第十一話 引継資料
「えっ…?それって、どういう意味ですか…?」
白石さんが不安げにこちらを見てくる。
あぁ、ここで蹴落とし合いでもあるかと思われてしまったのか。
「あ、いえ。純粋に割合の話で、二人いたらどっちか片方しか残れない可能性が高いんだと思いまして」
「あ、そうですよね!竹本さんが何かすることないですよね!すみません。
でも、ほんとに、厳しい内容ですよね」
応接室に沈黙が流れる…。
「とりあえず、今はこれ食べちゃいましょうか!」
カップ麺をすすりながら今後のことを考える。
時間制限があるなかで、さらに人口を減らすとなると…遅かれ早かれ殺しあいが始まるのか…。
…となると、さらに必要な業務が増えるな。
自分に何かあったとき用の、引き継ぎ資料も早々に作成を始めないとダメだな。
そうだな…。
誰も出社していないところを考えると、上司の丸山さんは、結界の外にいる可能性が高い。
丸山さんに引き継いでもらえるよう、内容を整理しておくのが、現時点の最適解だ。
「あの…これからどうしますか…?」
白石さんが訪ねてきた。
「そうですね…。しばらくは、食料もライフラインもあるここを拠点にしていいかと考えてますけど、どうですか?」
「そうですね…。ただ、外の様子も少し知りたいです」
「あ、それなら、あっちの通路の先に外が見える窓があるので、とりあえずそこから見れればと思います」
ーー2人とも、食事を終え、窓から外の様子を見てみることにした。
「竹本さん…見てくださいあそこ」
白石さんが少し離れた歩道を指差した。
そこには、先ほどのコンビニで白石さんから食料を奪おうとしていた男性がいた。
正確には、男性が倒れたまま動かなくなっているようだった。
「あれ…さっき、わたしの食料を奪おうとしていた人ですよね…」
「そんな気がします…服装が一緒ですもんで…」
「倒れて動いてないように見えるんですけど…」
「僕たちが知る限りでは、最初の脱落者ということでしょうかね…」
人の死体…かもしれないものを見るのは初めてだったが、物理的に距離も離れているからか、あまり現実味がなかった。
横目で白石さんの様子を見てみるが、同じようだった。
窓から見える範囲では、人が1人も歩いていない異様な光景だった。
もちろん、男性に危害を加えたと思われる人物も見当たらなかった。
ということは、スマホへ通知が来てすぐに行動を起こした人がいる可能性が高い。
「僕としては、できることなら、期日まではここに留まるのが安全かと思うのですが」
「わたしもそう思います。とりあえず、食料は1週間分ぐらいはありますし、このフロアからでないようにしましょう。
あと…本当にありがとうございます。あのまま外にいたら、わたしもあの男性みたいになっていたかもしれないです」
そういいながら、少し肩が震えているように見えた。
そうだ。
いくらしっかりしているといえ、白石さんはまだ、大学生。この状況が怖くて当たり前だ。
「いえいえ。僕にできることをしたまでです」
そう言いながら、微笑んでみた。
おっさんの笑顔なんて気持ち悪いと思われてもいい。白石さんの不安や恐怖が少しでも薄れてくれれば…。
「竹本さん…」
白石さんの頬が、少し赤く見えた。




