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竜の異世界での過ごし方  作者: たろっと
異世界転生編
17/17

第16話 迷子探し?いや嫁探しだ!

声につられて冒険者達が振り向いた

先にいたのはレイヴァン


彼は、まるで近くの店まで一緒に行こうとでも

思っているかのような感じの声であった。


「レイヴァン・・・お前、本気か?」


呆然とする声で尋ねる仲間に

お前は何故この程度の事に躊躇するんだ?

とでもいうようにレイヴァンは首を傾げた。


「何故、躊躇する?

 俺達は冒険者だ、冒険者が危険を恐れて如何する?

 俺達が行かなくて誰が王子を助け出すんだ?」


俺のほうこそお前達が如何してこんなにも

依頼に対して躊躇するのか分からないと言うレイヴァン

そんな彼に冒険者達は衝撃を受けた


確かに自分達がこの依頼を受け王子を助け出さねば

誰が王子を助けられるというのか


王国の騎士にしたってあいつ等は戦争や護衛に向いており

罠が張り巡らされた迷宮や危険な獣や魔獣、契約獣が

襲い掛かってくる今回の魔境といった場所は

俺達、冒険者が得意としているものである

そんな俺達が得意分野で何故、尻込みしなければならない?


それに王子にしたって俺達がいかず

騎士たちに任せたりなどすれば恐らく

何倍もの時間を費やさねばならなくなり

被害も甚大であろう


それに気が付いた冒険者たちは

自身の長年のプライドや冒険者としての誇りもあり

次第に自分が行かず誰が行く?と考え始めた


そして彼らは、俺も・・私も・・と

一人・・また一人と手を上げていく

彼らは、今からとても危険な場所へ行く

しかし今の彼らには、死ぬつもりなど全くない


彼らは・・此処にいる全員がこのギルドにおいての

凄腕の冒険者であるのだ、そんな自分達が

危険な場所だからと言って赴かず如何する?

そんな事では、未開の地を切り開き

新たな冒険へと突き進む事などできはしない


彼らは、冒険者である

そんな彼らが心の中でそう思ったとき

この部屋にいる冒険者全ての選択は決まっていた。


「・・・よしっ!全員決意を決めたか!」


何処か嬉しそうなガイアの声に周りは頷く

そこには、誰一人として離脱するものは居なかった。


「では、今からエルヴィン王子救出作戦を行う!

 作戦は、もう事前に考えてあるから

 心して聞いてくれっ!!」


凄腕の冒険者が集まるとある一室

そこに今、王子救出作戦が始まった瞬間でもあった。


そして、作戦内容が伝えられた後

実行はヒドラの魔境に入念な準備も要するため

明日という事になり本日は各自解散となった。


その後、ガイアはふとした事が気になり

部屋の隅で休んでいるレイヴァンに尋ねた


「なぁ、レイヴァン・・お前今回やけに協力的だが

 普段、けいや・・嫁探しに夢中なお前が一体如何したんだ?」


思わず契約獣と言おうとしたものの

レイヴァンの言い直せとばかりの強い睨みつけを喰らい

げんなりしながらも言い直したガイア

周りの残っていた冒険者たちもガイアの言葉に

興味津々に耳を傾けて聞いていた。


ソレもその筈、彼ことレイヴァンは冒険者の中では

“変人”と名高い変わり者の冒険者である


彼は、普段から運命の相手=契約獣(笑)と出会う為に

過酷な依頼をあえて受け、危険な契約獣が闊歩している

迷宮の奥地へと自ら入ってゆく命知らずである

しかし、面倒事を何より嫌い自分が嫌だと思った依頼は

全力で拒絶する唯我独尊な彼


そんな彼が、王子の救出&捜索という

厄介な件に好んで参加したのがガイアには不思議でならなかった

他の冒険者たちも不思議に思ったらしく何人か首を傾げている者まで居る


「・・・別にお前には関係ない」


仏頂面で全く答える気がないレイヴァンに

溜息を吐くものの『なぁ』と突如、彼からかけられた声に

反応して振り向くガイア・・・だったが


「着ていく服は、コレとコレのどちらがいいと思う?」


その言葉と共にガイアの目の前にズイッと差し出された服

片方は、黒く所々銀色の刺繍が施された真面目さを感じさせる服

もう片方は、白く所々金色の刺繍が施された優しさを感じさせる服

どちらも上等な品だが、間違っても魔獣や上位の契約獣がうろつく場所へ

着ていく服ではないと断言できる品物だった。


「ふむ、黒い方は真面目さをアピール出来るが少々冷たそうに見られて

 しまったりしたら相手に悪い印象を与えてしまうしな・・

 白い方は、優しそうな印象を与えるが、この白さは軟派な印象を

 与えてしまいそうで不安があるんだ」


コイツは一体何の話をしているんだ?と固まるガイアと冒険者達

そんな彼らを無視してレイヴァンは一人で自分の世界へと閉じこもっていた


「あぁ、早く運命の相手の顔が見たい

 穏やかなのか怒りっぽいのか、また寂しがりやなのか

 どんな食べ物が好きなんだろうか?

 町で一緒にデートとか出来たら嬉しいな」


うっとりと目を細めて普段の彼からは想像もつかないほど

柔らかな表情を浮かべて微笑む彼


その言葉は、お見合い相手を期待する言葉のように聞こえなくもないが

間違っては成らない・・彼が、頬を緩めて考えているのは


 “契約獣”(人外)なのである


周りの冒険者たちも衝撃を受けて口を無意識に大きく開けた


(((コイツ、王子探しじゃなくて嫁探しをする気だ)))


あまりの事に咄嗟に反応できない周囲とは違い

ガイアだけはレイヴァンの肩を大きく揺さぶる


「おいっ!何か裏があると思ったらそう言うことかっ!!

 幾らお前でも今回だけは嫁探しはさせねぇ!

 王子のほうを優先して探せよ!絶対にだっっ!!」


ガクガクとレイヴァンの肩を揺さぶりながら絶叫に近い声を上げる彼に

レイヴァンは漸く自分の世界から帰還し、うっとおしいとばかりに睨んだ


「あぁ、勿論分かっている幾ら俺でも今回の件は真面目にやるさ

 しっかりと王子を探せばいいのだろう?

 だが、その最中に運命の相手を探すのならお前とて文句は言えまい」


要するに〔王子?別に探してやるけど俺は嫁も探すわ〕という事である

この国の一大事に嫁探しだと!?コイツ本当に頭可笑しいと

怒りをあらわにし肩を震わすガイアを見て

音もなく静かに退室する冒険者達


その後、この部屋が怒り狂ったギルドマスターと

変人冒険者によって半壊させられたと囁かれるのは

約一時間後の出来事であった。



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