第七話 プレゼン開始
そうだ!
思い出すんだ!普段食べているカップ麺たちを。そのバーコード位置を!
正確にバーコードの位置を把握することで、バーコードリーダー前でのもたつきを減らし、流れるように鞄へ入れられるはずだ。
集中だ。集中することが、一番の近道だ。
ふぅー。
ピ…ピ…ピ、ピ、ピピピピッ!
「えぇ!?竹本さん!?それ、どうなってるんですか!?」
ピピピピピピピピッ!
ーー『お支払方法をご選択ください』
現金での支払いを済ませる。
…ふう。
途中、白石さんの声がした気がするが、まあいい。
そこそこ早く終わらせられたと思う。
「お待たせしました。じゃ、移動しますかね?」
「いや、レジで途中、凄い速さじゃなかったですか!?片手ほぼ使えないのに…」
「ははは!そんなことないですよ!」
よし。今のこの反応を見る限り…好感を持ってくれているに違いない。
提案するなら今しかない!
「ところで…移動のついでに、事務用品のお店に寄ってもいいですか?白石さんも使えるものがあると思うので」
「まだ事務用品のこと言ってるんですか…
それに、わたしに使える物ってなんですか?
まさか、ボールペンとか言わないですよね?」
「もちろんです。ご説明が長くなるかもしれませんので、一旦、こちらへ」
コンビニ内のイートインスペースへ案内し、席へ座るよう促す。
白石さんが席へ座ったことを確認し、向かいの席に座る。
「先ほど、白石さんは、女性が1人で食料を持ち歩く危険性を訴えていました。
そこに役立つものが事務用品店には、数多くあると考えております。」
突然始まったプレゼンに固まる白石さんに気付かず、話を続ける。
「まず、一番おすすめしたいのが、“パンチ”となります。書類などに穴を開ける用具ですが、ポイントとしましては、まず、女性が持ち運びしやすい重量。次に、素材が金属製ということ。最後に、持ち手がある、という3点からおすすめと考えております。
パンチの持ち手部分に手を通し、金属部分を対象に向かって振り下ろすことでかなりの攻撃力を発揮すると考えております。
続いて、二番目におすすめしたいのが、“延長コード”となります。こちらに関しましては…」
「たっ、竹本さんっ!これ、いつまで続くんですか!?
真剣に考えてくれていることはわかりましたから!」
うん?
まだまだ序盤のハズが、あっさり了承を得られたな。
学生さんには、了承までに必要な情報は案外少なくて済むのかもしれない。
「わかっていただけましたか!ありがとうございます!
では、この辺りで事務用品を取り扱っているお店、ご存じですか?」
やっと本題に入れたことが嬉しく、つい前のめりで聞いてしまった。
「あ…はい。このコンビニからは少し歩くんですけど、わたしの通っている大学の近くに大きめの文房具店があるので、事務用品も置いていると思います…」
少し後ろに仰け反りながら、白石さんが答えてくれた。
「そうなんですね!では、さっそく向かいましょうか!」
ガタッ!
話を終えるとほぼ同時に立ち上がり、荷物を持った。
「あ、竹本さん腕痛みますよね。痛み止めだけ飲んでからにしてください」
そう言いながら、ペットボトルの水と痛み止めの錠剤を差し出してくれた。
「ありがとうございます。でも、ちょうどこの痛みで、寝不足で開きにくかった目が、はっきり開くようになったので大丈夫です!」
「ということは、眠気が吹き飛ぶほど痛いってことですよね!いいから早く飲んでください!」
手に持っていた荷物を奪われ、代わりに錠剤を押し付けられた。
仕方ない。ここまで言われたら飲むしかないか…。
受け取った錠剤を口に入れ、差し出されていたペットボトルの水で流し込む。
あ…蓋、開けててくれた。
折れた(かもしれない)左腕をさりげなく気遣ってくれる優しさが、何とも言えない気持ちになる。
「何から何まで、ありがとうございます」
「ふふふ…さっきから、お礼言ってばかりですね」
「あ、そうですかね」
白石さんの笑顔につられて、微笑み返してしまった。
おっさんに笑いかけられるの、嫌じゃないかな…。
一抹の不安がよぎる俺をよそに、白石さんが歩き始める。
「さ、行きますか!」
「荷物、持ちますよ!」
白石さんが持ってくれていた荷物を半ば強制的にあずかる。
こんな年下の女の子に持たせるなんて、男のプライドが許さない。
「ありがとうございます!でも、竹本さん片手しか使えないし、少しは持ちますよ!」
「じゃ、お言葉に甘えて、こっちお願いします」
カップ麺がほとんどの荷物を渡す。
「あ、軽い…。重くても持てるのに!」
「さすがに、重い方は持たせられません!さ、行きましょう」
そう言って、白石さんの半歩後ろを歩き始めた。
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20分ほど歩き、目的の店に到着した。
こ…ここが…
例の場所か…
どんな商品が並んでいるだろう。
考えただけでドキドキが止まらない。
はやる気持ちを抑えながら、自動ドアの前に立った。




