第三十八話 施設利用
「竹本さん!開けてください!」
「俺だけでもそっち行くんで!」
「若くない者が単独で挑むなど、自殺行為に等しい!ここは俺の切り札、黒川さんを投入するべきだ!」
「お前はいかねーのかよ!」
「こんな時に、喧嘩を吹っ掛けないでください!」
ドアの外でいろいろ言われている気がするが、なるべく被害がでないよう1人で対処するのが最善だろう。
巡回ロボをよく見てみる。
胸元に液晶のタッチパネルが搭載され、赤く光っている。
全体的な形状としては、この前、黒川くんが相手をしていた配膳ロボよりは華奢な骨格をしている。
…つまり、壊れやすいはずだ。
心に希望を、右手に新調した大型ホッチキスを持ち、気合いを入れる。
「さぁ、どこからでもこい!」
格好をつけてみるが声が震えたうえに裏返った。
…うん。
こういうのは、黒川くんの方が似合うな。
こちらの言葉がわかっているかのようなタイミングで、巡回ロボが警告音を響かせながらこちらへ向かってきた。
が、動きはあまり速くないようだ。
ぶつかる前に横へ避け、振り向き様に大型ホッチキスで頭頂部のようなところを殴る。
ガシャンッ!!
…想定していた通り、物理的な衝撃に対しての耐久性は高くなかったようで、一撃で動かなくなった。
胸元のパネルも、表示が消え暗くなっている。
…よいしょっ。
念のため、巡回ロボを横に倒し、移動できないようにする。
これで、見回りから身守れる…なんて。
う~ん、あまりうまくないな。
ーーガチャ。
ドアを開ける。
「お待たせしま…」
「大丈夫っすか!!」
俺を押し退けるように、黒川くんが中に入ってきた。
「はい。新しいこのホッチキスのお陰で、なんとかなりました!」
右手に持っていた大型ホッチキスを掲げる。
「怪我、増えてませんか!?」
白石さんが、俺の身体を上から下まで、何往復も見回す。
だいぶ心配をかけてしまったようだ。
「心配をお掛けし、すみません。
今回は、怪我もしてないです」
“ほら”と、いうように両手を軽く広げる。
白石さんは、その様子を確認し、ほっとしたような表情になり、巡回ロボの様子を見ている黒川くんの方へ歩きだした。
「…。
無事でなにより」
「はい。ありがとうございます」
水城くんにも心配をかけてしまったようだ。
「そのロボ、たぶんもう動かないとは思うので、シャワーをしに行きましょうか」
念のため、ジム内を見回ったあと、順番にシャワーと着替えを行う。
ーー全員が、シャワーと着替えを終えた。
ジムの入り口付近に行くと、水城くんが巡回ロボについていた、液晶画面を取り外していた。
「蒼きくん?なにをしてるんですか?」
「備えあれば憂いなし―それが、この世界を生き抜く者の鉄則だ。
…まあ、凡人にはわかるまい。見えている世界が違うのだからな」
つい、視線を遠くにはずしてしまう。
水城くんの話し方に慣れてきたつもりではあるが、ロボを相手にしたあとだと、さすがに来るものがある…。
一旦、考えないようにしよう。
白石さんと黒川くんも合流し、ジムを後にした。




