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私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第二章 『それぞれの道』
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1『騎士の街』

「どこだ、ここは?」


 暗闇が晴れると、直人は見たこともない場所にいた。

 また日本に来たのかと思ったが、今度ははっきりと断言できるほど日本とは程遠い場所だ。

 煉瓦造りの建物に、耳をすませば金属同士がぶつかり合う音が聞こえる。


 足下を見ると、ここも煉瓦造りの道だ。周りを見渡すと、鎧を着た人達がコツコツと足音を鳴らして歩いている。

 ──まるで、中世ヨーロッパだ。

 直人は恐る恐る一歩踏み出し、自らもコツ、と足音を鳴らす。

 人々はそんな直人を避けてすれ違っていく。


「何がどうなってるんだ……?」






「ここはどこですか?」


 少し歩いたところにあった露店で店員にそう聞くと、幸い言葉が通じないということは起こらず、強面のおじさんは優しく教えてくれた。


「兄ちゃん、ここがどこか知らないでここに来たのか?騎士の街だよ。最高の騎士を目指す奴らが集まる街だ。兄ちゃんもそんな格好してるんだったら、騎士を目指してるんじゃないのか?」


「あ、いや……」


「まあ取り敢えず、この街で暮らしたいんだったら、ギルドに行くんだな。そこを曲がった先にあるぜ」


 おじさんは腕を伸ばして道を示す。

 直人はおじさんに礼を言い、取り敢えずギルドを目指すことにした。

 ギルドに行けば誰かが何かを教えてくれるかもしれない。

 ──もう何が何だかも掴めていないので、直人自身も何が知りたいのかは分かっていないが。






「騎士の方ですね。ギルド登録ですか?クエスト受注ですか?」


「えっと……」


 これは、何を答えればいいんだ?

 何となく来て何となく辿り着くと、すぐさま受付嬢に話しかけられてしまった。

 なので、そう聞かれても何と答えるのが正解なのか……。


「見たことない顔ですね。まず、ギルド登録をしましょう。この紙に手を当てて下さい」


 彼女はさっと紙を取り出すと、直人に手を置くように促した。

 言われるがままその紙に手を置き、時間の経過を待つ。



「では、マスターに会いましょう。2階にいらっしゃいますから」


「あ、はい」


 ──ん? 今なんて言ってた?

 ぼーっと言われるがままに行動していると、いつの間にか何かの手続きが終わっていた。

 取り敢えず、2階に上がればいいのか。


 近くに階段を見つけて上り終えると、2階には扉がいくつかあったがひとつだけ色の違う扉があった。

 多分、あれが”マスターの部屋”だろう。

 扉をノックし、中から声が聞こえるのを待つ。


「入れ」


 空気が低く振動し、声が直人の耳にビリビリと響く。

 一瞬で萎縮しかけてしまったが、勇気を出して扉を開く。


「し、失礼しますっ」


 中には、先程の強面のおじさん以上に強面な男性が、机越しに堂々と座っていた。

 彼は直人の姿を視認してすぐにまた、あの声を響かせる。


「お前、体重は何キロだ。身長は?視力はいくつあるんだ」


「は、はいっ。た、体重は、70キロ、身長は176センチ、視力は左右どっちも2,0です!」


「よし、まあ、いいだろう。お前、どこから来たんだ?」


「えっと。それは……」


 どこからきたと聞かれて、出身地を伝えるべきか、今までいた所を言うべきなのか。

 迷っていると、強面な男性の方が先に切り出してしまった。


「言えないなら別にいい。大事なのは、やる気があるかどうかだ。……お前、騎士になりたいか」


「は、はいっ」


 その場のノリで適当に答えてしまったが、選択ミスはしていなかったようで、強面な男性は満足したように頷いた。


「武士の奴らに勝ちたいかー!?」


「おー!って、……んん?」


 ──武士ってなんだ?






 あの後直人は、急に聞き覚えのある言葉が耳に飛び込んできたので、受け入れられずに首を傾げてしまった。

 すると、強面な男性は「そんなことも知らないのか!」と、唾がかかりそうな程の勢いで武士のことを軽蔑しだしたのだ。

 直人があの言葉から適切でない言葉を除いてまとめた結果、「武士の街というのが隣にあって、長年騎士と武士は競い合っていること」しか残らなかった。

 思わず耳を塞ぎたくなるような内容を聴き切れたのはすごい、と自分を褒めたいと思うぐらいだ。


 さて、今直人が何をしているのかというと。

 ──ひたすら剣を振っていた。

 「騎士たるもの、基礎練習が大事だ!」ということらしい。


 流れで騎士になることになってしまったが、別にそれも悪くない。

 ──明日香はもうこの世界にはいない訳だし……。

 騎士となってどこかの戦場で息絶えることができたのなら、それが今の直人の本望なのかもしれない。

 戦場がどこにあるのかは知らないけれど。

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