第二十七話 見地調査
会社を背に歩きだす。
トコトコトコトコ…。
(カチカチカチカチ…)
「なんか、カチカチうるさくないっすか?」
「たしかに…。何の音ですかね?」
白石さんと黒川くんが顔を見合わせているのを横目に、歩き続ける。
なるべく同じ歩幅になるよう、集中を途切れさせないよう、真剣に…。
「あ、竹本さん!先に行かないでくださいよ!」
「あの音、竹本さんの方からしてないっすか?」
「また何かしてるんですかね…」
そんな会話がされているとは露知らず、どんどんと進んでいく。
「竹本さんはあんなんだし、なにか話さないっすか?
無言で歩くのもさすがに気まずいっすから」
「それもそうですね」
後ろの方で2人の会話が少し聞こえてくるが、気にせず歩き続ける。
「白石ちゃんって、大学で何を専攻してるんっすか?」
「わたし、看護大学行ってるんですよ」
「あ!だから、怪我の手当てあんなにうまかったんすね!納得っす」
「まさか、就職前に、こんなに役に立つとは思ってなかったですけどね。
わたしの家、弟が2人もいて、一緒に遊びに行った先で怪我の手当てをすることも多くて。
怪我したときは泣いているのに、手当てをしたらすぐ泣き止んで走り出す弟たちを見てると、頼りにされるのが嬉しくなって」
「そっか。
白石ちゃんみたいに頼りになるねーちゃんがいたら、俺も甘えちゃうっすね」
「ふふふ。
黒川さんでも甘えることってあるんですね」
ーーしばらく歩き、やっとドームの端にたどり着いた。
ドームは霧がかかったように白く霞み、その向こうに見える外側の景色は、蜃気楼のように歪んでいた。
手を伸ばして触れてみる。
触感は…
何とも言えない…
プラスチックのように冷たくも暖かくもなく、ガラスのように固く、さらに、磁石の抵抗のようなものも感じる。
ドームの外側の景色に目を向ける。
ぼやけてはいるが、規制線だろうか。
横に伸びた黄色い筋がうっすらと見える。
向こう側に、俺たちがいることに気が付いたのか、ライトが点滅している。
どうやら、たくさんの人がいたようだが、不思議と音は一切聞こえてこない。
「今頃、外はニュースっすかね。
俺たちが、明日のニュースの一面になるんっすかね」
「そうですね…。
みんな、どうしているのかな」
珍しく少し皮肉めいたことを言った黒川くんとは対照的に、白石さんは少し寂しげな表情を浮かべていた。
それは、置いておいて、ポケットからブツを取り出す。
そう。“カウンター”だ。
ここまでの歩数を確認する。
「わかりましたよ!」
「え?」
白石さんと黒川くんが同時にこちらを向いた。
「ここまで、3,125歩です!」
「あ、さっきまでのカチカチ音、やっぱり竹本さんだったんっすね」
「これで、あとは、東側も計れば、ドーム全体の大きさがわかるはずです!」
「竹本さん…。
いま、その話していないんですけど…」
白石さんが呆れたような表情でこちらを見ている。
「ドームの外側、人がたくさんいるみたいですけど、どうなってるのかなって…」
「ああ、そうですね…」
そういえば、月末の泊まり込みと重なって、一週間は、まともに家に帰っていない。
「あいつら…元気かな…」




