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転生者救済編 第十話

その直後だった。


「っ……、あ……」


ナオキの喉の奥から、獣のような低くしゃがれた息が漏れた。

 完全に絶望から引き上げられ、魂が修復されたことによる絶対的な安堵。それが引き金となり、限界までナオキの脳髄に蓄積されていた『魔薬』の負荷が、一気に凄まじい【情欲】へと反転して爆発したのだ。


視界が赤く染まる。

 アイリたちとのリンクが切断されている間、たった一人で耐え続けていた莫大な狂気の反動。それが今、唯一の接続先であるセリアへと、怒涛の勢いで雪崩れ込んでいく。


「……セリア」

「あ……っ、はいっ、ナオキ様……っ! わかります、ナオキ様の熱が、リンクを通じて私の中に……っ、あぁっ!」


セリアの身体がビクンッと大きく跳ねた。

 ナオキの抱える、暴力的で、脳が焼き切れるほどの飢えと渇き。それが感覚共有リンクを通じてダイレクトに流れ込んでくる異常な快感に、彼女の瞳孔がトロンと開き、甘く淫靡な吐息が漏れる。


「……悪いが、もう限界だ。手加減なんか、できねぇぞ」

「いりません……っ! 手加減なんてしないで……っ、私を、めちゃくちゃにしてくださいっ!!」


ドンッ!! と。

 ナオキはセリアの華奢な肩を乱暴に掴むと、そのまま彼女を最高級の革張りソファへと力任せに押し倒した。


「ああっ……!」


黒い革のシーツの上に、彼女の白銀の髪が美しく散らばる。

 ナオキはのしかかるようにしてセリアを組み敷くと、その小さな唇を、飢えた獣のように貪り食った。


「んっ……ちゅっ、あむ……っ、れろっ、んんっ……!」


唾液が絡み合う、生々しい水音がVIPルームに響く。

 ただのキスではない。互いの存在を確かめ合い、魂の奥底までを喰らい尽くそうとするような、切実で暴力的な口付け。

 ナオキの荒々しい手が、セリアの整ったメイド服を容赦なく引き剥がしていく。リボンが引きちぎられ、ボタンが弾け飛び、雪のように白い肌が冷たい空気に晒された。


「はぁっ、はぁっ……セリア、お前……っ」

「あぁっ、ナオキ様……ご主人様ぁっ……! もっと、もっと私に傷をつけて……っ、貴方のモノだって、身体中に刻み込んでぇっ!!」


ナオキの熱い唇が、首筋から鎖骨へと這い下りていく。かつて隷属のチョーカーがあったその場所に、今度は決して消えない所有のキスマークを、赤い血が滲むほどに強く吸い上げて刻み込んだ。


「ひぐっ……! ぁあぁぁッ!!」


セリアの口から、快楽と歓喜が入り混じった甲高い悲鳴が上がる。

 感覚共有リンクが、二人の情欲を無限のフィードバックループへと叩き込んでいた。

 ナオキの『支配したい』という凶悪な加虐心サディズムが、リンクを通じてセリアの脳を直接犯し、セリアの『支配されたい』という狂気的な被虐心マゾヒズムが、ナオキの理性を完膚なきまでに焼き尽くす。


「お前は……俺の狂信者だ。俺の所有物だ……っ!」

「はいっ……はいっ! 私はナオキ様の道具です……っ、ナオキ様の影です……っ!! だから、全部、全部私の中に吐き出して……っ!」


セリアはナオキの背中に腕を回し、そのスーツの背中を爪が食い込むほどに強く掻き毟りながら、自ら腰を浮かせてナオキの熱を迎え入れた。


ソファが激しく軋む音が、重厚な防音扉に守られた部屋の中に響き渡る。

 それは、世界から弾き出された最弱の男と、世界を拒絶した狂信の少女が、互いの存在を絶対的なものとして世界に刻み付けるための、泥臭くて、どこまでも熱い『儀式』だった。


「……あぁっ、ナオキ様ぁっ……!!」


もう、孤独などどこにもなかった。

 自分が不要な存在だという絶望も、冷たい路地裏の記憶も、すべてがこの甘く暴力的な熱の中に溶けて消えていく。


「……絶対に、離さねぇ……っ」


ナオキは、汗と涙で濡れたセリアの顔に自分の額を押し当て、その狂気と愛に満ちた瞳を真っ直ぐに射抜いた。

 世界中がどう書き換わろうとも。この手の中にある絶対的な熱だけは、システムだろうが神だろうが、絶対に奪わせはしない。


商業都市の地下深く、魔王とその影は、互いの魂を焼き切らんばかりの情欲の渦の中で、狂おしいほどに深く、一つに溶け合っていった。

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