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水の亡国  作者:
第四項: 王女の庭園
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古ノ国覚書 二

 かの亡国の地図は、比較的簡単に書くことが出来る。

 王城地区を真ん中にし、橋でハイロリアや王女の居住、王立図書館などと繋がっているだけの、ごく小さなものだ。

 ハイロリア以外にもアクリアルは多くの街を所有していたが、”水”に飲まれたのは上記の地域だけだったらしい。



 次項からは、魔法や聖法の話も交えつつ考察を広げよう。




【リリアナ・ガーデン】

 薬草庫であり、王女の居住でもあった庭園。

 かの有名な王女、リリアーヌ・ディ・フォールン・アクリアルは、史実では自害したことになっている。

 死の原因として、最も有力な説は「恋仲だった騎士との仲互い」だ。

 しかし手記によれば、王女の死には無情な経緯があるという。



「…当時大陸中を旅して回っていた王女は、一向に収まらない戦いに疲弊していた。

 人々は王女を頼り、聖女と崇め、彼女の清らかさを褒め称えた。

 だが一向に人々は悔い改めないのだ。そうしてまた、聖女の到来を待つ。

 そのような日々に悲しみを抱いた王女は、ある日旅を止めた。人々は彼女を責め立てた。

 手酷い裏切りを受けた王女は、ならばと自らを裏切りの王女と冠し、命を絶ったのだ」



 彼女の居住には、屋上に百合、鈴蘭水仙(スノーフレーク)花蘇芳(ハナズオウ)花浜匙(スターチス)が咲いていたそうだ。

 

 鈴蘭水仙の花言葉は「乙女の誇り」。

 花蘇芳は「裏切り」。

 花浜匙は「変わらない誓い」。

 そして王女の名の由来ともなった百合は、「純真」や「純潔」。



 今も昔も変わらないことだが、うつくしい花には物語があり、百合には王女を讃えるための物語があった。

 それは戦あふれる時、天の女神が天使を遣わせ、人々に人の道を説くお話。最後は人々も改心し、天使は純白の百合となって人々を見守るようになった、というだけの短い話だ。





【朧火の森】

 優れた薬士だった王女は、様々な薬草を森に植えさせた。

 王女はこの森で翡翠の鳥を見つけ、リトル・リリィと呼んで可愛がるようになる。

 王の狂気に呑まれた後、この森にも様々な異形が現れたらしいが、特筆すべきことはないだろう。

 ただ王女の死後降るようになった朧火は、王女の”水”の欠片という見方が大勢だ。

 皮肉な事に、王女は絶望してなお聖女にふさわしい在り方の娘だったのだ。

 人々がそれを称して「朧火」と呼んだのは、王女を偲ぶだけでなく、王女を責め立てたことへの罪悪感も手伝ったのだと思われる。





【聖法と魔法】

 前項の通り、この手記の書き手は聖と魔の区別をしない方針だ。

 

 今現在の世にも、魔法や聖法はある。ただ魔法使いの扱いは格段に向上しており、魔女並の力を持つ者は深淵への干渉を制限する術をかけられることで、常人と変わりない生活を送ることが出来ている。

 聖法と魔法の区別も曖昧となり、学者や研究人以外は気にすることもない。


 手記によれば、人そのものが生命という”水”を収める「水櫃」なのだという。

 人は人の”水”には干渉できず、世界の”水”にのみ干渉できる。

 その境を壊そうとしたことが亡国の悲劇に繋がったのかもしれない、と書き手は綴っているが、その話はまた後でしよう。





【聖具と魔法技師】

 聖具とは聖法に不可欠のものであり、魔法技師はそれの作り手だ。

 聖法が隆盛を誇った時、聖具の作り手は聖者だと信じられていた。

 土地や物から祝福を受けた聖者が、その祝福をもって鍛えた武具だとされていたのだ。

 だが実際には、聖具や魔法具を作るには、深淵へ潜り様々な性質を拾ってくる必要がある。

 聖具は”水”の代わりであるので、それは当然のことなのだが、昔は上手いこと誤魔化されていたようだ。恐らく疑問に思う者は、片端から殺されていったのだろう。恐ろしい時代もあったものである。


 

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