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私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第二章 『それぞれの道』
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14『探しているもの』


「どうしてあいつが、武士のところに……」


一瞬見えたあの茶髪は、すぐに黒髪の波に飲まれてしまい見えなくなる。

あれは間違いなく、ナオトの相棒のカンジだった。どうしてあんな所に、彼がいたのだろうか。今日は罰則が嫌で修練をサボっていたのだと思っていたばかりに、その衝撃は大きい。それに、騎士側の陣ではなく、敵である武士側の陣にいた。

──どうして。

そんな言葉しか出てこなくなってしまった直人の後方から、怒声が飛んでくる。


「おい!ナオト!ぼーっとすんじゃねえぞ!剣はしっかり握っとけっ」


「はいっ。すんません!」


いや、勘違いかもしれない。あれはカンジによく似た人物で、本当のカンジは今、どこかで戦っているのだ。でないと、そうでなければ、そうであらなければ、彼は……。


「くっそ……」


こうなってしまっては、ただの傍観者ではいられない。あれがカンジでなかったという証拠を、ナオト自身が敵陣に赴いて確かめなければなるまい。


「よしっ」


初めてまともに握った真剣の重みを感じながら柄を握り締め、覚悟を決める。

もし彼が本当に───なら、その理由を問いたださねばなるまい。そして出来るなら、彼を連れ戻す。

唯一無二のこの世界での親友を、ここで失いたくはなかった。






「はあ、はあ……」


そろそろ限界だ。剣を振り続けた手は感覚がなくなってきているし、走り続けた足ももう棒のように動かない。

そんな中でも、直人は戦い続ける。

前方上空から飛んできた弓矢を弾き、腹部に向かってくる刀も受け流す。そしてすぐさま、聞こえてきた後方からのおそらく刀のものであろう風切り音を、振り向きもせずに自らの剣を振って止める。その隙を見てか、何人かの刀が、直人の体を狙う。もうこれは駄目だ、と直人は思いかけたが、間も無く救援が駆けつける。直人を狙っていた奴らはその救援に斬り付けられ、血を噴き出しながらその場に倒れる。


「大丈夫か!?」


駆けつけた救援は、どうやら直人の所属する班の隊長だったらしい。その偉丈夫の服は所々破け、まだ赤い血もいくばくかついている。


「すみません、迷惑かけました。すぐ、立て直します」


「いや、お前はしばらく休んどけ。その傷も、すぐ直してもらえるはずだ。救護所はあっちだ。無理すんじゃないぞ」


「了解です」


隊長の指差す方向を目視し、敬礼する。彼は軽く頷くと、すぐ戦場に戻って行ってしまった。

戦場を見るも、未だカンジの姿は見当たらない。もしかしたら、もう既に救護所に運ばれているのかもしれないと思い直し、直人は胸の切り傷の痛みを感じながら、戦場後方へ走って行く。


「まあ、大変!早くこちらへ!」


救護所に着くや否や患者を見ていた女性の目にとまり、直人は救護所の奥の方へ連れていかれる。


「よかった、まだ浅いわ。このくらいなら、魔法ですぐ治りますよ。少しお待ち下さいね」


白衣で身を包んだ金髪の女性は、直人の胸の傷口に手を当て、術式を唱えだす。傷口が光に包まれたかと思うと、その光は瞬く間に消えてしまい、彼女の手も直人の胸から離れる。


「はい。治りましたよ」


「ありがとうございます」


傷の痛みが消えたので、直人はすぐに救護所を出ようとするが、手首を掴まれて足を止める。


「お待ち下さい、騎士様。少し、休んでいって下さいね。この救護所は、体を休ませる効果があるんですよ。少しだけでも、いいですから」


「あ……。分かり、ました」


確かにこの場所に来てから、体の中心から温まるような感じがする。

これもきっと魔法だろう。まだこの世界に来てから3ヶ月も立っていないはずだが、魔法の感覚にも慣れてきた。未だに直人自身は魔法を使えないが、この世界の魔法の知識は増えてきている。

例えば、この真剣。これはこの戦いのために急造されたもので、耐久度は低いが本物の剣とはなんら変わりない。

それと、この服。この服にはある種の魔法が仕掛けられているらしく、布の重みはほぼ無いし、暑くならないので汗もかかない。

そして疑問なのが、どうしてこの世界はこんなに発展していないのか、と言うことだ。魔法で全て終わらせることが出来るのならば、もう少し街の景色も新しいものになっていてもおかしくないのに。

いや、魔法で全て出来るからこそ、発展しないままなのかもしれない。


「よし、行くか」


少し休憩したし、カンジも探したがここにはいない。ならば、ここに長居する必要はもうないだろう。

座っていた椅子から立ち上がり、腰に下げた剣の柄に手を当てる。

──あと、もう一踏ん張り。

もう少し頑張って探してもカンジがいなかったら、もう戦うのはやめよう。もしかしたら、明日になってひょっこり顔を出して来るかもしれないし。


「ふっ……」


気合いを入れ直し、ブーツの踵を鳴らしながら直人は走る。

最前線で戦っている仲間の元に辿り着くと、勢いよく剣を剣帯から抜き、向かって来る刀を次々に弾く。

相手に致命傷を与えることは直人には出来ないが、怪我をさせて後ろに下がらせるぐらいの事は出来る。人の命を奪う事は恐ろしい事だ。しかも、この戦いにおいてその必要はほとんどないというのに。


──明日香を殺してしまった自分には、これ以上人を殺すことなど許されない。


彼女を取り戻すことがもう出来ないのならば、もう自分はここで死んでしまってもいいのかもしれない、と思っている矢先、直人の横腹に激痛が走る。

見ればそこには、刀が貫いていて。まるで自分のものとは思えないほどの鮮血が、真新しい制服を汚しているのだった。

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