第十五話 棚卸し
ガタ…コトッ…
大きな音ではない。
何かをどこかに置いているような音。
白石さんとアイコンタクトを取り、気配を殺して、音の方へ近寄ってみる。
ガタ…コトッ…コトッ…
「な…何してるんですか?」
どう見ても、品出しをしている人に、つい声をかけてしまった。
「あぁ…」
音の主は、チラッとこちらを見たが、すぐに商品の棚に視線を戻した。
「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」
覇気のない声で、予想外の返事が帰ってきた。
「探しているものとしては、缶詰となるのですが…。品出しされてるんですか?」
「缶詰は、2つとなりの筋になります」
話をしている間も、品出しをしている手は止まらない。
いまのところ、こちらに危害を加えるようなことはなさそうだ。
が、商品をきちんと並べてしまいたい、その気持ち…
わかるぞ…。
俺も1人なら今すぐにでも並べたい。が、すまない。
白石さんがそれを許してはくれないと、俺は踏んでいる。
「白石さん…。いきましょうか…」
「は…はい」
黙々と商品を陳列し続けている男性を横目に、缶詰売場へ移動する。
やはり、だいぶ荒らされているようだが、コンビニよりは種類も多く、商品もまだ残っている。
「持てるだけ持っていきましょうか。あと、僕カップ麺も持っていきますね」
会社に泊まる時用のセットを入れていたリュックを広げ、カップ麺を詰め込んでいく。
ガサッ!
近くで物音がした。
「あ、缶詰集まりました?」
白石さんが来たのだと思い、話しかけながら振り返ると…。
先ほど、品出しをしていた男性が立っていた。
「あの…」
男性が何かを持っている右手を差し出してきた。
身構えながらも返事をする。
「何ですか?」
「食料を探しているんですよね…。よかったらこれもどうぞ」
そう言って差し出してきたのは、パウチになっている食料だった。
「あ…ありがとうございます。でも、どうして?」
「そのシリーズ、美味しいんです。あと、賞味期限が近いので、このままだと廃棄になるんです。なので、せっかくならもらってもらえればと思って…」
受け取ったパウチの賞味期限を確認してみる。
たしかに、賞味期限まで1ヶ月を切っている。
「そうでしたか…それなら、お言葉に甘えていただきます」
「竹本さん〜?」
少し離れたところから、白石さんが呼ぶ声がした。
「ここです」
声のする方へ向き、手をあげる。
「あ!いたいた!食料集まりました?って、さっきの店員さんじゃないですか!」
「集まりましたよ。あと、この人がパウチの食料も持ってきてくれたので、一旦、これでお会計できればなって思ってます」
「あ…やっぱり支払うんですか?」
なんとも言えない表情で白石さんがこちらを見てくる。
ただ、支払いに関しては譲れない。
男性からもらった廃棄分はいいとして、他のものは、れっきとした商品だ。
それに、ここ数年、仕事ばかりで働いた給料を使うこともなかった俺は、貯金だけはある。
いまこそ、その貯金を使うときが来たのだ!
「当たり前です。じゃ、白石さんが集めた分とあわせて払ってきますね」
白石さんが集めてきた食料も受け取り、セルフレジへ向かう。
ーーピッ、ピッ、ピッ…
レジでバーコードをスキャンしていたとき、スーパーの外、少し離れた場所を歩いている人影が見えた。
慌てて身を屈め、会計を終わらせる。
商品棚などに身を隠しながら、白石さんがいる場所へ向かう。
「白石さん…いま、外に人がいるようで、一旦、隠れた方がよさそうです」
「わかりました。っていっても、隠れる場所って…」
辺りを見回すが、大の大人が身を隠せる場所がない。
すると、近くにいた男性店員が声をかけてきた。




