第二十二話 バッティング
「いろいろ道具も揃いましたし、次は食料の補充をしていきましょうか」
怒らせてしまった白石さんの様子を伺いつつ、提案をしてみる。
「そっ、そっすね!」
話を変えたい気持ちが伝わったのか、黒川くんも同意してくれたので、話を進めてしまう。
「食料ですが、昨日・今日と集めてきましたが、多く見積もって2週間前後の量だと思います。ただ、日中はちらほら出歩いている人も多いので、今日と同じく早朝に行動できればと思うのですが」
「わたしは良いと思いますよ」
白石さんの返事に合わせるように、黒川くんも頷いてくれた。
早々に2人の同意が得られて、少し拍子抜けした。
「食料のことなんすけど、2店舗ハシゴするのはどうっすか?俺の働いてるとこの系列店が、少し離れたとこにあるんすよ。何回か応援に行ったこともあるとこなんすけど」
「そうですね。黒川くんが居たお店もだいぶ商品なくなってましたもんね」
ふと、今日の出来事を思い返す。
「今日のスーパーで実感しましたが…、人と出会う=物資の奪い合い、最悪の場合は殺し合いになる。お2人はどうしていきたいですか」
俺の質問に、応接室が静かになる。
それもそうだ。オブラートに包んで聞いているが、要は人を殺すつもりがあるのかなんて普通に生きていれば考えることなんてなかったことだ。
「…わたしは…」
沈黙を破ったのは白石さんだった。
「わたしは、人を殺めることなんてしたくありません…」
「俺も、同意っす…」
「よかった。僕も同じです。明日からも、生き残ることを第一として、なるべく人に会わないよう行動し、最悪は逃げることも視野にいれましょう」
2人が頷くのを確認して、さらにこれからのことを細かく打ち合わせた。
<残り96日>
ーー翌朝。
昨日と同じく、午前2時に起きる。
今日は、同じ部屋に黒川くんもいるため、アラームは最小の音で設定していた。
身支度を整え、通勤バックとリュックを用意する。
っと、忘れるところだった。
…ガサガサ
備品置き場から、必要なものを数点カバンへ入れていく。
ーーこんなものか。
「…おはようっす…」
ちょうど、荷物の用意が終わる頃、黒川くんが起きてきた。
「おはようございます。よく寝れましたか?」
「バックヤードの床より、だいぶ快適っしたよ」
返事をしながら頭をかいている。
よく寝れたようで安心した。
「…竹本さん、用意できたんすか?」
「終わりましたよ。でも、出る時間までもう少しあるので、急がなくても大丈夫ですよ」
そうだ。昨晩、黒川くんの睡眠を邪魔しないよう、最低限の業務をして眠ってしまった分、今日は少しでも朝のうちに進めようと考えていた。
なので、少しでもゆっくり準備をしてくれた方が好都合だ。
そんな俺の希望をよそに、黒川くんはささっと用意を済ませていく。
仕方ない…。
引き継ぎ資料に加筆し、付箋を貼り付けた後、上司の丸山さんの机に置く。
(よろしくお願いいたします)
心のなかで、挨拶を行い後ろを振り返る。
と、少し離れたところから、なんとも言えない表情で黒川くんがこちらを見ていた。
ーーまずは、黒川くんのスーパーへ向かった。
店内は、昨日より荒れている。
品出し兼接客をしていた黒川くんが居なくなった影響が大きそうだ。
チッ
黒川くんの方から舌打ちが聞こえたが、聞かなかったことにする。
「荒れてしまってますね…。取り敢えず、食料探しますか」
「そうですね。残っている可能性がある商品の方へ案内しますね」
初対面の時の話し方に戻った黒川くんに驚き、白石さんの方を見る。白石さんも同じだったようだ。
黒川くんに案内されたのは、缶詰コーナーではなかった。
パウチになったドライフルーツやようかんなど甘味中心に集めていく。
保存食の印象が薄いものは、まだ残っていたようだ。
「あと、バックヤードにもまだ品出し前の商品があったと思うので、見に行きましょうか」
黒川くんの仕事モードの話し方には慣れないが、後ろをついていく。
バックヤードの扉を開け、進んでいく。
ーー「よう、また会ったな」
後ろから声を掛けられた。




