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私、人生迷ったら世界最強魔導士になりました。  作者: 工藤 零
第二章 『それぞれの道』
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幕間『×××××××』

「夏目君、藤谷君、おめでとう!」


 先輩が私達の肩に手を置きながら、目を輝かせる。

 私は涙を浮かべ、礼を言う。


「ようこそ、──高校へ」


 生徒会長である事がひどく似合う彼は、自分の高校をバックに両手を広げた。

 私と直人は顔を合わせて笑い合ってから、ハイタッチをして抱き合った。

 一年先に入学していた如月先輩と飛鳥先輩は、並んで私達を幸せそうに見つめていた。






「2人とも!危ないっ!」


 後ろから如月先輩の珍しく焦った声が飛んできた。

 その内容を理解する事ができないまま、私達は後ろから突き飛ばされた。


「えっ」


 そのまま倒れこむかと思いきや、ふんわりと浮かんだような感覚がすると、向かい側の歩行路に私と直人は倒れ込んだ。

 すぐさま上半身を起こし、何が起こったのか確認するため、後ろを振り向く。


「先輩!」


 何が起こったのか、理解できなかった。

 先輩が手を前に突き出し、安心したような顔で道路の上を飛んでいる。

 その横には、物凄いスピードで迫るトラックが。


 ──やけにスローモーションに感じた。

 しかし、私の体が素早く動くことはなく、あっという間に先輩はトラックに吹き飛ばされた。

 やっと体が思うように動くようになり、肘を思い切り伸ばして半身引きずりながら、吹き飛ばされた先輩の元へ向かう。

 息を荒げながら、先輩の元へたどり着くと、直人が駆け寄ってきた。

 私は先輩の体を持ち上げ、呼びかける。


「先輩、如月先輩……!」


 しかしその声に彼は応答しない。

 何度も何度も先輩の体を揺らし、呼びかけるが、彼が目覚める様子は微塵もない。

 ──どうすれば……!


「明日香、救急車呼んだから、先輩を俺にっ」


 先輩を抱えたまま涙を流そうとすると、直人が早口でまくし立てる。


「え?」


「先輩の体を歩道に移動するから、俺に渡して!明日香じゃ持てないだろ?」


 私は涙ながらに直人を見つめて、一息吸う。


「……嫌だ」


 直人は声も出さずに目を見張る。

 幸い、意味は通じていたようだが、直人は異を唱えた。


「ダメだ。移動しないと、また轢かれるかも……」


「なら、私が運ぶ」


 私は先輩の体をガッチリと抱えて、何とか膝立ちをする。

 そのままの状態で、先輩の半身を引きずりながら歩道へ向かうが、どうにも上手く動けない。

 直人は何も言わなくなったまま私の行動を見守っていたが、やがてくそっと言う声と共に先輩の半身を持ち出した。


「立って、明日香。じゃないと効率が悪い」


「……ありがとう」


 ここで断ってしまっては、また直人の心を傷つけてしまうだけだ。

 彼の優しさと気遣いを受け止め、立ち上がって先輩を運ぶ。

 膝が思うように動いてくれなかったが、やっとの思いで先輩を歩道に運び込むことが出来た。


 ──しばらく待っていると、遠くから救急車の音が聞こえた。






 救急車の中で、私達は黙って先輩の様子をじっと見ていた。

 そして驚いたことに、彼は半目を開けたかと思うと、こちらを見て掠れた声を出す。


「良かった……。君達が無事で……」


「先輩……!」


 直人と目を合わせ涙して、先輩に近寄る。


「先輩、死なないですよね? 私達を置いてなんかいかないですよね?」


「そう、したい、ところ、だけれど……。もう、見えた、聞こえたんだよ。僕はもう、助からない」


「何でなんですか!? 俺達、高校も一緒に、色んなこと、見つけよう、って約束したじゃないですか!」


「そうですよ! どうして助からないだなんて、そんなこと……」


 止(とど)めようもない戸惑いと、怒りにも似たような感情で胸が詰まり、嘆くように責め立てる。

 何故、こんなことになってしまったのだろう。

 どうして、先輩は……。


「……すま、ないね。本当にごめん。約束、守れなさそうだ」


 先輩は眠るように目を閉じ、そこから何も喋らなくなってしまった。


「如月先輩っ」


 そう叫んだのは私ではなく直人で、私は以外にも何も叫ぶことの無いまま、真正面を虚ろに見つめていた。

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