第二十九話 施策開始
<残り94日>
今日は、昨日に引き続きドームの端を目指す。
ただし、方角は東側。
日課になりつつある引き継ぎ資料作りにも慣れた。
日が昇るとほぼ同時に会社を出発する。
もちろん、白石さんには地図を、黒川くんには周囲の警戒をお願いしている。
「ドームの中心がわかったら、明日は中心を調べに行くのもありっすね」
「そうですね。もしかしたら、このドームから出る手がかりがあるかもしれないですもんね」
会話を楽しむ2人をよそに、昨日と同じように集中しながら歩いていく。
カチカチカチカチ…。
ーー歩き始めて30分ほど経ったときだった。
ピーピーピーピー!
全員のスマホが同時に鳴り出した。
ポケットからスマホを取り出し、画面を確認する。
<現時点脱落人口10名。脱落数増加を目的とした施策を開始します。>
これは…。
良くないことが起きるようだ。
顔を上げ、2人の方を見る。
ちょうど2人もスマホから顔を上げた。
「竹本さん…。これってどういうことだと思いますか…」
「詳しいことは書かれてなかったのでなんとも言えないですが、これまでと状況が変わるようですね」
「2人とも!あっちに走って!」
少し焦ったような黒川くんの指示に従い走り出す。
そうだ、あの時、スマホの音は4箇所から鳴っていた。
あの場の近くに、俺たち以外に人がいたんだ。
ーー数分ほど、走っただろうか。
さすがに息が上がってきた。
「もう歩いても大丈夫ですかね…」
「そっすね、さっきの場所からは離れられたし、いいんじゃないっすか」
「よ、よかった…」
白石さんも息を切らしている。
「どうしましょう、状況が変わったみたいですし、またいつスマホが鳴り出すかわからないですし、一旦、戻りますか」
「そうっすね」
2人の同意を得られたので、早々に帰路につく。
が、先程の道は使えないため、少し遠回りをすることになりそうだ。
会社に向かって歩き始めて少しした時だった。
ガシャンッ。
後ろで、何かがぶつかるような音がした。
反射的に振り返ると、そこには…。
ニャー。
ファミレスで見かける、配膳ロボットがいた。
なぜこんなところに…?
「かわいいー」
白石さんには、可愛く見えるようだが、状況がおかしい。
ここは、道路の真ん中だ。
ピー!ピー!
『人を感知!人を感知!』
突然、大きな警告音とともに、こちらへ近づいてきた。
「白石ちゃん!」
黒川くんが、白石さんとロボットの間に割って入った。
「白石さん!こちらへ!黒川くん、頼みます!」
白石さんの手を引き、近くにあった家具のショールームへ飛び込む。
展示されたソファーの陰から、黒川くんの様子を伺う。
人気もない静かなオフィス街。
配膳ロボを蹴り倒し、延長コードを無表情で叩きつけている男性…。
…さすが黒川くん。容赦がない。
ーーコツン。コツン。
足元に何かが当たった。




