第十九話 業務分担
「なんで文房具店なんっすか?」
「その質問には、わたしの方からお答えしましょう!」
つい、鼻息荒く話し出してしまった。
「あ、結構です。私と黒川さんで行ってくるんで、竹本さんは黒川さんが寝られるスペースを作っててもらえますか?」
「あ…、はい…。」
話す機会を与えてもらえない。
戦力にカウントされていない新人社員の頃を思い出す。
気落ちしながらも、購入希望品を用紙に書き出し、白石さんに手渡した。
「では…僕の分はこれを買ってきてもらっていいでしょうか…」
「はい。わかりました。じゃ、黒川さん行きましょう」
「うっす…」
黒川くんがこちらに哀れみの目を向けている気がする。
ーーパタン
応接室の扉が閉まり、1人残された。
よし。これは…チャンスだ。
早々に、黒川くんの寝床を作れば、2人が帰ってくるまで業務に戻れる!
そう考えると、いてもたってもいられず、足早に応接室を後にしたーー
ーー「白石ちゃん、ちょっと聞いていいっすか?」
「なんですか?」
文房具店に向かっている途中、黒川さんが話しかけてきた。
「竹本さんに冷たくないっすか?出るとき落ち込んでましたよ」
「そんなことないですよ。ただ、あの人、事務用品とか仕事の話になると、急にスイッチ入るんですよ。プレゼンか!?ってぐらい延々と……。」
「変わった人なんっすね…」
「そう、変わってるんですよ!ただ、昨日も助けてもらって、頼りにはなるんですけどね」
そんな会話をしながら、2人は文房具店へ入っていった。
ーーーー2人を買い出しに行かせてしまった。
大丈夫だろうか…。
黒川くんは、頼りになりそうだが、パシリ…いや、パワハラ扱いされないだろうか…。
…考えても仕方ない。2人が行くと言ったんだ。
俺は、俺のやるべきことをしよう。
気持ちを切り替え、執務室のレイアウト変更を始める。
デスクに繋がっている配線類を整理し、デスクを一つずつ移動していく。
四畳ほどのスペースを確保し、その周囲をパーテーションで囲った。
備品として保管されている寝袋を倉庫から引っ張り出して、パーテーションで囲われたスペースへ広げる。
よし。こんなもんか。
案外早く黒川くん用のスペースが確保できた。
自席に戻……れない…。
しまった!!移動したデスクで自席までの通路を塞いでしまっていた。
はぁ…。
ため息をつきながら、またデスクの移動を始める。
後で元の状態に戻しやすいよう、デスクに印も付けておく。
ふう。こんなもんか。
やっとの思いで、自席に戻ることができた。
2人が帰ってくるまで、どれだけ業務が進められるだろうか…。
パソコンに向かい、業務を始める。もちろん、勤務時間の記録も忘れずに。
……そう。この時の俺は、今日こそ仕事が進むと本気で信じていた。




