、送信すると深呼吸する。うぅ、緊張した。私、変なこと書いてないよね?

 しばらくすると、返事が来た。は、早い……。カナくん、打つの速すぎだよ。


〔件名:Re:佐野です。

 本文:

 桧原奏音です。


 佐野さん、スマホ持ってたんだねー(`・ω・´)

 そうとい知ってたらもっと早くメアド聞いてたのに……(ノД`)

 ごめんね~


 こちらこそよろしくね( ´艸`)

 奏音。〕


 感想。顔文字がすごく多かった。なんかかわいい。すごい使ってる。なんか、すごく手馴れてる感じがする。かっこいー。

 返信するときに思わずかわいいとか書いてしまいそうになったけど、それはさすがにやめておいた。私が変な子だと思われる。それに、メールとかって相手の気持ちが分かりにくいからトラブルになりやすいってよく聞くしね。


〔件名:Re:佐野です。

 本文:

 そうなんだよー。私から聞けばよかったかな?


 カナくんいっぱい顔文字使うんだねー。ちょっと意外かも( ̄▽ ̄)


 いいよいいよ~気にしないでv(^_^v)♪

 大丈夫だよ(*^^*)


(便乗して顔文字使ってみました笑)〕


 そうしん。カナくんにつられて色々と顔文字使っちゃったけど、変じゃないかな? って、こういうところが心配性なのかも。やだなあ、もう。

 今度はなかなか返事が返って来ないので、漫画を読んで暇つぶしする。しばらくすると、スマホからメールを受信した音が流れた。メールボックスを開くと、メールの差出人はカナくんだった。やっぱり。


〔件名:Re:佐野です。

 本文:

 ならよかった。



 顔文字使われるの嫌だったりする?〕


 その文章を見て、私ははっとした。な、なるほど、これがメールの怖さってやつかぁ。

 どうしよう、別に嫌とかそう言うつもりじゃなくて、ただなんとなく思ったことを書いてみただけだったんだけど。うー、いろいろ考えなきゃいけないから大変。よし、一応謝ろう。それしかないよね。

 私はいつも通り、とろとろした遅い打ち方だったけど、焦っている気持ちが強いのか何度も打ち間違いをしてしまった。誤字とかあったら恥ずかしいからちゃんと読み直してから送信しよう。


〔件名:Re:佐野です。

 本文:

 全然嫌じゃないよ!

 今まで通り使って~( ´ ▽ ` )ノ


 カナくんが嫌な思いしてたらごめんね〕


「よし、と」


 やっぱり、ちゃんと謝ることは大切だよね。今回は別に私は悪くなかったかもしれないけど、カナくんに誤解させちゃったのは事実なんだから。

 それにしても、やっぱりメールってちょっと怖い。そんなつもりはなくても、怒らせちゃったりその勢いでケンカしちゃったりして、仲良しでいたはずがだんだん壊れていってしまう。もちろん、絶対そうなるってわけではないけど。でも、やっぱり怖い。

 だから、気をつけなきゃいけないんだよね。軽はずみな気持ちで送ったメールが相手を傷つけて、それまで築いてきた絆が失われてしまうかもしれないから。


 って、メールメールって言ってるけど、よく考えたらグループチャットってやつの方が怖いかも。既読無視したからってだけでいじめとか、ホラーすぎる。開きっぱなしだっただけで実は読んでないとか、そういうこともあるかもしれないのに。心を広く持たないといけないよね。

 けど、私そう言う空気読めないんだよね。見てるだけで発言はしなかったり、面倒だからって溜めて見るようになったり。

 そんな風に適当なのがいけないんだよね……。分かってるんだけど、通知いっぱい着たりしたら面倒だし。それは仕方ないんだもん。じゃあグループチャットするなって話なんだけど。

 ベッドに寝ころがって漫画を読むという超だらだらした生活をしていると、メールが来た。カナくんからの返信だ。私は慌ててメールを開いた。


〔件名:Re:佐野です。

 本文:

 そっか~。それならよかった。


 こっちこそごめんね。

 俺は大丈夫だよ~〕


 あ、よかった。そんなに怒ってなかったみたいだ。本当になんとも思ってないかは分からないけど、カナくんは多分こんなことくらいで怒らないよね?

 とりあえず、早く返信しようっと。ただでさえ打つのが遅いのに、打ち始めるのも遅かったらメールの返信も遅れちゃうもんね。別に遅れたところでカナくんが怒るとは思えないけど、できれば早く変身したいと思うのが私なのです。


〔件名:Re:佐野です。

 本文:

 よかったー!

 怒らせちゃったのかなって思って、ちょっと不安だったんだ。


 明日も楽しく過ごせたらいいね( ´ ▽ ` )ノ〕


 一応、打ち終える。最後に変なことを書いていないか確認してから送信、と。

 そのあとに、私はグループや個人でチャットができるアプリ『Connect』を開いた。友だちに登録されている人数はまだたったの5人だ。家族3人と中学の時に仲が良かった友達二人だけ。

 でも、高校生になって友達も増えたし、もう少しくらい、この数字が増えたらいいな。


 期待は膨らんでいくのだった。

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