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私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第二章 『それぞれの道』
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5『星の魔女』

 公園に着くと、人が公園の真ん中で大の字になって倒れていた。


「……っ!?」


 そろりそろりと近づき、その人の様子を伺う。目は閉じられていて、特に目立つ傷はない。

 そして、その人の外見に、ラリアンは心当たりがあった。

 頰を軽く叩いてからなかなか起きないのを確認し、その人を担ぎ上げる。

 軽いその体をラリアンが急いで近くの家の中に運ぶと、精霊からの通信が入った。

 精霊との通信装置となっている首飾りを持ち上げ、囁く。


「アイか。見つかったか?」


「みゃーっ!」


「そうか。そのままこちらに戻ってこい。いいか、引き離しすぎるなよ。そして、捕まりもするな」


 どうやら、猫姿のアイは対象に追いかけ回されているようだ。

 その姿は見ものだろうが流石にかわいそうなので、到着したらすぐに逃がしてやることとしよう。


「そう言えば、大の猫好きだったな、あいつ」


 《生物の魔女》の満面の笑みを想像しつつ、再び通信装置を握る。


「みんな、任務完了だ。戻ってこい。……あと、アミンは私の所まで来てくれ」


 通信装置を放し、すやすやと寝息を立てている旧友に目を移す。

 幸い、入った家にはベッドが置いてあり、そこに寝かせてある。


「なぁ」


 ふと、猫の鳴き声が耳元で聞こえた。

 同時に感じた肩の重みから察し、肩に乗った猫の頭をなでる。


「アミン、はやいな」


「なん」


「早速、お願い聞いてくれるか?」


「なん」


 その返事に安心して頷いて、寝ている人物を指差す。


「睡眠好きのあやつの意識に介入して無理やり叩き起こせ。どうせ、アマンも一緒にいるんだろう?」


「なぁん」


 猫が肩から飛び降りると、ラリアンの腹から別の猫が飛び出る。

 猫2匹はベッドの上に乗っかると、旧友の頭の上で消えた。


 アミンは聖の精霊で、もう1匹のアマンは邪の精霊だ。

 聖魔法は回復系統、邪魔法は相手の意識を撹乱することができる。

 片方だけでは意識に介入することなど出来ないのだが、2つ合わさると出来るようになる。

 難しい技術ではあるが、高位の魔法を使うことができる精霊だからこそなし得る芸当だ。

 そんなことを考えていると、介入は成功したようだった。


「きゃあっ!」


「起きたか」


「……ん?」


 ラリアンは戻ってきた猫たちの頭を撫でてやり、目覚めた旧友に視線を向け、旧友が完全に覚醒するのを待つ。


「い……、ラリアン?」


「ああ、そうだ。お前は、《星の魔女》アテラノだな?」


「……ええ。不思議ね。ついさっき、夢であなたを見たのよ。あなたは少し、困っているみたいだった」


「じゃあ、それは予知夢だな。今まさに私は困っている。アテラノ、お前の力を貸してくれ」


「いいわ。……ところで、ここはどこなの?」






「なるほど。ここはあの世界なのね」


「久しぶりに来るんじゃないか?」


「そうねえ」


 アテラノは、首を軽く傾けて指を折り始める。


「まあ、かるーく40年ぐらい?」


「そうか。そんなものか」


「ええ。そんなものよ。でも、その間ずーっと寝てたから頭が少し痛いの。寝すぎちゃったみたい」


「じゃあ、早く目を覚ませ。お前にはしてもらいことがあるんだからな」


「もう」


 頭が痛むようには見えない彼女は、目を瞑りつつ唇を尖らせ眉間に皺を寄せる。元がいい彼女がやると誰もが可愛いと評価するであろう表情だ。

 その反応に軽く笑いつつ、話を戻す。


「頼まれてくれるか?」


「いいわよ。ほら、手繋いで」


「すまない」


 彼女が差し出した手を受け取り、握り返す。

 何故手を握るのか。その原理は、始めにトランペットを作った時と同じだ。

 その人の持つ、物の情報を手を介して受け取ることで、創世魔法でそれを創り出すことが出来る。


 そして彼女は、《星の魔女》である。

 世界の始まり、彼女は星空を作り上げた。それだけでなく、他の魔女が生み出したものを知識としてまとめ上げ、図書館を作った。その知識は全て彼女の中で記憶されており、彼女は知識の魔女と言う別名もあるくらい、この世界に関してはなんでも知っている。

 そんな彼女がこの状況でラリアンの元へ来たのは、まさに奇跡と言えた。


「ちょっと、ラリアン?集中してないと送っても作れないじゃないの」


「あっ、ああ。すまん」


 意識を集中し、送られてきた情報をそのままオドにくっつけ、自動生成させる。


「どのくらい作りたいの?出来れば沢山……」


「分かったわ。じゃあ、別の種類の情報を送って行くから、どんどん作ってしまいましょう」


「すまないな。助かるよ」


「ほら、そんなのはいいから。集中して」


「……」


「……」


 それから、1時間程経った。


「ぷはっ。もう勘弁だ!終わりにしてくれ!」


 ラリアンは、がっちり握られたその手を無理やり引き剥がそうとするが、どこにそんな力が、と思うほどの力が彼女から伝わってくるため、なかなかそれはままならない。


「えー。あとちょっとなのよ?もうちょっとなんだから」


「もう無理だ!オドが尽きる!それに、もう充分じゃないか!?こんなに沢山!」


 あの後、部屋の中で作っていたのはいいものの、溢れるほど出来てしまったので家を出ざるを得なくなった。

 今は広い広場が埋まりかけている。


「じゃあ、後1つだけ!」


「くぅ……」


 オドが搾り取られる感覚を覚えながら、歪む視界に広がる楽器たちをラリアンは見つめていた。

 その楽器たちの中には、同じものが数多くある。

 アテラノに言われて作ったのだが、こんな感覚を味わうくらいなら後からにしておけば良かったと反省する。


「はい!出来た!」


「うっ……!」


 一気に力が抜けていく体を、地面に倒す。

 そんな時、どこからか甲高い声が聞こえてきた。


「待ってーっ!猫ちゃーん!」


 歪む大量の楽器の向こうに、長い金髪を上でまとめた見覚えのある人影がこちらに向かって走ってきていた。


「あれ? ラノじゃない。久しぶりねっ!あ、猫ちゃん」


 自分の精霊が体の中に隠れた感覚を感じながら、ラリアンはオドの過剰消費で気を失ってしまったのだった。

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