第二十一話 安全対策
カタカタカタカタ…
ーーバタンッ
「竹本さ~ん、戻りました~」
「あ、お疲れ様です!ありがとうございます」
白石さんの呼び掛けに、キーボードを打つ手を止め、返事をする。
データが消えないよう保存し、書類には付箋を貼って簡単にメモを残しておく。
戻ってきた2人は、応接室へ入っていったようだ。
が…応接室は、今では女性である白石さんが寝泊まりしている、つまりは寝室のような部屋。
そこに、ことあるごとに成人男性が2人も出入りしていいのか。
新たな検討事項が頭を過りつつも、応接室へ向かうことにした。
ーーーーコンコンコンッ
「失礼しま「どうぞ」
相手の言葉に返事を重ねるのは、社会人としては許されないことだが、白石さんは学生さんだから仕方がない。
扉を開けると、2人は向かい合って座っていた。
…下座が空いていない。
正確に言うと、下座が白石さんの横だ。
ただ、この場合、黒川くんの横ではなく白石さんの横におっさんが座るなんて…
できるわけがない。
下座を諦め、黒川くんの横に座る。
「買い出しありがとうございました。お願いしていたもの、いただきますね」
机の上に置かれていた購入品の中から、依頼していた物に手を伸ばす。
「これ、何に使うんっすか?」
手に取ったバインダーを黒川くんが指差しながら聞いてきた。
「ああ…これはですね。腹部を守るのに使おうと思いまして」
「あ、服の下に仕込むんっすね」
「単純に言えばそうですね。ただ、このままだと割れた場合、怪我をしやすいので…」
バインダーをコピー用紙で包んでいく。
隙間なく、何枚も重なるように包み、最後に養生テープでぐるぐる巻きにする。
「できました!これを、下着とお腹の間に挟んだら完成です!」
バインダーで、(拳を)ばい~んだ!
とかは、言わないでおこう。
「なるほどっすね~。俺も作ろ」
黒川くんも同じように作り始めたようだ。
服をめくりお腹に当てて違和感がないか試してみる。
…うん。外に出るときだけにしよう。
腹当てを外すために、再度、服を持ち上げる。
ーガシッ
向かいの席から伸びた腕に、服を持ち上げていた手を掴まれた。
「竹本さん…、お腹…どうしたんですか」
暗い声で白石さんが聞いてきた。
ばい~んだ!(仮称)を作っていた黒川くんも手を止め、こちらを見てきた。
「あ、ほんとっすね。竹本さん、腹殴られてたっすもんね」
「え!?また殴られたんですか!!大丈夫ですか?」
2人の言葉に、自分の腹部に視線を向けると、全体的に青みがかっていた。
「あ…さっき書類を持ち上げた時に痛かったのは、これだったんですね」
業務をしていて、殴られたことをすっかり忘れていた。
「ん?竹本さん…?仕事…してたんですか?」
口元は笑っているが、目が怖い白石さんが聞いてくる。
これは…本当のことを言うとダメなやつだ。
「く…黒川くんの寝床を作るのに!いろいろ移動してたんですよ!」
「そうですか…」
なんとも言えない返事に、誤魔化せているのか不安になる。
こちらの不安をよそに、白石さんは立ち上がり荷物をゴソゴソとしている。
横を向き、黒川くんにアイコンタクトを取ってみる。が、視線を逸らされた。
バッ!と白石さんがこちらを向いたかと思いきや、服をめくられる。
バチンッ!!
音とともに、腹部に痛みが走る。
ジンジンとした痛みの中に、ひんやりとした冷たさが広がる。
視線を落としてみると、湿布が貼られていた。
「あ…ありが「竹本さん!怪我しているなら、ちゃんと言ってください!腕の時といい、今回といい!」
「すみません…」
「黒川さんも!関係ないみたいな顔で作ってましたけど、ちゃんと言ってくださいよ!2人が居ないと…困るんですから!!」
「…ぅっす」




