番外編Ⅱ 3 question
「ああ、ごめんなさい。つい、知ってると思っちゃってたわ。いいわ、説明しましょう。きっと、終わる頃には帰り着いているわね」
寮への帰路を歩きながら、マヌルの話に耳を傾ける。
「試験は、その名の通り、その人の実力を測るためのものなの。その測るものは、魔法の能力。今まで習った魔法をどれだけ活かせているかが重要なの。試験には、ひとつの集団ごとにそれぞれ別の課題が出されるわ。でも、一番最後の課題は同じなの。とにかく、授業の内容と集団力をどれだけ活かせているかが試験の鍵!いい?」
「ええ、分かったわ。ありがとう」
「礼なんていらないわ。私が忘れていただけですもの。あら、丁度良かった。着いたわ。ここが、この魔法学校の寮。今日からここが、あなたの第2の家よ」
魔法学校には、寮が存在する。
寮はこの学校に通う者全員が入らなければならず、たとえ貴族であろうとそれを断ることを許されない。
だから、下級貴族であるマヌルも同じように寮に入るはずだ。
出来れば、マヌルと同じ部屋になりたいが……。
「あなたは502、こっちのあなたは202ね」
そう言って渡されたのは、部屋の鍵だった。
マヌルの鍵には502、私の鍵には202と書かれた札が付いている。
「あら、別の部屋になってしまったわね。でも、位置は同じよ。だからと言って何と言うわけでもないのだけれど」
「残念だけれど、仕方ないね。私の同室の人は誰だろう?」
「行ってみましょう」
階段でマヌルと別れ、私は自分の部屋へ向かった。
鍵穴に鍵を入れて回すが、解錠音はならない。もしや、もう中に同室者がいるのか。
そっと扉を開けると、そこには見覚えのある人物が座っていた。
「イア……?」
「あ、同室は、蘭さん、だったん、ですね……」
イアは目を逸らし小さな声で呟く。
怯えたような目だ。どうしてあんな風に怯えられてしまうのか。私は特に何をしたつもりはないのに。
「そうよ。よろしくね」
「は、はい……」
「人は、必ず胸の内にオドを秘めています。そのオドを放出することで私達人間は魔法を使う事が出来るようになるのです」
講師の話を聞きながら、板書を写す。
正直、この様な授業は嫌いだ。体を動かさないと、どれだけ内容が面白かろうと眠くなってしまう。
そんな中でも、ユーピテルは真面目に背筋を伸ばして授業を受けている。
そう言えば、昨日会ったマヌルの友人達は、私が気付いていなかっただけで、同じ学級であった。
挨拶を交わしはしたものの、まだあまり喋れていないので機会を見たい。
ユーピテルと同様に同じクラスだったイアとも、同室だったのにも関わらず、あまり喋れていない。
あの時挨拶した後、彼女は本を読み始めてしまい、全然話せなかったのだ。
どうにか話せるようになりたいが、壁を作られているように感じてしまってなかなか踏み出せない。
「どうしようかな……」
窓から見える修練場を眺めながら、打開策を考えるも、何も思いつかない。
結局何も思いつかないまま、イアとも喋れず、1週間が過ぎてしまった。
「試験まであと4ヶ月よ!蘭は勉強、ちゃんとしてる?」
「うん。まあね。でも、ちょっとわからない事があって……」
私が不安げに話し出すも、マヌルはにこにこと笑ったままだ。
そして話し終えると、疑問を解消することもなく、元気よく誰もいない教室内で叫んだ。
「それは大丈夫!明日は、遠足よっ。元気出していきましょう!」
私の頭ははてなでいっぱいだったのだが、楽しそうにはしゃいでいるマヌルにもう一度聞く事は出来なかった。




