第十話 追加業務
「手当してもらった腕なんですけど、固定している木材を、この定規に替えてもらってもいいですか?」
先ほどの店で買った鉄製の定規を差し出した。
「そんなことですか!急に真剣な雰囲気になったのでびっくりしました」
そういいながら、包帯を巻き直してくれる。
「助かります。木材だとどうしても、机で作業するときに邪魔になると思いまして…。
その点、この定規は、薄くて頑丈なので!」
「竹本さん…やっぱり、仕事しようとしてません?」
じとっとした目でこちらを見つつも、手当を終わらせてくれた。
「ほんと、手際がいいですよね!ありがとうございます。
とりあえず、お昼にしませんか?」
「話そらしましたね?まぁ、お腹も空きましたし、ご飯にしましょうか」
給湯室へ向かい、食事の準備をする。
さて、これをどこで食べるか…。
普段なら自席で食べるが、白石さんも居ることだし、応接室で食べる流れか…。
応接室…。
あまり、食事をするべき場所ではないが、異常事態だから、割り切るしかないか。
そうだ。社内打ち上げの時に、応接室も使っていた前例はある。
食べ物をこぼさなければ、大丈夫だ。
俺はカップ麺、白石さんは缶詰とパックご飯の準備ができ、応接室へ移動する。
食事をとりながら、スマホをコンビニで購入しておいた、モバイルバッテリーにつなぐ。
「外へ出られないって言ってたの、どう出られないんですか?」
「あぁ、竹本さんずっと会社って言ってましたもんね。
わたしも一度見てきたんですけど、透明の壁?みたいなものがあって、外は見えるんですけど、どうやっても通れなくて…」
「なるほど…。大きいガラスみたいな感じですかね?それなのにライフラインはいきているの不思議ですね…」
「あ、たしか、はじめはネットが繋がってたんですよ。でも、今朝から突然つながらなくなって…」
「じゃ、今後ライフラインも途絶える可能性もあるんですね…」
なんということだ。
電気の供給が途絶えると、パソコンが使えなくなる…。
ノートパソコンを使用したとしても、フルで使えば10時間も持たないだろう。
俺に残された時間は…
どれだけあるのだろうか…。
「そんなに悲観しても仕方ないですよ!こんな状況がずっと続くわけじゃないと思いますし。食料と寝床があれば、そのうち助けが来ますよね!」
「そ…そうですね…」
その助けが来るまでに、オフライン環境下でできる仕事は全て片付けられるのだろうか。
今すぐにでも取りかかりたい…。
ーーーー♪♪
俺と白石さんのスマホが同時に鳴り出した。
画面を見る。
<残り98日以内に人口を半分にしてください。期日までに到達しなければ、ドーム内の人類は消滅します。>
意味のわからない文章が並んでいた。
顔を上げ、白石さんを見ると、同じようにこちらを見ていた。
「竹本さん…。これって、どういうことなんでしょう…」
「とりあえず、外に出られなくしているものは“ドーム”って言うらしいですね…」
「いや、そこじゃなくて!」
「あ、そうですね。これ…サバイバルってことですかね…」
ただでさえ、仕事を進める時間をどう確保するかが問題だったのに、さらに追加のノルマが来た。
いや、タイムリミットが可視化されたんだ。
スケジュールを組んで対応にあたれば、きっと活路が見えてくるはずだ!
「この…人口を半分って、ここでいうと、僕か白石さんどちらかになるってことですかね…」




