第二十六話 業務計画
「白石さんに教えていただいたお店は、もうペーパーウエイトが無くなっていたので、今後の入手先を探さないといけませんね…」
「そうっすね…」
「そういえば、街のどこまでがドームに包まれているのか、お二人はご存知ですか?」
俺の質問に、白石さんと黒川くんは顔を見合わせている。
「…お2人もご存じないのですね。
明日、調べに行きませんか?」
「いいですよ。わたしももう少し外の状況を知りたかったので」
白石さんの返事に同調するように黒川くんが頷く。
決定でよさそうだ。
「では、明日も今日と同じ時間からで、それまでは各々過ごすということにしましょう」
そこから、少したわいのない会話をしてから、自席へ、そして、業務へ戻った。
<残り95日>
ーー翌朝。
今日も引き続き資料を上司の丸山さんの机に置く。
加筆や付箋が増えてきたため、申し訳ない気持ちを込めて、頭を下げる。
時間が取れれば、どこかのタイミングで引き続き資料を一新してしまいたいな…
そう思いながら、振り返ると、少し呆れたような表情で、こちらを見ている黒川くんがいた。
「おはようございます」
「はよっす…」
簡単に挨拶を交わしつつ、出発の準備を進める。
ついに、俺の特技が役に立つ日が来たのだ!
ついつい、緩む口元を押さえつつ、応接室へ向かった。
ーー応接室では、すでに準備を終えた2人が横並びで座っていた。
すっかり定位置が決まったようだ。
2人の向かい側の席に座る。
「おはようございます。
今日は、ここから一番近そうに見えるドームの端へ行くのはどうでしょうか」
「いいと思いますよ」
「うっす」
2人の同意が取れた。
そして、本番はここからだ。
カタッ、コトッ、コトッ…
机の上に、用意したものを並べる。
「まずは、白石さん。
こちらをお願いしたいのですが…」
会社説明の資料用に保存していた、会社付近の地図を手渡す。
もちろん、バインダーにセットし、3色ボールペンも付けて。
「これは…。地図にドームの場所を書くんですか?」
「さすが、白石さん。察しがいいですね!」
「ここまで準備されていたら、誰でもわかりますよ」
「ははは。
ドームの端もお願いしたいのですが、他にも役に立ちそうなお店の位置や逆に近寄らない方がよさそうな場所など、気付いたことはすべて記入してもらいたいのです」
「それがもう一セットあるってことは、俺もっすか?」
黒川くんが、面倒そうな表情を浮かべている。
「いえ、こちらは僕の分でして、黒川くんには、周囲の警戒をお願いできればと思っています」
「ならよかったっす。俺、そういうの苦手なんで」
これで、女性・若者目線での情報と俺の情報を掛け合わせた地図ができる。
サンプルは多いほど良いわけではない。
2人が納得してくれたようなので、次の話に移す。
「昨日、外に出た際に見ていたのですが、ここから見て、西側が一番ドームの端が近そうです。
そして、白石さんにお渡しした地図の赤い道。それが、ほぼ真っ直ぐ西へ進める道になります」
「じゃ、この道を行けば良いってことですね」
「それなら、俺は白石ちゃんの後ろに付いて行くっすね」
役割・方針がまとまったので、早速会社を出発する。
右手をポケットに忍ばせてーー。




