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私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第二章 『それぞれの道』
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2『死んだって』

「もっと早く!無駄な動きを無くすんだっ!」


 額に汗を流しながら、直人はひたすら剣を振る。

 団長の見かけによらず、流麗な動きをするこの流派は、素早さを重視する。

 剣も割と軽くて初心者の直人にはやり易かったのだが、何にしろ素振りの練習時間が長い。


 ──半日もずっと剣を振ってれば、普通息も上がるはずなんだけどなあ。

 しかし、周りでバテている風に見えるのは直人しかいない。

 故に、直人だけ休憩するなんて言えない状況なのだ。


「ふっ」


 気合を入れる息が、唇から漏れる。

 でも、これで強くなれるのならそれでもいいかも知れない。

 何度目かも知れぬ素振りで汗を散らして、直人はただ一つのことだけを思っていた。

 ──大切な人1人守れなかった自分が、果たして強くなれるのだろうか。






「いやあ、新人のくせによくやったな。なかなかここまでやる奴はいないぞ」


 謎のドリンクをちびちびと飲みながら、つい先程知り合った少し年上っぽい男性と話す。


「ありがとうございます……」


「まあでもこれからだな!こっそり見てたんだが、お前の剣筋はまだまだ甘い!でもその分、伸び代があるってことだ!頑張れよ!」


 と言って彼は立ち上がってその場を立ち去ると、沢山の食べ物が載ったテーブルに近づいていった。

 その姿を直人は、チキンを頬張りながら眺める。

 今、直人の歓迎会がこのギルドで開かれていた。


 この街では割と小規模な方なこのギルドは、毎回新人が来るたびに歓迎会を行なっているらしい。

 そして、直人の歓迎会なので、直人に話しかけてくる人も多い。

 ──ほらみろ。またやって来た。


「おう、ニイちゃん。確かお前、ナオトとかって名前だったな。名前とその黒髪からして、まさか武士の野郎の出身じゃないよな?」


 これも毎度聞かれる質問だ。


「そんな! 違いますよ! 俺は、転移者なんです」


 なるべくこの街の人とは仲良くなりたいので、地雷になるような発言はしないように気を付けている。

 それに、この世界では転移・転生という概念は常識として認識されているので、正直に出身を話す。

 この方法で疑った人は今のところ誰もいない。


「そうなのかっ。やっぱそうだよなあ」


 この通り。誰も疑わない。


「ニイちゃんは、どうしてこの街に来たんだ?騎士になりたいからって、当たり前の事は言うなよ」


「そうですねえ。強くなりたいから、ですかね」


 適当に思いついた言葉を口にすると、何か気に食わなかったのか、思いっきり背中を叩かれた。


「バッカ!オメー、それも当たり前のことだよ!……まあ、いいさ。騎士になりてえのも、強くなりてえのも、その理由は自分の中にしまっておきゃあいい。大事なのはその為に努力できるかさ。まあ、せいぜい頑張れよ」


 今度は軽く背中を叩くと、その男性もまた去って行った。

 直人はまた独りになり、謎の味がする飲み物をまたちびちびと飲む。


 皆、あんな風にサバサバした性格をしているが、優しいし、明るい。

 それには好感を得られるのだが、どうにも仲良くなれそうな人は見つからない。

 多分それは、剣に生涯を捧げているかいないかの、彼らと直人の決定的な違いのためだ。


「俺、どうして生きてるんだろ」


 ふと呟いた言葉が、自然と胸に刺さった。

 これまで明日香のそばにいることを生きがいにして来たせいだ。


 いっそのこと、また死んでしまおうか。

 いやでも、今度死んで天国に行けるかは定かではない。

 また明日香と同じ場所に転生しようものなら、身を弁えろ、と地獄に落ちてしまうに違いない。

 しかし、このまま生を貪っているのも、死んでしまった明日香のためにはならない。


「分かるぜ。その気持ち。テメエはなんのために生きているんだって、疑問に思うことは、俺も多々さ」


「……っ!」


 びっくりした。

 考え事をしていたせいで、いつの間にか人が隣に座っていたことに気がつかなかった。


「俺はカンジ。仲良くしようぜ」


 そう差し出された手に、直人は戸惑う。

 それでもカンジは手を差し出したままだったので、握って見ることにした。


「よろしくな」


 あまりの戸惑いに直人は一言も喋れなかったが、成り行きに任せると一人の友人が出来た。






「騎士の街は、それぞれ流派の違うギルドが集まっただけの街だ。だから基本、飾った店なんかはねえし、必要ない。でも、うめえ飯屋や、かっけえ武具屋はある。ここは俺の行きつけだから覚えとけよ」


 そう言われて訪れたのは、剣や防具が乱雑に並べられた暗い店だった。

 しかし、カンジの言うかっけえ、はどこにも見つからない。

 まあ、店内が暗すぎる、と言うのもあるだろうが。


「ま、オメエは初心者だし、まだ筋肉もまだまだだから、これとこれでいいよな。買っとくぜ」


 彼はすばやく商品を手に取ると、見張っていたレジ員の前に置いた。


「でも、俺金持ってない……」


「いいぜ、別に。でもその代わり、出世払いしてくれよな。俺ァお前が強くなるって信じてっからよ」


 お礼を言いつつ、買ってもらった防具と剣を受け取る。


「おお。意外と様になってるじゃんか。いいだろ?俺の選んだやつぁ」


 自分の体を見回しながら、感嘆詞を漏らす。

 我ながらカッコイイ。

 あの店内では全然分からなかったのだが、ギルド内の明るい広場ではカッコよさがよく分かる。


「剣持ってみろや」


「あ、はい」


 腰の剣帯に刺さっていた鞘から刀身を抜く。


「どうだ。重くないか?」


「あ、軽いです。練習用のよりも」


 剣を構えながら、あまりの剣の軽さに驚く。


「俺らの流派は素早さ重視だからな。剣が軽いってのは超重要なんだ。特別な金属でできてっから、けっこー値段張るんだぜ」


「えっ。ごめんなさい……」


「ぷはははっ。お前は本当に面白いやつだな。そう固くなんなって。相棒だろ?」


 いつ相棒になったのかは定かではないが、この人と話が合うようになるにはしばらく時間を要しそうだった。 

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