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第40話 抱擁


 金属がぶつかり合う鋭い音が、薄暗い部屋に響き渡った。

 レオンハルトとエドモンの剣が火花を散らし、互いの力が激しくぶつかり合う。


「ぐっ……やはり貴様は、忌々しいほどに腕が立つな!」

 エドモンは剣を振るいながら、憎悪に歪んだ顔を向ける。

「だが今日こそ、ヴァロアの名でその首を――!」


「――黙れ。」


 レオンハルトの声は低く、冷たかった。

 次の瞬間、彼の剣が弾丸のように走り、エドモンの刃を強かに弾き飛ばした。

 金属音と共に、エドモンの剣は床へと転がる。


「ぐっ……!」


 だがなおも、エドモンは素手で掴みかかろうとした。

 その執念に、セリーヌは思わず声を上げる。


「公爵様、危ない!」


 刹那、レオンハルトの体がしなる。

 彼の膝が鋭くエドモンの腹を打ち抜き、エドモンは呻き声を上げて崩れ落ちた。


「……終わりだ、エドモン。」


 剣先を喉元に突きつけられ、ついにエドモンは地に伏した。

 なおも憎悪を滲ませた目で睨み上げるが、その体はもはや動かない。


 


 直後、部屋の外から駆け込んできた騎士団がエドモンを取り囲む。

 鎧の音が響き、団長が高らかに告げた。


「エドモン・ヴァロア、反逆罪および誘拐の罪により、拘束する!」


 腕をねじられ、鉄鎖で縛られる。

 エドモンは抵抗を試みたが、複数の騎士に押さえつけられ、無力に引き立てられていった。


「離せ……! 俺はヴァロアだぞ! この国を動かすのは俺たちだ! 公爵ごときに、負けるはずが――!」


 その叫びは、無残に廊下へと遠ざかっていった。

 部屋に残るのは、重苦しい沈黙。そして――。


 


「セリーヌ。」


 その名を呼ばれ、セリーヌの胸が震えた。

 気づけばレオンハルトが目の前に立ち、縄で縛られた彼女をそっと解き放っていた。

 硬い縄が解かれ、自由になった腕が震える。


 次の瞬間、彼女は抑えきれずに彼へと飛び込んだ。


「公爵様っ……!」


 彼の胸に抱かれた瞬間、堰を切ったように涙があふれる。

 どれほど不安だったか。どれほど怖かったか。

 そのすべてを、彼の強い腕が包み込んでいった。


「遅くなってすまない。」

 低く囁かれたその声に、セリーヌは首を振る。

「いいえ……来てくださった……それだけで……」


 震える声が涙に溶け、言葉にならない。

 だが彼は、強く抱きしめながらはっきりと告げた。


「――もう二度と、君を一人にしない。」


 


 少し離れた場所で、カトリーヌも縄を解かれていた。

 彼女は安堵の涙を拭い、静かに呟く。


「よかった……セリーヌ様、本当に……」


 その視線には、兄を止められなかった悔しさもあった。

 だが同時に、友を救えた喜びも滲んでいた。


 


 騎士団が部屋を整理し、反逆の証拠品を次々と押収していく。

 隠された文書、武器、そして革命派の名簿。

 すべてが白日の下に晒され、ヴァロアの陰謀は覆しようのないものとなった。


 団長がレオンハルトに深く頭を下げる。

「公爵様、この功績、必ずや王家に伝わりましょう。」

「ああ。それより……セリーヌを医師のもとへ。」


 レオンハルトはセリーヌを抱きかかえ、優しく微笑んだ。

「君が無事でよかった……」


 セリーヌは涙を拭い、かすかに笑みを返す。

 その笑顔は弱々しくも、美しく輝いていた。


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